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第154頁 南貿易港ブッヒェルン


 帆を広げ、波に乗って私達の搭乗している船は進んでいく。日光が海面に反射して煌めく様子はどこの世界でも健在らしい。


 風に揺られる髪を手で押さえ、進行方向を目を凝らしていると先ほどまで舵を執っていたルナが私の隣にちょこんと座った。


「ふぅ、やっぱり舵の魔法は疲れる…。シズクさん、大丈夫?酔っていたら特製の薬があるから…遠慮なく言って」


 上手すりに腕を回し、下手すりから足を出すように座るルナは、軽く息を付くと私を気にかけてくれた。

 白黒のメイド風エプロンドレスのフリルがひらひらと震え、彼女の銀の髪の上で太陽の光が弾ける。


「うん、ありがとね!魔法って何でもありなんだね!勝手に建物が作られたり、自動で舵を執ってくれたり凄いよ…」


 ルナが舵を執っていると言っても、魔法を使用して軌道に乗るまでは監視を続けるという簡単な仕事である。舵の魔法自体が物凄く難しい魔法に変わりはないのだが。


「ひょっとして魔法に興味ある?よかったらまたルナが勉強している魔導書を貸すけど」


「あ、いいの?ならまた今度王邸に行くときに貸してもらおうかな。私ってまだ初級魔法しか使えないし、属性も魔分子もなーんにも分かんないから」


「魔分子について分からないのに中級治癒魔法を…」


「ん?何か気にかかることでもあったの?」


「…いや、こちらの話。それより、到着は半日後になりそうだから中に入ってて大丈夫」


 途中不思議そうな顔をしたルナだったが、私を船の中へ誘導したので言葉に甘えて船内に入る事にした。



 ・・・・・



 それからというものの、特に大した出来事もなく、半日を海の上で過ごすことになった。

 昼食は海上食ということで私の魔法人形ドールで獲った魚を新鮮なうちにいただいた。

 さすがルナの料理。とても美味しく、メイドの本気を見た気がした。



 ・・・・・



「なんだあれ…」


 高い、高い壁に囲まれたとても大きなナニカが、海上を進む私の前に立ちはだかった。

 鎖国中の王国は、高い壁が築かれて外部から一切の連絡を絶つ風習があるらしい。ということは、あれこそが今回の目的地【アーベント・デンメルング】で間違いないだろう。


 唯一の輸入口である港に船を寄せて固定することを確認した後、私はゆっくりとその地に降りた。



【南貿易港ブッヒェルン】


 名前の通り王国アーベントの南に位置する唯一の物資の出入口である。景観は良くも悪くもなく、いたって普通の漁港のイメージ。船上から物資の入った木箱が降ろされて金銭の取引をしている様子が見て取れる。

 ここから文化が入って成長していくのだろうと思うと、なんだか感慨深いものだ。

 港の近くでは新鮮な魚を売ったり、貿易で手に入れたものが直売されたりしていて、王都の大通りのように活気に溢れている。



「ここがブッヒェルン…、やっぱり別国の貿易港は自国の発展の勉強ができる。知識は覚え、技は盗めと良く言った…」


 目を輝かせながらルナが貿易港を眺める。難しい言葉を使っているけど、多分ここを参考にして私達の国に貿易港を作るのだろう。


 店側は大きな声で客を呼び込み、客は笑顔でそれを買っていく。

 でもなんだ…?このどことなく感じる違和感は…。


「さて、やっと着いたところだけど、今から中央都に向かうよ。名前は確か[オスベルン]と言ったかな。疲れてないかい?」


「うん、全然疲れてないし、中央都へ向かうのは大賛成なんだけど…」


 紗友里の言葉に私は応えるが、やっぱり違和感が気になっていた。

 まぁ、特に大したことでもなさそうか。気にしすぎもしんどいだけだしな。


「大丈夫?シズクさん。気持ちが揺れている…、安心して。何かあったらルナが守る」


 この子…心強すぎか!!めっちゃ安心するわ。


「ありがとうルナ!もう大丈夫だよ、さぁオスベルンとか言う街に向かおう?」


 ま、今回の旅行は平和に終わるでしょう!え、フラグじゃないよ?立ってないよね!?



 ・・・・・



【中央都オスベルン 貴族邸】


「ん…、北部の制圧は完了ですか。お疲れ様です」


 豪華な玉座に腰かけ、ひざまずく人を褒める。

 薄い水色ベースの薄い布を羽織ったり、首には宝石の埋め込まれたネックレスを付けている女性は、家臣達に言葉を告げたあと少し悩む。


「クリュエル様?」


「あ、いや…何でもありません。一通り反乱軍の処刑を済ませてから、今日はゆっくりしましょうか」


 アーベント・デンメルングを治める国王オスカー・クリュエルは、頭にかぶっていたハット帽を脱いでマネキンの頭部に置いた。


 王国に反乱するために個人達で作られた組織[反乱軍]。彼らを放置しておくと、自身の命も危ういため、計画が進められていると報告を受けたら阻止するしかないのだ。


「クリュエル様、本日は何名処刑を?」


「うーん、午前で10人近くだから…捕らえた反乱軍は全員やっちゃいましょうか。処刑具の準備を」


「ハッ、我が主様!」


 狂気に満ちた笑みをこぼし、クリュエルは長い薄布を翻した。


3日ぶりの投稿ごめんなさい!リアルの方が忙しんです…、2日後は絶対投稿しますね!

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