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第110頁 記憶の欠片は海中に

セイレーンとの戦闘の後、静紅達は合流を図る。


長いポールの下で合流した静紅達は、フレデリカの記憶を取り戻すため、大会の優勝景品である記憶を元に戻す道具を受け取りに向かった。




『あ、シズクさん。今度はどんなご用件で?』


 まだ会場に残っていた実況者に私は話しかけ、作業の手を止めた。

 常にマイクを身に着けているせいか、普通に話しているときもその声は周りに響いている。


「大会の景品についてなんだけど…、イナベラが勝ちを譲ってくれるみたいでさ。景品をもらいたいなぁって思って」


『あぁ、それでしたら私の持っている鍵で持ち出せますよ。なんなら今からでも持っていきます?』


 舞台の掃除や大会の後片付けが残っている実況者は、忙しそうにしていた。

 別に急いでるわけでもないし、フレデリカの記憶が戻ったら手伝ってあげよっかな。


「うん、お願いするよ。それが終わったら片づけ手伝うよ」


『え、いいんですか!?ありがとうございます!それでは、さっそく舞台裏へ』


 そう言われ、六人という大人数で舞台裏にお邪魔した。



 ・・・・・



 相変わらず舞台裏は薄暗かった。蜜柑が珍しくビビっていたのでよっぽどの暗さだったのだろう。

 海中でランタンやろうそくは使えないので、光る植物を用いた光源をところどころに設置しているようだ。形はサンゴのようだが、色は薄く緑に光っている。


 ものがごちゃごちゃして散らかっているので、前世の風景が一瞬思い出されたが、気づけばすぐに消えていた。

 今でもよく夢で見る前世の記憶。この世界に住んでいる以上、覚えている理由もないのだが、二十一年間歩んできた人生なので忘れるのももったいないかな。


『さあ、つきましたよ。この部屋です』


 そう言われ、私はゆっくりと扉を開ける。

 そこには見たことのない不思議なものが置かれていた。


「なんやこれ…」


 結芽子が静かに声を漏らして、それが皆にも見たことないものだと分かってほっとした。


 宙に浮き、薄く青色に光る球体のソレはまるで天からの贈り物を見ているような。


「[メモリーピース]?記憶の欠片といったところでしょうか」


 六花がそれに近づいて観た。六花の言った通りメモリーピースは記憶の欠片と訳せるが、この世界には英語に似た言語表現があっても、ここまで完璧な英語にはならない。

 少々の疑問を交えながら、私は実況者兼、この大会の管理者の言葉に耳を傾けた。


『ある日、大会の景品落ちてないかなぁと、海中散歩をしているとこれが落ちていることに気が付いたんです。でも変ですよね』


 視線を私たちからメモリーピースに移して、そっと見つめながら言葉を続ける。


『重力に逆らってぷかぷか浮く球体なんて見たことないです。沈まない割にとてつもなく重くて、、、』


 実況者はくるりと方向転換をしてこちらを見る。


『私って、よく地上にも上がるんですよ。ほら、シズクさん達のような姿をしてですけどね』


 彼女の周りから白い煙が上がったと思うと、奥に人影があるのに気が付いた。

 これは、あれだな。デジャブだ。たしか四か月前にもこんなことあった気がする。


『ふぅ、この姿になるのは久しぶり…でもないですかね。この前買い出しにも行きましたし』


 黒よりの茶色の三つ編みに、両耳横に後ろへ向かって鋭くなる角のようなものを付け、服は紺色のフリルが付いたお洒落な感じ。肌はイナベラほどでは無いが色白で、可愛らしい口紅を付けている。


