第132頁 さざなみキスをもう一度
「なんでこんな所にいたの?」
私は銀髪ショートヘアの人魚、イナベラに問う。
鈴の音が聞こえてきそうなほど美しいこの光景の下に、私と六花とイナベラの三人しかいない。
さっきのイナベラの攻撃はクマもとても驚いていたけれど、私も相当驚いた。大人しそうな彼女の体から繰り出される超パワーの蹴りとジャンプ。よくもまぁあんな子と大会で戦えたもんだ。
六花の電磁砲もそうだけど、この世界は力のバランスが明らかにおかしい気がする。一握りの小規模の力しかない人もいれば、本気を出せばこの世界ごと壊せるくらいの力を持ってるからな…。
「ちょっとね」
「日光が出てないから、今は海から出れてるんだ?」
確かイナベラは、太陽の日差しにとても弱く、常に水に浸かっていないと大やけどを負ってしまう特殊な体質の持ち主だった気がする。例外としては、雨や曇りといった[太陽の出ていない日]や、建物内や洞窟も大丈夫。
空を見ても日の光なんてもの無いので、イナベラが普通に生活できているのも頷けるが。
私の質問にイナベラは無言で首を縦に振る。
そのあとに、六花が私の服を引っ張ってこちらの意識を引こうとした。
「ん?どしたの」
私が六花の方を見てそういうと、彼女はゆっくりと口を開く。
「怪我はありませんか?魔物に襲われるなんて…、静紅さんのばか」
「ばっ…!はぁ、分かった分かった。この件は私が夜中に出かけたのが悪いよ。ごめん」
「わかればいんです」
ぷくーと頬を膨らませるようにそっぽを向いた六花をひとまずおいて、私は月を見上げた。
私の視線とリンクしたように、イナベラはとある説明をしてくれた。
「この時間の月綺麗でしょ。月の光が強すぎて小さな星光が見えなくなっちゃう。それが良い目立ちか、悪目立ちかは分からないけど、私がもし月だったら自分の存在をみんなに悟られないようにひっそりと光るかな」
「……」
急に何を話し出したのかよくわからなかった。それを気にしないと言わんばかりに彼女は言葉を続けた。
「みんなにさ、人を襲うとか天変地異の原因だーとか言われてる私って、何なのかな?人魚?人間?魔物?」
「あなたは…」
「イナベラさんは、何にも属さないと思います。ボク、何だかわかるんです。イナベラさんは、何か特別な存在だと。根拠はないですが、心の底で感じるんです」
「何にも属さない…?それって、私は私の知らない何かってこと?」
「分かりませんが、イナベラさん。あなたはなろうと思えばなんにでもなれるはずです」
六花の言葉もよくわからない。この二人、何話してるんだよ。
解らないと判らないに挟まれた私は、強制的に思考を停止させた。私の脳のスペックじゃ理解するのは無理だな。
そうこうしてる間にも、二人の会話は進んでいき、いつの間にか会話は終わっていた。
「大変ですが、頑張ってください」という六花の言葉を最後に。
・・・・・
それからイナベラと一度別れ、昼になったら海岸で会おう、と約束してふらふらと宿に帰り、そのまま二度寝でもしようかなと考えていると、六花が話しかけてきた。
「静紅さん、うまく言葉にできないけど、新しいボクの異変…見ましたか?」
「うーん、目が黄色に光るのと電磁砲を撃ったってこと以外に何かあったの?」
あ、そういえばイナベラがセイレーンになったとき、六花もなんか様子がおかしかったような。
「忘れたんですか?って言っても、ボク自身何が起きていたのかよくわからないんですけどね」
「白と黒の剣を持って、黒いコートを着てた…っけ?」
「覚えてるじゃないですか」
「えへへ、すまんすまん」
じゃくじゃくと水分を含んだ砂を二人で踏みしめ、遠くに見える木造建築の宿屋を目指す。
自然と彼女の方に手が伸び、手と手が触れ合ったところでお互いの指を絡めあうように握る。
この感覚が私は好きだ。初々しさがいつでも感じられて、それでいて安心できて。
この手を離したくない。そう思うと、一層強く握る。痛さでさえも心の安らぎに感じる。
「自分が怖いな、って思ったりしたことありますか?誰かを傷つけてしまうんじゃないか。そんなことを感じたことはありますか?」
六花は神妙な表情でそういった。彼女の顔が、明るい月明かりに照らされてとても綺麗に見える。頬の赤み、目の色鮮やかさ、肌のなめらかさまでも手に取るように感じてしまう。
可愛いというより、綺麗な感じがする。
「自分が怖い、かぁ…。特にないかな」
正直、私は私だし、いつでも自分の気持ちぐらいは制御できているつもりだ。誰かを傷つけることなんか、自分の意志でしかしないはずだ。
「ですよね…。でもボクは、あの時自分とは思えない考えを持ってしまったんです。何かを壊してしまいたい。という破壊衝動。それを感じたボクは…本当に、静紅さんと同じような人間なんでしょうか…」
「何言ってるの、六花はだって一緒に異世界にきたじゃん。前は一緒に仕事をして学校に行って…」
冗談めかして六花の言葉に返答し、それに六花は気に食わなそうに顔をしかめる。
「…で、ですよね!」
苦笑い。分かりやすすぎる作り笑いに、私はなんの返信も出来なかった。
「六花、」
「なんですか?」
「こんな時に言うもんじゃないって分かってるんだけどさ…。好きだよ」
「な、何が好きなんですか。はっきり言ってください」
予想外の返しに、くすっと笑い、六花の手首を掴んで力ずくでこちらに引き寄せる。ハグ状態になった六花の顔をむにっと掴み、顔を近づける。
火が出そうなほど真っ赤に染まった顔を見ていると、自然とドキドキしてくる。
あーもう、可愛すぎんだろこいつーー!!
「六花が好き」
「っ…!」
やわらかい感触がお互いの唇に届き、そっと目を閉じる。
愛してる。そんなことを何度も何度も言いまくったあの静かな夜は、今思い出しても恥か死にそうだ。
【あとがき!】
今回のあとがき!は私、西宮 結芽子が担当するで!そう、あの関西弁の人やで、覚えてるか!?(笑)
私って影薄いとか言われてるみたいやけど、実際にはめっちゃ元気やし!紅葉と同じ関西じんってこともあって、話がよく合うんやけど、みんなってコテコテの関西弁でも言ってることわかるんかな?
私だって、九州とか東北弁の言ってること全く分からんからなぁ。それでゆーたら関西弁は標準語と似てるんちゃう?そんなことない?
まぁ、そんなことは置いといて、やっぱ静紅ちゃんと六花ちゃん暑いなぁ~。確かにあの二人がイチャイチャするのは慣れてるけど、異世界に来てからめっちゃ距離近なった気がするわ。それと同時に出会ってしまった女の子[フレデリカ]ちゃん。うーん!!!!(笑)
よし、私も誰かいい男の子見つけよっかな!
え?お前には蜜柑がいる?
蜜柑ちゃんなぁ、めっちゃいい子なんやけど、私女の子には興味ないねんごめんな。
それじゃみんな!次回もよろしくやでーー!!




