第76頁 モニカ・クロムウェル
ゴミ山でココロを探していたカルディナに、静紅はココロの探索を協力することに。
ゴミ山に見つからなかったなら、次の場所は工場に…
ということで、工場へやってきた。
「よーし、着いたよ!」
私がゴミの山にあった大きな板を浮かせて、そこに3人で乗り、
飛んできたのは【モニカ機械工場】の看板が付いた小さは建物だ。
私もこの世界の文字はだんだん読めるようになってきた。
「モニカ機械工場?それがあなたの産まれた場所なの?」
「はい、何だか不思議な気分です。昔いた所に戻ってくるといつもこうなります」
「カルディナちゃん、それは[懐かしみ]って言うねんで」
懐かしみか…。
カルディナには懐かしみという言葉が無いだけで、感じるは感じるのだろうか。となると、悲しいのを悲しいと表現出来ないだけかもしれない。
「懐かしみ…?この気持ちが…私、感じてたんですね。よかったです」
カルディナは胸をぎゅっと掴んで安心した素振りを見せる。
「とにかく、はよ探そうやカルディナちゃんのココロってやつ」
「そうだね」
工場のドアを開けて、入るとホコリの被った機械が沢山あった。
錆びた通気口、蜘蛛の巣の張った部屋の隅。
油の臭いが染み付いた床、ヒビがいっているが割れていない窓、1度壊れたからか、補強された天井。
「うーん、ある?」
中を探索しても、失敗作の人形達がことんと座っているだけだ。カルディナとは大きくかけ離れた機械的なロボット。
それに比べてカルディナは、髪も生えて、服も着ている。
「いえ、見つかりません…。博士がもしまだ生きていたら…」
「博士って、あなたを作った博士?」
「そうです」
テーブルの上に置かれた小さな日記を読みながら、カルディナは私たちに博士について語りだした。
・・・・・
「……」
カルディナが目を覚ました瞬間だった。
数年かけたモニカの研究、[シンガーヒューマノイド研究]がとうとう成功したのだ。
「カルディナ、分かる?」
モニカはぶんぶんと大きく手を振って自分の存在をカルディナに伝える。
カルディナの視界に動く物があったのでそれに合わせて視点を合わせる。
茶髪のもふもふツインテールに低身長。萌え袖になるほどぶかぶかの汚れた白衣。
可愛らしい少女の名前は[モニカ・クロムウェル]。カルディナの製作者だ。
「あなたが私の親ですか?」
「やったー!喋った喋った!」
少女は手を挙げて大喜びする。部屋中を走り回って、息をあげて床に寝転ぶ。
モニカは天才だがアホなのだ。
顎まで垂れた汗を白衣の裾で拭い、一息つく。
「私の名前はモニカ。モニカ・クロムウェル!あなたの名前は?」
モニカは白衣から小さな手を出して笑顔で自己紹介をした。
モニカの設計通りなら、名前を聞かれたら自己紹介をするはずだ。
「私の名前は…分かりません」
「うーん、そっか」
頭を掻き、唸るモニカ。
自己紹介は出来なかったが、分からないことは分からないと言えた事だけでも凄いと思い、カルディナに名前を教える。
「あなたの名前は、カルディナ!機械の歌姫のカルディナだよ!」
「かる…でぃな、私の名前はカルディナ。分かりましたマスター」
「違う違う、マスターじゃなくて博士だよ」
しっかり作ったはずなのに、どうしてもモニカに向けてはマスターと呼んでしまう。
モニカはカルディナに自分を博士と呼ばせることにして、次のテストに移行する。
「カルディナ、歌って」
「はい、博士」
わくわくしながら命令するモニカに、短く答えた後、カルディナは綺麗な歌声で歌い出した。
母親に歌ってもらった歌を聞いて懐かしく思うモニカに、カルディナは首を傾げて質問する。
「どうして私のようなロボットを作ったのですか?自分で歌えばいいのに」
そう言われたモニカ、恥ずかしそうに地面を足で蹴りながら言った。
「ほら、私って歌下手だよね?」
「存じ上げません」
「と、とにかく!私は歌が好きなんだけど、歌うのは苦手なの。だからあなたみたいな歌うロボットを作ったんだ!」
そう、モニカはとてつもなく歌が下手。武勇伝で言うと、歌って歩いてたら猫が失神した。
それほど歌うことが苦手な音楽好きの少女は、毎晩眠りもせず研究と開発を繰り返し、ようやくカルディナを作り上げたのだ。
「歌うロボット…。私が歌えますかね」
「さっき歌えてたじゃん!それだけで私は幸せだよ!」
えへへ、と笑ってカルディナに抱きつくモニカ。
カルディナは彼女の髪をそっと撫でてニコッと笑う。
それが、カルディナの笑った最後の出来事だった。
モニカは父は産まれる前に他界、母は小さい時に亡くなってしまったので、いつも一緒にいれる人物が欲しかったのかもしれない。
それが、たとえ機械の人形であっても。どんな愛情表現であっても。
・・・・・
「博士はあれから病気にかかり、死んでしまいました。博士が亡くなった後に功績が認められましたが、貰う人が居ないので何事も無かったように消えてしまったんです」
「そんなことが…」
カルディナは、パタンと博士の日記を閉じて、そっと撫でた。
博士の死、周りからの心配の目。それらがあったからココロを無くしてしまったんじゃないだろうか。
私はカルディナの話を全て聞いた後、1つのお願いをした。
「ねえカルディナ。歌ってみてくれない?」
「私が歌うんですか?作詞作曲機能は消えていますが、中に残っている歌なら歌えますよ」
そう言って、カルディナは椅子に腰かけて眼を閉じる。その綺麗な表情に驚きつつも、私はカルディナの歌声を楽しみにしている。
カルディナの音声いや、歌声が古い工場に響く。静かな歌声が鼓膜を優しく震えさせて…。
「凄い声じゃんカルディナ!」
「めっちゃ良かったでー!!」
「ありがとうございます」
褒めたのに真顔で答えるカルディナ。
「カルディナ、今どんな気持ち?」
「静紅と結芽子に良かったと言ってもらって…、なんと言えばいいのですか?」
悩んだ挙句、私に聞き返してきた。
「それはね、嬉しさって言うの」
「嬉し…さ?これが、人の感じるもの??」
カルディナは自分の手のひらを見つめて、何が起きているのか分からない様子。
それりゃそうだよ。今まで自分にはないと思ってた物が元々自分の中にあったんだもん。
なーんだ、カルディナ。あなたココロが無いって言ってるけど、自分が知らないだけで持ってるじゃん。
「嬉しさ…これが嬉しさですか」
喜んでいるのか、真顔なのでよく分からないが、何度も繰り返しているということは嬉しいのだろう。
こうして、彼女にまたひとつ感情が生まれたのでした。
こんにちは!秋風です!
前書き雑だったかな…(笑)
寝る前なんで、早く寝たいんですー!
「何言ってるの、もっと頑張って!」
人の三大欲求を潰す気か貴様ー!
それに、静紅ならこのしんどさ分かるでしょ?
「そんなの栄養ドリンク飲んだら行けるでしょ」
社畜と一緒にしないで!?
はぁ、という訳で、今日はここまでです!2話投稿したんだっけな……?
おやすみです!




