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第60頁 恋友と書いて敵と読む

結芽子の怒涛の魔法瓶ラッシュで亡骸と化したセンチピーサー。それはこの世界で成し遂げられたことの無い快挙なのでした……。


「めくるなの!」

「姉さん…それだけだと言葉が足りない。

皆さん…次の(ページ)をめくって欲しい」




「静紅さん達がやったの?」


 結芽子の怒涛の攻撃で、亡骸と化したステップセンチピーサーの上に、ゆっくりと降り立った天使は紗友里に仕える双子メイドのルカとルナだ。


 銀のショートボブに、身長は120cm程。

 王都の服屋お手製のエプロンドレス風メイド服、ふっくらとした輪郭とエメラルドのような翠の瞳。

 元気いっぱい好奇心旺盛で語尾は「なの」

 双子メイドの右手、ルカ。


 同じく銀のショートボブに、身長は115cmほどで、ルカより低い。

 ルカとお揃いのメイド服を凛と着こなし、ふっくらとした輪郭とトパーズのような黄色の瞳。

 引っ込み思案でも心は強い。話すのが苦手なのか、声が小さい。

 双子メイドの左手、ルナ。



 そんな2人が空から降りてきたのだ。


「私がやったって言うか…結芽子かな」


「ユメコさんが…。凄い、王都近衛騎士団でも討伐に苦労したのに…」


 そう、ステップセンチピーサーは長年討伐作戦が決行されていたのにも関わらず、甚大な被害と想像以上の強さに王国も手を出そうとはしていなかった。


 そんな魔物が今、結芽子によって倒されたのだと思うと、私も嬉しすぎてジャンプしたい程だ。


「いやぁ、私はなんも凄ないで。凄いのはこの魔法瓶や」


 そう言って、結芽子はルカとルナに魔法瓶を見せる。


「火炎瓶だけじゃないの!?」


「姉さん…ルナ、聞いたことがある。中央部のどこかにひっそりと建っている魔道具店があるらしい…そこで火炎瓶以外の魔法瓶も売ってるって」


 リーエルの店ってそんなに都市伝説みたいな扱い受けてるの!?


「あー!あの噂ならルカも聞いた事あるの!そこの店主さんっていつも失敗してるらしいの」


 リーエル…うん、どんまい。


「ま、まぁそこのお店の店主と仲いいんだけど、店主さんいつも頑張ってるよ」


 ここはリーエルをフォローしておこう…。バイト先のオーナーみたいな存在だし、いい噂を流しても怒られはしないはずだ。


「「ふぅーーん」」


「凄い魔道具とかもいっぱい売ってあるから、また今度連れて行ってあげるよ!」


「「やったー!」」


 これでルカとルナとのデートが決まったな。紗友里にまた今度伝えておかないと。予定を開けて、家族にバレないように外に出て…


「お師匠様」


「ひゃ、ひゃい!」


 あ、待って。フレデリカって心を読める能力を持ってる気が…


「さて!ルカさんとルナさんも揃ったことですし、今日は外で昼食を食べましょうよ!ボクお腹ぺこぺこです…」


 六花の言葉と同時に誰かのお腹から音が鳴る。


「そうやな!今日は私たちが奢るから、ルカちゃんとルナちゃんも一緒に食べよか!」


「わーい!ありがとうなの!」

「ありがとう…ユメコさん」


 フレデリカの鋭い視線を掻い潜り、私たちは王都へ昼食を食べることにした。

 もちろんステップウルフとステップセンチピーサーの亡骸を結芽子とフレデリカに収納してから。


 フレデリカさん…そんな怖い目をして見ないで下さい。私、どんな顔したらいいか分かんないから。


「お師匠様」


 その言葉と同時にフレデリカは私の足を踏みつける。


「痛っ…!」


「「「ん?どうした?」」」


「あ、いや…ナンニモナイデス」



 ・・・・・



「へいらっしゃぁーい!!」


 威勢の良い声が王都西部にある店に響く。


 私達は今、西門から街の中に入り、美味しそうなレストラン、【高原の鹿】に来ている。

 外装は都会のネットでバズった事で人気が出たお店っぽい。

 実はこのお店、有名な食事評論家がレビューを書いたことで流行ったらしい。


 どこの世界も同じなんだなぁ…。


 と軽く呟きながら、私は7人で座れる大きなテーブル席に座った。

 それにしてもマスターのおじさんとは真逆で、内装はオシャレだな。

 黒い漆喰の塗られた壁に、装飾用の長細い整えられた小木。

 入口付近には窓ガラスが取り付けられてあって日光も入って明るいイメージだ。

 席はカウンター、テーブルの二種類でカウンター席は店内のキッチンに直通した形。テーブル席は壁横にソファーが向かい合って置かれた感じで、

 カウンターが個人や少人数。

 テーブルが大人数という風に考えられているようだ。

 この世界の文明進行度にしては、なかなか人員配置が優れている方だな。


 てか私めっちゃ上から目線じゃん…!


