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第96頁 龍という存在


水中呼吸の方法を得るため、洞窟内に入っていった静紅達。


そこには守護の龍が居て…


「主様、ここからは(わたくし)達の出番ですわ!」


 物凄い速さで地面に着地し、金髪の髪が砂埃とともに揺れる。左手に盾を装備した少女が、この空間で誰よりも英雄だった。


「ミカンさん大丈夫?」


「ちょっとヘスティア。主様の友人にも敬いの心は忘れたらいけませんわ」


 龍の拘束から解放された蜜柑にヘスティアが手を伸ばすと、咄嗟にアテナに怒られた。

 お嬢様口調のアテナだが、私の居ないところだと普通の話口調になるのは私は知っている。

 それも含めて思わず微笑んでしまったが、和やかなムードは龍の咆哮で消えた。


『がおー!』


 文字で起こしたら可愛く思えるが、実際ではライオンの鳴き声よりも怖い。


「主様、ご指示を」


「えっと、アテナは龍の攻撃を前から防御、ヘスティアとフレデリカは攻撃をカバーしつつダメージを与えて。六花は戦況の伝達、結芽子は魔法瓶で龍の状態を見つつ攻撃、蜜柑は魔法銃(スペルチョーカー)で遠距離攻撃ね!私は状況に応じてカバーに入ったりするから。

 それじゃみんな、ひと狩りいこうか!」


 慣れない人への指示を脳をフル回転させて伝え、私の2つ目の武器[キノコタン・ナイフ]をくるくる回して私の手に納めた。


「「「おーー!」」」


 みんな、ここは家族一丸で頑張るよ!



 ・・・・・



 まずは敵の動きを止めることが最優先だ。

 モンスターなハンターみたいに落とし穴や痺れ罠なんてものは無いから、魔法を駆使して動きをとめないといけない。


「アテナ!そっち人足りそう?」


 半径50mの円状の空間で、私の声が響き渡る。


「はい、何とか持ち堪えてますわ!」


 龍の噛み付き攻撃を彼女の持つ盾で弾き、まだノーダメージで戦闘中だ。

 鋭い牙と盾がぶつかった時に生じる金属音と火花がより一層状況の過酷さを引き出している。

 攻撃に合わせて強くふんばって身を盾の中に潜めて耐えるしかない。

 もし避けてしまえば後ろの私達に攻撃が届いてしまうので常に挑発魔法を使っている。


「何とか持ち堪えてる状態か…。了解、ピンチだったらいつでも言って!」


「はい!」


 こうしている間にもアテナの体力はどんどん削られているはずだ。攻撃が当たってないとか言え、筋力の低下などを含めれば早めに決着をつけたいところ。


「静紅さん、この手の魔物はまず左右の首を切り落とすのが手だと思います!」


「そうだね。みんな、まずは右の首狙うよ!」


 三本龍の有効打は右、左、それから真ん中の首を攻撃すれば与えられる雰囲気がある。そうだよね?少なくとも昔私がやったゲームではそうだったよ。


「せやぁっ!」

「よいしょっ!」


 フレデリカとヘスティアのダブルコンボの後、私の後ろから一筋の光が飛んできた。


「聖属性魔法・電磁砲っ!」


 いつもは紺なのに今は黄色に輝かせ、軌跡を残しながら洞窟内でゆらり煌めく六花の瞳。

 彼女の指先から太い光の筋が出現し、爆風と轟音、衝撃波と共に龍へと駆けていった。


『ぐるる…』


「まだ効かないか…。よし、引き続き右首を集中狙い!」


 どうしてもあの黒い鱗が厄介すぎる。恐らくあれが衝撃吸収用のクッションみたいになって、全くダメージが通った無い気がする。


「六花、あの龍の情報を!」


「名前は[黒龍・ミツマタ]。容姿は飛ばしますね。えぇ!?黒い鱗によって攻撃の9割が受け流され、常時回復の能力で常に体力が満タンになっているようです…」


 そんなのチートじゃん!勝てるの?そんな魔物に。

 100の攻撃を龍にぶつけても、鱗で10まで受け流される。それに加えて常に回復をするのでほぼ無傷状態。


「効かへんのやったら」

「それを超える量のパワーと数で勝負だぜ!」


「そういうものなのかな!?」


 とりあえず1度前衛を撤退させて、中距離遠距離攻撃の開始だ。


 結芽子はまず火炎瓶を投げ、それから麻痺瓶を投げた。


「防御力がくっそ高い魔物は、状態異常で固定ダメージ与えて倒すのがセオリーなんや!」


「あ、そ、そう…」


 着弾点から魔法陣が広がり、そこに業火と電気が出現する。

 麻痺瓶で動きを止めて、火炎瓶の燃焼で持続ダメージを与えるというわけか。


「俺は一点狙いで鱗なんか壊してやる!」


 洞窟内の比較的高い岩場から龍を見下ろし、標準を合わせて深呼吸一つ。

 気持ちを落ち着かせて、追加で購入していたスコープを銃に取り付けてそれを除いた。

 これもリーエルの魔道具で、元々は望遠鏡だったものを作り替えて銃に取り付ける用にオーダーメイドしたものだ。自分の意識で倍率が変えられて、命中率補正もある優れ物!


