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第138頁 ちりつもと幼女と王様と



「よいしょっと。ほら、足元注意してね」


 ウォーターシェルから長時間かけて竜車に揺られてようやく到着した王都。

 相変わらず活気に溢れていて、故郷に帰ってきた感覚だ。

 私は一番先に地面に降り、六花のエスコトートをする。小さな気遣いの積み重ねが大切だからな。ちりつもちりつも。


「やっと帰ってきたぜーーー!!」

「家帰ってはよぉねころぼ!ほんま体痛いわぁ」


 この二人は何かから降りたときは大声を出さないと気が済まないのか…。隣で天を仰ぐ二人を横目に、竜車に乗った残り一人の人物に手を伸ばす。


「ほら、あなたも」


「ありがとうございます!お師匠様の手…ふへへ」


「やっぱやめようかな」


「えぇ!?」


 大きな口を開いて今にでもよだれが出てきそうなフレデリカに伸ばした手を急いでもとに伸ばし、私は停竜所から見える王邸を見る。


「はぁ、」


 我ながら大失敗をしてしまった。フレデリカの記憶がなくなる前に、紗友里に頼まれていたのにそれを忘れていたのだ。そもそも花園に行くことが第一目標だったのに…。


 紗友里は優しいから心配ではないが、ルカとルナの心無い鋭い視線が痛すぎる。しかも幼女。しかも推しに!


「はあぁぁ、」


「溜め息ばっかりついてないで、そろそろ行きましょうよ!フレデリカはお腹がすいたのです」


 無意識に大きな溜め息をついていた私の肩を叩くようにしてフレデリカはそう言う。確かに落ち込んでても今更何もできないしな。


「よーし!お前ら、家に~帰るぞーー!!」


 元気よく空を突き上げた私の声は、すぐににぎやかな声でかき消された。



 家に帰ったら、言ってた通り蜜柑と結芽子はすぐに床に倒れこんだ。相当疲れていたのだろう。私はそれをすぐに叩き起こして二人ともお風呂に入るように指示した。

 二人は目を合わせて溜め息を付いたが、さすが高校からの幼馴染。考えることは似ていて、二人で我が家の狭い風呂にぶつぶつ言いながら入っていった。

 せっかく寝るなら、ベッドで寝てくれ。


 六花とフレデリカは、特に何もせずにキッチンで紅茶の準備やら簡単なお菓子を作っていた。蜜柑達を見たすぐだったこともあり、さすがに元気余りすぎじゃね?とは思ったがフレデリカと六花ならまぁ…。体力はあるからな。

 元メイドだったフレデリカは紅茶の入れ方等を熟知していた。ルナに教えてもらったらしいが、フレデリカにこれを教えたルナの入れ方も気になる。


 さてさて、相変わらず一人になった私はとりあえずキノコタンクッションをそっと抱きしめた。

 もふもふ…とまでは言わないが、ぬいぐるみとしても役割はしっかり出来ている凄いものだ。


「帰ってきたって紗友里に挨拶に行かないと。ルイスにあったことも」


「静紅さんだけで行くんですか?」


 ふらふらと立ち上がった私を心配するように六花は声をかけてきた。キッチンで何かを水洗いしている音が聞こえてくる。


「うん、私だって大人だし。たまには一人で行動もしたいなぁって思って」


「そうですか。分かりました!ボクは家でごろごろしてます~~」


「私も~~」


「そっかそっか!それじゃ、行ってくるよ」


 六花とフレデリカの仲が良くなったかそうでないかは分からないが、殴りあうような喧嘩をしたりしないんだったらそれでいいかな。なんだかんだで同じ家に住む家族だし。


 私は靴ひもを結び、押戸の玄関を開けた。



 ・・・・・



「シズクさん。よく来た…入って。サユリ様が待ってる」


「いつもありがとね」


 王邸の扉をノックして、出てきたのは掃除をしていたのか埃をとるもじゃもじゃのアレを持ったルナだった。

 私はルナに礼を伝え、待っているという紗友里の部屋まで急いだ。この建物は大きすぎるんだよなぁ。これを掃除するなんてメイドさんを褒めてあげたいよ…。


 なんて考えながら屋敷の中を進んでいく。私の三歩後ろにはルナがちょこちょこと短い足でついてきている。


「ルカは今どこにいるの?」


「姉さんは今買い出しに行ってる…。早く帰ってきてと連絡しているのに、姉さんはいつも寄り道をしてくる」


 前世の私なら何の変哲もない会話だが、今の私にはとても興味のある単語が混ざっていた。

 連絡?この世界に連絡手段があるのか?