「お師匠様、上から目線はダメですよ!」


「勝手に心読まないでよ!」


「そんなイチャイチャしてたら六花ちゃんが嫉妬してまうで〜」


 そう言われ、私は急いで六花の方に視線を向ける。

 そこには、「むぅ…」と頬をふくらませた六花の姿があった。

 アホ毛が異常にぴんぴんと跳ねていることから、かなり気がたっていることが伺える。


「シズクさん酷いの!リッカさんはシズクさんのことを想っているの。それを無視したらダメなの!」

「シズクさん…恋の力は強大。あまりそれを棒に振ってたらいつか痛い目をみる」


 ルカとルナの言葉に、六花は強く頷く。


「静紅さん。ボクよりフレデリカさんの方が好きなんですか?」


「ちょ、お店の中でそんなこと言ったらダメでしょ!ほら、みんなも顔赤くしてるし!」


「今はそんなこと関係ありませんよ!どうなんですか!?ボクから言えばこんなエルフなんてボクの足元にも及びませんっ!」


「おっと、それは聞き捨てなりませんよリッカさん!私がこんなエルフ?こちらから言わせてもらえばあなたこそ、こんな人間(ヒューマン)がお師匠様と釣り合うとは思いませね!」


「何をー!?」


「やりますか…喧嘩」


 六花が頭から怒りの煙を出し、フレデリカがメイドの白シャツの袖を捲る。

 六花とフレデリカが喧嘩している間、他のみんなは知らんぷりしてお店のメニューを見ていた。



「はっ、大修羅場じゃねーか」



 店のマスターが、キッチンの奥で料理をしながら鼻で笑った気がした。



 ・・・・・



「ねぇ、いい加減仲直りしたら?」


「「嫌です。こんな人と仲直りなんて有り得ません」」


「トーンも言葉も同じ…逆に仲良いのかもしれない好敵手と書いて友と読む。これ、ルナの名言の一つ…」


 私たちは【高原の鹿】で昼食を食べ、今度はステップウルフの牙を買い取ってくれる場所へ向かっている。のだが…


「「何が友ですか!」」


「ほらまた揃ったの!ルカとルナより仲良いかもなの!」


「そんな事ない…姉さんとルナは至高の強い力で結ばれている。誰にも越えられはしない」


 こ、こいつらめんどくせー!!!

 え、えっと?六花とフレデリカが喧嘩中で、ルカとルナは双子でイチャイチャしてるんだよね?

 状況のセイルをしつつ、次の目的地へ足を運ぶ。


「静紅さん!ボクとフレデリカさん、どちらが好きですか!?」

「お師匠様!私とリッカさん、どちらが好きなんですか!?」


「えっと…どっちも好きじゃダメ?」


 六花が本命なのは言わずもがななのだが、ここで優劣を付けてしまうとフレデリカの心が傷つきかねない。


「「だめですっ!!」」


「で、ですよねぇ…」



 好敵手と書いて友と読む。そんな言葉があるとするなら、私は


『恋友と書いて敵と読む』という名言を作るよ。


 ほら、「えぇー!?○○君好きなの?頑張って!私応援してるから!」とか言っときながら、応援する側も○○君が好きになって、女子同士が喧嘩するみたいな。もっと行けばいじめになったり…。


 おっと、昔の事が蘇ってしまう!


 蜜柑と結芽子が街を眺めながら歩き、その後ろでルカとルナが手を繋いで微笑みながら歩く。

 それを見ながら私は癒され、その後ろでは六花とフレデリカによって小さな大戦が繰り広げられている。



 そんな日もあっていいんじゃないかな。



 ──少なくとも、私はそれで幸せだ。



こんにちは!秋風 紅葉です!

気づけば60話目ですね!この物語を書き始めて約3ヶ月。

私の中で様々な出会いがありました。

個性豊かなキャラクター達、読んでくださる方々などなど。

様々な人によって私は支えられています!


60話突破記念と言ったらなんですが、登場人物紹介でも書こうかな。と思っています。


それでは!次回もよろしくお願いします!


評価ポイント100と90の間をさまよっています。

感想、ブックマークなどなど気軽にどうぞ!

Twitterもやってます(笑)

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