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第84頁 帰ってきた社畜たち


 さてさて、こうしてリーエルにお土産を渡したわけだ。

 次は誰に渡そうかな。


 少し伸びてきた桃色の髪を触りながら私は心の中で呟いた。


「そうですね、久しぶりに王邸にでも顔を出しますか」


「きゅ、急に何言い出すんだよ!?」


 過剰にビビった蜜柑がフレデリカのエルフ特有の耳をつねって叫ぶ。


「あ、いえ、お師匠様の心の中を覗いてただけなんで大丈夫ですよ」


「何勝手に覗いてるんだよ!」


 心を読まれている方も読まれているって分からないからタチが悪い。

 心を読むって使い方によっては犯罪だって出来るからな……。フレデリカはもちろんそんなことしないと思うけど。


「えへへ、お師匠様って意外と変な事考えるんですね」


「変な事…」


「おい待てほんと待て!へ、変な事!?」


 そんなこと考えてた自覚ないんだけど……。無意識だったらそれはそれで怖いし。


 六花が少し顔を赤くし、フレデリカが頭の後ろに腕を組んで笑いながら歩き、私が本気で焦っている。結芽子は商店街の入荷品の確認をしながら歩いて、蜜柑は何やらブツブツ言っている。


「肺から取り込んで手のひらに…?よくわかんねぇ」


 魔法の練習だろうか。

 この世界に来たのなら、せっかくだから魔法は使いたいよね。


「にしてもさっきさ、王邸って言ったよね」


「言いましたよ?」


「紗友里今居るの?忙しかったりしないの?」


 あの時のように竜に乗って国を駆け回っているんじゃないだろうか。

 石レンガをカツカツ歩いて王邸を到着点に歩き出して、私とフレデリカは会話を続ける。


「ああしてみんなで竜に乗るのは救援要請の時だけですよ。普段は各自鍛錬や事務をしてます」


「なるほど…ってことは会えるのか」


「…?」


 2週間ぶりぐらいの紗友里との面会。

 彼女は神を追っているため、私も何かと協力はしておきたい。と言ってもこれと言った情報は特にないのだが、神とルースリィスという少女の関係についても調べておきたい。【クラ=スプリングス】で遭遇した時…私は何も出来なかった。

『いずれ分かりますよ』

 ルースリィスのその言葉が気がかりだ。

 いずれとはいつなのだろうか。

 サイクロプスのように魔物を召喚して人を襲ったりしているのだろうか。

 結論付けるには情報が少なすぎる。

 それもこれもこれから分かれば良いのだが……。



 ・・・・・



「やっぱりいつ来てもでかいなぁ」


「ホントな、国会議事堂ぐらいあんじゃね?」


 家族のふざけ担当の2人が王邸を見上げて声を上げた。

 木造建築の豪邸は以前からどこも変わっておらず、綺麗に整えられている。


「インターホンとかないんですかね?」


「いんたーほん?」


「あー、ボクの故郷に伝わる呼び鈴です」


 それで納得したのか、フレデリカも王邸を見る。


「呼び鈴は無いですね」


「じゃあどうやって……」


「そういう時は!」「この2人が…担当する」


 遠くから手を繋いで歩いてきたのは2人の少女…幼女。

 元気いっぱいな姉とおとなしい妹の銀髪の双子メイドだ。


「ルカ、ルナ!」


「はいのん!こんにちは、久しぶりシズクさん!」


「久しぶりと言っても…3日程。それでもルナは会えて嬉しい」


 な、なんだこの子達……!!可愛すぎんだろ!


「お師匠様」


「はい……」


 くそ、フレデリカ常に心の中を覗くのやめてくれ…。


 私とフレデリカの会話に頭の上にハテナを浮かべたルカルナに、とりあえず王邸の中に案内してもらうことになった。


「静紅さんのばか」


「ん?六花、何か言った?」


「いえ!なんでもありませんよー」



 ・・・・・・



「いやぁ、どこ見ても高そうやな」


「こ、この壺1つで俺らの財産吹っ飛ぶんじゃね?」


「え、でもこの絵も高そうやで」


「芸術ねぇ……小学生でももっといい絵かけると思うんだけどな」


「蜜柑ちゃん、有名な人が書いたから高いんちゃう?あとは私らには分からへん芸術があるんかもしれんし」


 廊下でわーわー話す蜜柑と結芽子。

 振り返ってみると、だいぶ距離が離れていたので大声で呼ぶ。

 今私達が進んでいるのは、だいぶ距離が離れていたって表現ができるほど長い廊下ということだ。


「ね、六花。この世界に夏ってあるのかな?」


「あると思いますよ!今は確か…春の中旬?」


 先日温泉に入った私だが、海も何だか懐かしくなったのだ。

 生前に海に泳ぎに行ったことなどなかったが、せっかくの異世界。仕事も無いので出来るだけ遊びたい。


 レッドカーペットが敷かれた廊下を歩き、階段を登って到着したのは、


「玉座の間?こんな部屋あったっけ?」


「この王邸は…見た目より広い…。恐らく静紅さんがこの部屋に…来たことがないだけ」


「なるほど」


【玉座の間】ってことはやっぱり王様の椅子とかあるのかな。紗友里がしっかり王様してる所何気に見たことないかも。

 近衛騎士達に命令してるところは見てるけど。


「サユリ様!シズクさん達が来たのーー」


 扉をノックして、ルカが開けた。

 書類を持って何やら悩んでいる王様の姿がそこにはあった。


「あ、よく来たね。みんな」


「相変わらずかっこいい服着てるんだね」


 深緑の針のようなロングヘアに軍師服のような男装、しっかりとしたハリのある肌、体型も異世界人と並んでも申し分ない程の容姿の彼女の名前は[伊豆海 紗友里]。

 名前が漢字で書けるという事で、もちろん異世界転移者だ。日本の女子高校生だった彼女はこの世界に来て8年目。どんな苦労をしたかは知らないが、王になるのはそう簡単なことでは無いはずだ。


