第66頁 これが私の脅し方
竜車で移動中の静紅達。
国道・南東道を貫通する【巨大鍾乳洞】に建っているのが盗賊団基地である。
「頁をめくるのだー!」
「それでね、行動は主に隠密で!」
竜車の中で、私はほかの4人に作戦を伝える。
・竜車で盗賊団基地付近まで移動
・基地内のどこかに居るボス的存在を見つける
・出来れば交渉、無理なら…全面戦闘だ。
フレデリカに出してもらった[光球]は、大きさの割にはとても明るくて、ロウソクの火よりも明るい。
蛍のようにふわふわと宙を飛んでいて、私にずっとついてくる。
この光球のおかげで、真っ暗な【巨大鍾乳洞】内でも周囲の安全確認をできるという訳だ。
そこから少し進んでいくと、やがて竜車が止まった。
ここでナーシャとは1度別れる。
小さい子を戦闘まで連れて行けないしね。
ナーシャに竜車で待っててもらう間に私達が盗賊団の横暴を終わらせる。
ナーシャ自身もそれなりの戦力はあるのだが、2匹の竜も負けないぐらいの防衛力はあるらしい。周りの状況を野生のナンタラで察知して、飼い主に知らせることができるので、尚更安心だ。
「よし、行こ」
できるだけ声量を抑えて、私はみんなに出発することを伝える。
鍾乳洞の中央は大きな国道が走っていて、それを上から囲むように作られているのが目的地の【盗賊団基地】。
入口の階段を登ると第一村人ならぬ、第一敵人が居た。
門の前に立っているので、恐らく門番的存在なのだろう。
「六花」
「はい」
私の呼び掛けに六花が反応し、眼を黄色に輝かせる。
少し深呼吸をして、指を門番に向ける。
「聖属性魔法・電磁砲」
威力を最小限に抑えた電磁砲は、無音で門番の足を貫いた。
「な、なんだぁ!?敵襲…っ!」
「おっと、ちょっと眠ってもらうで」
よろけた門番を後ろから捕まえて、耳元で囁く結芽子。首に少し衝撃を与えると、門番はたちまち気を失って倒れてしまった。
アニメでよく見るアレだー!!
と、少しテンションが上がりつつも、ゆっくりと門を開く。
そこには、何人もの盗賊がそれぞれ自由に過ごしていた。
その数およそ40人。
私が門を開けるのと同時に40人の視線が私に集まる。
「あ、失礼しま──」
「「ひゃっはー!可愛い姉ちゃんがわざわざ来てくれたぜぇ!」」
うわぁ、絵に書いたような世紀末感…。
これはもうどうしようもないわ。
「結芽子、頼める?」
「はいなっ!」
瓶を手の中に出現させて、それを基地の天井に投げつける。
黄色い魔法陣が部屋いっぱいに広がり、やがて電気が発生する。
「「うわああああ!」」
「なっ…麻痺状態…」
「ねぇボスの場所をおしえてくれない?出来るだけ乱暴なことはしたくないのだけれど」
「ひ、ひぃ!い、言わねぇぞ…」
そうか…そう来たかあ…
私はゆっくりと盗賊に近づいていき、床に痺れて倒れているのをしゃがんで見下ろすように言った。
「なら、乱暴な事しないとだけど…いいよね?」
「うわぁ、あいつ怖ぇ」
蜜柑が後ろで引いた気がしたが気にしない!