「あー、そういう感じね」


 私は自分でもよくわからない何かに納得した。

 流行ってるのかな、擬人化。

 さして明るくない天井を見て、私はそっと息をついた。



 ・・・・・



「えっと、リウムさんってことでいいんですか?」


 戸惑いながらも、さすが元王都近衛騎士団。初対面の人とスムーズに話して名前を聞くところまで進めてくれた。


[リウム・ファタリア]それが彼女に付けられた名前だ。

 そもそも彼女は海に住むファタリアという生物の突然変異で生まれた擬人化できる生物らしい。

 ファタリアというのは何か、と質問しても「ファタリアはファタリア。それ以上でもそれ以下でもありません」と返された。


『はい、リウムでいいですよ。ほら、私のことなんか別にいいんです。景品を受け取ってください』


「どうやって受け取るの、これ」


 私が手を上げてリウムに聞いたら、慣れたように説明してくれた。


『私の能力で小さくします。質量は元の大きさに比例して減少するので、そこまで重くならないはずですよ』


「そっか、ありがと。今ここで使うっていうのはできる?」


『え?いえ、目の前に、少なくとも半径5mの範囲に記憶を取り戻したい方がいないと…』


 きょとんとした感じで私たちを見渡し、特に異常のある人物が居ないことを確認する。


「ちがうよリウム。フレデリカはシズクの記憶だけなくしてるんだ」


 口を小さく開けてイナベラがそういうと、リウムは驚いて聞き返した。


『フレデリカってあなたですよね。エルフの』


「はい、私がフレデリカですけど」


『シズクさんの記憶をなくしたんですね?』


「え、はい。それがどんな関係が?」


 不思議に思ったフレデリカがリウムに聞いても、彼女は首を横に振るだけだった。


『いえ。儀式の材料にいるんです。記憶を取り戻すためには、本人の名前と忘れた内容、それと忘れたものへの何らかの愛情が必要なので…』


 それからリウムは顔を赤く染めて、謝った。


『す、すみません!私、勝手になくした風景や物の記憶を取り戻す道具だと勘違いしてて!』


「あ、いいのいいの。愛情だったら家族愛でもいいんでしょ?」


 この際だから言わせてもらうが、フレデリカに六花のようなシタゴコロは感じていない。少なくとも、どちらをとるかと言えば六花を真っ先にとるよ。


「む、なんだか嫌なことを言われた気がします」


 フレデリカが顔をしかめてこちらを見てきたが、左手で顔を抑えてこちらによるのを止める。


『えっと、それじゃ、さっそく始めましょうか!二人は手をつないで目を閉じてください。決して術式が終わるまでは目を開けてはいけませんよ』


「はいはい、手数かけてごめんね、リウム」


『いえ、大丈夫ですよ。下手な魔法使いが何回も魔法を使うより、私が一回で済ました方が効率いいですし。それでは始めます。ご準備を』


 私とフレデリカは手をつないでそっと目を閉じた。

 足元が微かに温かく感じたと思えば、たくさんの記憶が一気に溢れ出てきた。


『海中を住みかとす我が命ずる。今この場にて、二人の記憶を汝の力により浮かばん。スーブニール』


「あ、待ってこれやばいかも…」


 脳に刺激を与えることによって感じたことのない快楽に私は包まれた。


『目を開けないで!そのまま感情に身を委ねてください。何があっても、その現実を受け止めてください。何度繰り返しても、何度心が折れても、たった一つの正解を目指してください』



 ・・・・・



「お師匠様?おーい!」


 誰かが私を呼んだ気がした。

 重い瞼を上げると、そこには金髪のよく見た少女がいた。


「ん、んん、、」


「はやく起きないと襲っちゃいますよーっと!」


 椅子に雑誌を読みながら座り、朝食を前にして寝ていた私にちょっかいを出してくる。


「え、あー、ごめん」


 白のすっきりとした壁紙に温かみのある床、座りなれた木製の椅子と机。モニターの奥からは今日も忙しそうに原稿を読み上げるニュースキャスターの声が届いてくる。


「本日は1月27日。今日も快晴ですが非常に肌寒い一日になるでしょう」


「ん!?」


 今このキャスターなんて言った!?というかテレビ!?

 うわ、え?


「ここ、私の実家じゃん…!!」


「どうしたんですかお師匠様!」


 この話し方、この元気いっぱいな感じ、話すだけで伝わる私への愛情。

 記憶をなくす前のフレデリカだ。


「何にもないよ。というか、どうしてこんなところにいるんだよ!!!」


「なーに寝ぼけたこと言ってるんですか!私はお師匠様のいるところに現れます。おっと、これは私がお師匠様そのものと言っても過言ではないの…」


 ごつん!!


「え、えっと、ここは私とお師匠様の愛の館…」



 ごつん!!


「…お師匠様と結婚して、お師匠様のご実家にお邪魔になっているというか」


「はぁ?」


 どうやら私は、フレデリカと結婚したという設定らしい。


 異世界にいたはずが元の世界の部屋に戻ってきて、異世界人であるフレデリカがこの部屋にいる。


 よくわからなくなった私の脳はショートしてしまい…


「ちょっと、お師匠様!お師匠様!?お義母さん!119お願いします!」


 ただその一言が私の耳にこだましていた。

 現代の救急、使いこなしてるなぁ!?などとツッコミを入れる暇もなく、意識は暗い静かな場所に落ちていった。




こんにちは!秋風 紅葉です!


ここからなんだか長くなりそうな気が……。

まぁ何が起こるかは、誰かのセリフで言っているので変えれないとして、静紅とフレデリカが元の世界に戻ってきてしまったようです。


それは現実なのか幻想なのか。

果たして静紅達は異世界へ帰ることが出来るのか!


とまぁそんな感じです。


それでは皆さん!これからもよろしくです!

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