「一点狙いって言っても、どこにすればいいんだ?」


「こんのバカ!首だよ首!」


「あー、はいはい」


 ほんとにこいつが社長やってたか不安になってきた。アホか!


 蜜柑は銃のトリガーを弾いて魔法弾を龍に撃ち込んだ!

 効いてなくも無いがやっぱり効果は薄い。


「そのまま撃ち込んで!前衛は炎が消え次第蜜柑の弾に気をつけながら戦って!」


 指示を出し、振り返って結芽子の方を見る。


「結芽子、炎効いてる?」


「うーん、まだ分からへんわ…」


 実際、効いているかも分からない攻撃を続けている訳だし、手探りで倒さないといけない。


「了解!」


「静紅さん!アテナさんがそろそろ限界みたいです」


「まじか!」


 六花に言われ、咄嗟にアテナの方を確認する。

 体力は限界を迎え、辛うじて直接的な攻撃は食らっていない状態。


中級治癒魔法(ヒルア)!」


 うちの家族は何かと怪我が多い。

 ナイフで指を切ったー、とか階段から落ちたーとかね。

 そういう時に誰かが回復手段を持ってないといけない。それが私。

 今では下級治癒魔法のヒールから一つ上の中級治癒魔法のヒルアをいつでも使えるまで成長した。


「主様、感謝しますわ!」


 傷は癒えた物の、疲れは取れないのがこの世界の回復手段。

 盾が崩れれば一気に後衛に攻撃が来てしまう。早急に討伐しないと。


 ヘスティアとフレデリカは攻撃を続けるが、息が上がってきている。


「六花、アレ出して!」


「はい!魔法札・流水龍(ヨルムンガンド)!」


 薄い皮を鞣した札から、水で作られた龍が出現し、龍に向かっていく。

 盗賊団基地破壊作戦の時に結局使わなかったので、まだ残っていたルカとルナの魔法。

 いつ見ても凄い…。


「いっけぇええええ!」


 漆黒と蒼水の龍がぶつかり合い、やがて弾けた。


「どっちが勝ったの?」


「アテナさん!情報伝達を!」


「まだ煙で見えませんわ!」


「とりあえず下がっとき!危ないで」


 土煙と水蒸気やらで視界が塞がれた後、龍の影がうっすら見えた。

 嫌な予感と少しの絶望感が私を掴んで離さない。


「そんな…」


 三本の首に巨大な胴体が、そこにはあった。


 そんな…ルカとルナの魔法だよ?


『ぐるるるらぁぁあ!』


「こんな奴に…勝てんのかよ」


 蜜柑が膝から崩れ落ちた。この場にいる全員がそう思っただろう。


「……」


 絶え間なく繰り出される攻撃。

 ほぼ衝撃を通さない堅い鱗。

 能力で常時回復するその龍は、


 私達には高すぎる壁そのものだった。


『がおーー!』


 龍の口から猛毒の液が出され、洞窟内に広がる。

 毒に侵された私は足が動かなくなり、肌が酸に侵されたように痛くなってくる。


「もうダメ…」


 ここが私の死に場所だな。

 そうとまで思ってしまった。


 濡れた銀髪が揺れ、龍が退くのも知らずに、私は地面に倒れ込んでいたのだ。


「諦めたら何にもならないよ」


 長い銀の髪は海水で濡れ、その肌は普通の人間より色が薄い。

 人間の足が生え、武闘家らしい構えと凛とした背中が私には見えた。

 水の泡が辺りに満ちて、毒を消し去る。


「水魔分子が…」


 青い光の粒が彼女に集まっていき、やがて彼女の糧となる。

 大きく息を吸い込んで右手に力を込める。

 手が青く輝いて、それを強く握りしめて…


「すぅ…、んっ」


 どごおおん!という音と合わせて、龍の鱗が弾け飛ぶのを私は目を丸くして見ていた。


「うっそぉ…」



こんばんわ!秋風 紅葉です!


いやぁ、久しぶりの戦闘シーンですね!

盗賊団基地破壊作戦の時以来かな?

厳密に言えばカットされた1ヶ月の中でちょくちょくお小遣い稼ぎで魔物と戦っていましたが、描写するのは久しぶりでした!


どうですか?もう少しテンポあった方がいいですかね?


これからも試行錯誤しながら手探りでやっていきますので、よろしくお願いいたします!

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