盗賊の鼻先に能力でキノコタン・ナイフを持っていき、固定する。
「くっ…物体操作系の能力か…!」
「そ。だから、このままこの基地事動かしてあなた達を潰してもいいのだけれど。ほら、ボスの場所を教えてよ」
脅すのは苦手だが、上手くできてるだろうか。
刃物を突き立てていると、何だか侵入者みたいな感じがする。あ、今私侵入者だわ。
「ほら、ごーー、よーーん、さーーん、にーーー…」
カウンドダウンを進めると同時に人形の長槍を盗賊の口に持っていく。
「いーーーーち…ぜーーー」
「っ…!分かった、分かったよ!」
カウンドダウンが終わるよりも先に、男が降参したように叫んだ。
正直、降参してくれてよかった…、わざわざ私の手で殺したくないもんね。
降参したということで、キノコタン・ナイフと人形をリュックの中に能力で戻し、
「分かればいいんだよ。それじゃ、案内してね」
私は盗賊が武器を持っていないことを確認して、麻痺を解いた。
「中級治癒魔法・解痺」
何かと便利な治癒魔法。
下級だと持続的治癒の魔法しか無かったが、中級を習得すると派生系が出てくる。
通常の持続的治癒に加えて、[解毒]、[解痺]、[解火傷]の3つが使用出来るようになる。
【下級治癒魔法】→→→【持続的治癒】
【中級治癒魔法】→→→【持続的治癒】
↓
→→→【解毒魔法】
↓
→→→【解痺魔法】
↓
→→→【解火傷魔法】
みたいな感じ。そして、今回は解痺魔法を使用する。
「はぁ、一命を取り留めたぜ…」
「言っておくけど、まだ油断はしないでね。こっちは元王都近衛騎士団が居るんだから」
その声に、フレデリカが「私?私ですか!私ですね!」と喜んだ。
「あ…あんな奴が王都近衛騎士団…」
うん、言いたいことは分かるよ。胸はバカみたいにでかいし、実際バカだし、戦闘狂みたいな近衛騎士団なのにも関わらずスタイルはいいし、体重は私たちの中でいちばん重たいし。
「お師匠様!?酷いですぅ!」
「き、聞かれてた!?こほん、とりあえず、早く案内してね。ピンクの魔人を案内するナメック星人みたいなことしたらキレるからね」
「ピンクの魔人?なんの事か分かんねぇけど、早く案内した方が良さそうだな。よし分かった、ついてこい」
よく考えたら、普通にさっきのネタ伝わったら怖いわ…。
蜜柑と結芽子はクスクス笑っていたので、多分意味はわかったのだと思う。
私が捕まえた盗賊以外はまだ痺れて動けなくなっていたので、ことが終わったら処理しよう。
解痺した盗賊がいい人そうで良かった。ここで「油断したなクソアマァ!!」とか言って飛びかかられたら流石の私でも対応出来ずに殺られていたかもしれない。
途中、他の盗賊にも遭遇したが、前を歩く盗賊さんが説明をしてくれたので敵対はしてこなかった。
やがて、1つの大きな扉がついた部屋の前に到着する。
「さ、ここがボスの部屋だ。多分この中にいるだろうよ」
「分かった。短い間だったけどありがとね」
「いやいや、強者に牙をむくほど俺も馬鹿じゃねぇよ」
ま、後で牢獄にぶち込んでやるんだけど、今は感謝しておこう。
男を解放して、私達は大きな扉を見つめる。
息を飲んで、私は勢いよく扉を開けた。
半円を描くように設置された机の上には様々な紙が置かれていて、何やら怪しいことが書いてありそうだった。
「静紅さん、誰かいます」
六花のその声に、他のみんなは武器を構える。
「はは、そんなに逃げなくていいのに」
椅子に座っていた人物は立ち上がり、こちらに近づいてくる。
「おっと、これ以上近づくとボクの電磁砲が…飛びますよ」
「電磁砲か、聞いたことない魔法だ」
私はフレデリカに貰った光球を声のする方へ飛ばす。
炎のように紅い髪に赤い瞳、薄い肌になんと言っても特徴的なのは[狐の面]。
そう、この女性が盗賊団のボスという訳だ。
「とりあえず、自己紹介でもしておくよ。リュカ・アザリア…盗賊団のリーダーだ」
アザリア…その名前に、どこか聞き覚えがあったがその時の私は思い出すことは出来なかった。
こんにちは!秋風 紅葉です!
うーん、今日はPVが集まらないなぁ…。まぁでも!PVに囚われすぎも良くないですよね!一昨日と昨日が凄すぎただけなんです多分(笑)
さてさて、盗賊団のリーダー[リュカ・アザリア]さん。
キャラクター紹介を見ていただければ分かるんですが、アザリアという名字を使っている人物が1人いるんですよね!
それがどうつながっていくのかも楽しみです!
それではこれからもよろしくお願いします!