 いや、確かに伝書鳩もどきはあるけど、電話とか中距離連絡する手段は無かったはず。


「連絡ってどうやったの!?」


「ち、近い…。落ち着いて…。ルナと姉さんの能力で、二人の意識は大体繋がっている。片方がもう片方に伝えたいことを思うだけでそれが伝わる」


「へぇー」


「…。自分から聞いておいてその反応…」


「あ、ああ!ごめんごめん!ちょっと考え事してたんだよ!」


「考え事…?」


「そうそう」


 もしこの連絡手段が使えるんだったら、それはもう画期的だろうなぁ。というか、連絡系の魔法とか能力とかないんだろうか。

 電話の始まりは声を電気的に伝えるとか何とかって…。よくわからん。


「そろそろサユリ様の部屋。今は仕事をしているはず…、早めに用事を済ませてもらうとありがたいと思う」


「了解、小さいのにえらいねー」


 そういって、さりげなく私はルナの頭に手をの伸ばす。

 わしゃわしゃと銀の髪を触り、それを堪能してから扉の方をみた。


「むぅ、こうされるのは嫌いじゃない…。でも、するときはあらかじめ言ってもらいたい。めいどはお触り禁止だからこそ魅力があるってサユリ様も言ってた」


 なんてこと吹き込んだんだ紗友里…!これじゃ私の癒しが減ったも同然じゃないか。

 なに?「ルナ、頭触らせて」とでも言えっての!?無理無理、完全に変態のソレになるじゃんか!

 うすうす感じてたけど、この世界にメイドを布教したりメイド喫茶みたいなシステムを導入したり…。もしかして紗友里ってメイドに憧れてるのかな。

 まあいいや。とにかく早く報告して帰ろう。眠い。


 こんこんと木の扉をノックし、中から「どうぞ」と声がしたのでそれに従って入る。


「それじゃ、ルナは掃除の続きがあるから」


「うん、頑張ってね!」


 こうしてルナとは別れ、私と紗友里は二人きりになった。


「無事で帰ってきてくれて何よりだよ。友の遠征というのは少々トラウマでね」


 羽ペンをペン立てにさして玉座から立ち上がった紗友里は、対談用の向かい合った椅子に腰を下ろす。

「座って」と言われたので、躊躇いなく椅子に座る。この木の椅子に座るのも二か月ぶりぐらいだろうか。そもそも王室の椅子に二か月連続で座れるということが凄いことなんだろうけど。


「ちょっと謝らないことがあって…」


「ん?」


 まだ少し温かい紅茶をすする紗友里に、私は小さな声で言った。


「海辺の花園…行くの忘れてた」


「マジか」


 この国の王様である伊豆海 紗友里さんは、それはもう日本のJKっぽく反応して紅茶を噴き出してしまった。





【あとがき!】


 今回のあとがき!は[ペルソナリテ]が担当するわ。

 と言ってもまぁ、特に大した無いようでもないしさらっと終わらせましょう。

 ようやく幕を切って落とされた第9章。まだ中心人物である[ルリ]という人物は出てきてないわ。

 ルリはこれからのストーリーにも大きく関係してくるから、この章だけの登場人物…ってわけでもなさそうね。久しぶりに家族増えるのかしら。


 章のタイトルで察してる人もいるかもしれないけれど、ルリはちょっとデリケートな悩みを抱えてるわ。しかもドラゴン娘。言い換えると、龍と人間の中間の存在ということで、龍を天敵としている人間たちはルリを・・・


 でも、そんな考えを無くすために静紅達は奮闘するって章にしたいって紅葉は言ってたわ。

 長さは…第八章よりは少なくなるはず。第六章あたりと同じ長さになる予定よ。


 それではモルモッ…、読者さん。今回も見てくれてありがとう。もしよかったらブックマーク、星をくれると踊って喜ぶわ。感想もくれるともっと踊るわ。


 企画として、「〇〇ちゃんで質問回答してください」みたいなのも面白いかもしれないわね。

 どこかの記念で企画として紅葉に相談してみようかしら。


 じゃ、さよなら、いい夢見てね。

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