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第114頁 望んだ平和は程遠く


1周目の死で負った心の傷を何とか癒した静紅は、

電話でもらったヒントを目指して蜜柑の家に向かう……



 第114頁 



 私はキュリオス達との電話の後、唸りを上げていた。

 私だけが生き残った世界線だったと思っていたが、死んだのは六花だけで、蜜柑と結芽子は今でも生きているらしい。


 わざわざキュリオスとルースリィスが本当のヒントをくれるのだろうか。人を襲うあの二人の言うことは出来れば信じたくないのだが、手がかりも再編のことも分からない現状、闇雲に走り回るよりは効率がいい。


「いただきます」


「はい!どんどん食べてくださいね!」


 今はもう体調や身体の不良は無く、健康だ。

 目の前に出された昼食を前に、私は箸を手に取った。

 相変わらず料理上手な彼女。苦手なものはあるのだろうか。


「えへへ、美味しいですか?」


 テーブルに頬杖をついてにかっと笑うフレデリカに、私は素直に答える。


「うん!とても美味しいよ!」


 とにかく今は行動起こすのみだ。まずは家から一番近くの蜜柑の家に行ってみよう。

 私はさっと昼ごはんを食べて皿洗いを開始した。




「ねーフレデリカ、ちょっと出かけてもいい?」


「どこへ行くんですか?」


 泡付きのスポンジが皿の上で動く音が部屋中に響く中、私はとうとう口を開いた。

 何かの雑誌を読んでいたフレデリカは本を閉じてこちらに視線を向ける。


「んー、蜜柑の家」


「蜜柑さんですか…分かりました!私もついて行ってもいいですか?」


「え?まぁいいけど」


 そんな会話の後、二人分の皿洗いを済ませた私は財布とその他諸々を入れたカバンを持って家を出た。



 ・・・・・



 二人で歩いている間、この世界での私の立ち位置をさりげなく聞いた。

 現在私の勤めていた会社は三人で経営していて、私もその一人らしい。

 六花の交通事故は彼女につながる全ての人が驚き、悲しんだという。


 私も死んだときは、誰かが悲しんでくれたのだろうか。


 フレデリカとは一年ほどの付き合いで、結婚したのはついこの前なんだとか。

 六花が死んで引きこもっていたところにフレデリカが押し掛け、私を引っ張り出したという彼女らしい行動で私は見事に惚れ、今に至る。らしい!


 全く…好きな人が死んで、そこに現れた友人に惚れるとかちょっと尻軽いんじゃないすか?