 私はみんなより1歩前に出して紗友里に話しかけた。


「紗友里さん、久しぶりです。毎日フレデリカさんのお世話をしてます」


 それってお世話になってますって言うんじゃないの!?

 いや、まぁ確かにフレデリカのせいで疲れることもあるからお世話している……のか?


「あはは、そうかそうか。フレデリカがお世話になってるよ六花。それに蜜柑、結芽子も久しぶりだね」


「そっちも元気そうで良かったぜ」


「紗友里ちゃん、こんにちはぁ」


 笑顔で挨拶を終えて、今度はフレデリカの方に視線を向ける紗友里。


「フレデリカ」


「は、はい!」


 少し間を開けて、ニコッと微笑んで紗友里は口を開いた。


「くすっ…、元気だね。よかったよかった」


 一通り挨拶が終わったことを確認した私は「それでね」と前に並べてお土産を差し出す。


「これ、昨日クラ=スプリングスに行ってきたから」


 温泉まんじゅっ!を紗友里に渡して、次々渡して、どんどん渡す。


「まず紗友里でしょ、ルカとルナでしょ、フランにニンナ…あれ?こんなにお土産いる?」


 8箱も持ってきたのに、必要だったのは4箱だ。

 せっかくだし、近衛騎士の人にも渡しておくか。


「それじゃ、これみんなで食べて。美味しいまんじゅだから」


 この世界のまんじゅうはまんじゅというらしい。だからこのお土産も[温泉まんじゅっ!]なのか。


「ありがとう、受け取っておくよ」


『後でちょっと2人で話したいことがあるんだけど』


 私は紗友里の耳元で囁く。

 あの件について、紗友里と情報を共有しておきたいのだ。


「分かった。ルカ、ルナ」


「はいの!」「承知した」


 紗友里の短い言葉に2人は反応して、訓練された様子で他の家族を退出させた。


「フレデリカ…心情透視は禁止…。ぷらいばしー?の問題」


「分かってますよ!私だってぷらいばしーは守ります」


 がちゃんっ。


「さて、みんな出ていったね。どうしたんだい?2人で話したいなんて」


 紗友里は玉座から降りて、私に寄る。


「クラ=スプリングスの北部にルースリィスが居たの。黒いフードを被ってて顔は見えなかったけど、あの話し方と不気味さはルースリィスに間違いないよ」


「っ……、そうか。会話はしたのかい?」


「うん、なんか内部に入ってきたとか何とか」


「内部……?洞窟とかの話か?」


「それも、花園に来たら分かるって」


「花園って言ってもこの世界にはたくさんある。そう言えば、海辺の花園に何やら不審な人物がいたって報告があったな。特に問題視はしていなかったが……」


「海辺か…。そう言えばこの世界に海ってあるんだね」


 かなり前にフレデリカとしりとりしたときに聞いただけで、実際見たことは無い。


「あるよ、私はそこまで行かないが、海鮮系の魔物が沢山生息しているから漁業が盛んみたいだ」


「それも、日本と一緒なんだね」


「この世界とあの世界は違っているようで結構似ているよ。ほら、クラ=スプリングスに行ったなら登っただろう?時計台。そこにエレベーターもあったし」


「あったあった」


「電気も開発しているらしいし、似ている」


「よし、分かった。また時間が空いたら【海辺の花園】って所に行ってみるよ」


「行くなら国道・北東道を使った方が早い。こちらも少し調べてみることにするよ。それにしても、時間が空いたらって何かしているのかい?」


「うん!バイト始めたんだ〜」


「ああ、そう言えば、ルカとルナが言ってたような。リーエル魔道具専門店だったかな。リーエルにも連絡を付けて魔道具の生産費を補助してあげたい」


「えぇ!?どうして!?」


魔法札(スペルカード)はかなり使える気がする。ルカとルナしか使えない魔法が全員に使えるとすれば、かなり戦力アップも見込めるからね」


「そう、ならそれもよろしくね!」


 というわけで会話を終えて、王邸を出た。



 ・・・・・



「静紅さん、何話してたんですか?」


 1度家へ帰る途中で、六花が私を覗き込んで聞いてきた。


「えーっとね…」


 家族にルースリィスの捜索をしていることは内緒だ。絶対無理をするし、危険が及んでしまう。

 この秘密だけは……


「また今度海行こっか!」


 死守しないと……。

こんにちは!秋風 紅葉です!



最近ドラクエ5にハマってしまって……9時に投稿しようと思ってたんですが、まだ書けてなくて…その、はい!遅れてしまいましたーー!


ほとんどが会話文で…怠けてしまったところもありましたが、午後のお昼時には間に合って良かったです!



それではみなさん!これからもよろしくです!

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