 蜜柑と結芽子も今は元気を取り戻し、いつもの日常を過ごしているらしい。


「ついでに各務原家に行こっか」


「え?」


 私とフレデリカが足並みを揃えて歩く中、私は六花の家にお邪魔しようと案を出した。

 絵にかいたようなアホの子顔で聞き返すフレデリカに気が空振りしそうになるが、何とか耐える。


「今日はまだ行ってないでしょ。手を合わせに」


「あぁ、そうですね!六花ママさんにはお世話になりっぱなしです」


「あはは、変わらないなぁ六花ママ」


 今回の結婚を後押ししたのは六花の母…六花ママだ。

 私と六花は15年近くの付き合いということで、母親同士はもちろん、六花と静紅ママ、私と六花ママも仲が良い。

 実は六花ママは重度の百合好きで、私と六花の付き合いも何の躊躇いなくオーケーしてくれたのだ。

 娘が死んだというのに六花ママは私とフレデリカを応援したんだとか。


 さすが六花ママというのか、大丈夫かよ六花ママというかは私にゃ分からんよ。


「ということで到着しました各務原家!」


 あくまで仏壇を拝みに来ただけだ。すぐに蜜柑の家に向かわないといけないからな。


 一回目は罰当たりなこともしたし、しっかりと見れなかった。


「六花ママさーん!いらっしゃいますかぁ!!」


 フレデリカがインターホンを鳴らし、扉を強くたたいた。

 しかし、六花ママは出てこない。

 どうしたのだろうと庭に入ってみると、ちょうど人一人通れそうな大きさの大窓が開いており白のカーテンがなびいてるの見えた。


 おかしい。六花ママならいつもすぐ出てきてくれるのに。


 私はフレデリカと目を合わせ、ゆっくりと家に入った。

 一応知り合いだし、後で謝れば許してくれるはずだ。


 太陽が傾き、日が陰る。空が緋色に染まって徐々に私が一回目で死んだ時刻に近づいてくる。

 自然と息を飲み、頬を伝う汗が緊張感を際立たせた。


「ご、ごめんくださーい。六花ママいますか?」


 靴を脱いで、二人でゆっくりと家の中を進んでいき、たどり着いたのはキッチン。

 一回目同様、夕飯時なのでコンロに火をつけていた。ヤカンが甲高く鳴いているのに家の主が戻ってくる気配がない。

 私はコンロの火を消して、不信感に浸っていた。


「おかしいです。家からは足音一つしませんし、六花ママの気配もありません」


 耳の良いフレデリカが言ったのなら本当なのだろう。


「だとすれば留守か…?でも窓も火もそのままって六花ママらしくない」


 寝ているのだろうかと思い、私はゆっくりと寝室へ続く階段を上る。

 突然、フレデリカが形相を変え、驚いた声で言った。


「…っ!?血…血の匂いがします」


 フレデリカが急いで階段を上がるので私もそれに続いて急いだ。

 寝室の扉をゴン!と開き、暗い部屋の電気を付ける。


「え…」


「お師匠様、ここは一度警察に連絡を!一般人では何もできません!」


 ベッドから落ち、背中にナイフのようなものが刺さった、大量の血を流す女性がそこにはいた。

 必死に部屋から私を連れ出そうとしたフレデリカの手を振り払い、六花ママの方に近づく。


「脈がない」


 この一言を伝えるのにどれだけの時間を必要としたのだろうか。そのときの私にはとても短く感じたが、顔を上げると既に警察がフレデリカの話を聞いていたので、恐らく長い時間がたっていたのだと思う。


「それでですね、私は不思議に思って階段を上がったんです。そしたら…あ、お師匠様!どこ行くんですか?」


「ちょっと風に当たりに」


 それだけ言い残し、私はベランダに出た。

 時刻は午後5時丁度。絶対忘れない。


「どうして…、」


 私は近くにあった公園の時計台を見下ろして現在の時刻を頭に叩き込み、空を見上げた。


 六花ママの死は意外にも私の心に大きな傷を負わせた。

 あれは自殺なんかじゃない。六花ママの身体を見たときに、彼女の身体にはたくさんの擦り傷や切り傷があった。なにかと争った形跡がある以上、誰かが六花ママを殺したことになる。


「誰がやったかは…今から確かめてやる」


 私は目を瞑って集中する。


『再編を』


「うん」


 どこからか声が聞こえてきて、私はそれに答えた。

 手を胸に当て、全力でソレをイメージする。


「待ってて六花、六花ママ。絶対見つけるから、正解を」


 肺いっぱいに空気を取り込んで静かにこう唱えた。


「【再編さいへん】」


 その瞬間、胸の辺りが青く光り輝いて私は光に飲み込まれていく。

 水中での浮遊感のようなあと、徐々に意識を失って…。



 ・・・・・



「お師匠様、早く起きないと私が襲っちゃいますよーっと」


「あなた…それは毎回言うんだね」


 窓の外を見ると澄んだ青空が見えた。

 目の前には出来立ての朝食が並べられている。

 日めくりカレンダーに浮かぶ[27]の文字がなんだか懐かしく感じてしまう。


「本日は1月27日。今日も快晴ですが非常に肌寒い一日になるでしょう」


『さぁ行くよ!後輩ちゃんっ!』


 聞いたことのない女性の声が、私の頭に響いた。


 3週目行きますか…!



 皆さんこんにちは!秋風紅葉です!


 再編の設定としては、【死んだ時に自動発動】【静紅の意識 (呪文を唱える)で発動】の2パターンの条件で使用されます。


 この作品の設定とかも1度まとめようかなと思ってるんですよね〜。

 ほら、【能力】ってなんやねんとか、【竜】と【龍】の違いとか、【加護】とは!とか。

 どこかの話に出てきたものばかりなんですが、ひとつの頁にまとめてたら見やすくなりません?

 というわけで、多分…次回は[この世界の設定]みたいな感じにすると思います!

 気が向かなかったら、普通に第115頁を投稿します(笑)


 それでは皆さん!もし良ければ、ブックマーク、評価お願いします! (とても励みになるので)


 さよなら!


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