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第56頁 酒癖の悪いあの子


 時は遡り、私がリーエル魔道具専門店でのバイトを終え、購入した物を家に持ち帰った時の事。


「ただいまー!」


「おかえりです、静紅さん!」


 玄関のドアを開けると、そこには六花の姿があった。

 慌てていた様子も無いので、ずっと待機していたご様子。暇なのかな?可愛いからいいけど。


「あれ?他のみんなは?」


 リビングの方にも話し声は聞こえず、他に居る雰囲気も無い。


「今はぁ、ボクだけ置いて〜、皆さんで酔い醒ましの薬を〜、買いに行ってますぅ」


「何その話し方、それに顔赤いよ?」


 大体状況は把握したので、リビングに魔道具達を置きに行くことにした。

 酔った六花を押しのけて、何とかリビングのドアを開き、魔道具達を広めのスペースに置いていく。魔法札(スペルカード)と魔法瓶は麻袋に入っているが、魔法銃(スペルチョーカー)魔法人形(ドール)は剥き出し状態だ。

 少しの不安を抱えながらも、今はこの…


「抱きついてくる六花をどうにかしないと」


「えへへ、静紅さん〜!最近ボクと遊んでくれないじゃないですか。どうしてですか〜?小学生の時は一緒にお風呂も入った仲じゃないですかぁ」


 その言葉をスルーし、私は何かを察して、テーブルの方に目を向ける。

 そこには、少しの酒瓶が置いてあった。


 六花はお酒が好きだ。

 好きなのだが、酒癖が超絶悪い。そして超絶可愛い。


 可愛かったら酒癖が悪くても多少は良いのだが…、このように掴んで離さなくなるのは大変困る。


「すんすん、静紅さん…他の女の子の匂いがしますぅ!だれ、誰ですかー!」


 お前もかー!!!!と大声で言いたかったのだが、今はそんな場合ではない。

 六花は私の胸ぐらを掴んで前後に動かす。それはもう揺れる揺れる。


「そ、そりゃリーエルの所にいたから」


「りーえるだぁ?誰ですかその人…!まさか、浮気してるんですか!してるんですね!許しません…あれだけ好きって言ってくれてたのに…あれは嘘の言葉だったんですかぁ!」


「ちが、違うよ!リーエルは私のバイト先の店主で…」


「そうですかぁ、ならリーエルさんって人を一度殴ってきますー、」


「ちょっと待てぃ!!」


「静紅さん、離してくださいよぉ…」


 埒が明かないと悟った私は、六花を押し倒して、両腕で腕の固定、太ももで両足の固定。身体で六花のお腹に体重をかける。

 六花が下、私が上だ。


 今の体勢に恥じらいを感じた私と六花は良い感じの雰囲気になり…。


 そこに邪魔者が入る。


「たっだいまでーす!リッカさん、これを…の、んで…って、ぎゃーー!!」


 恐らく酔い醒ましの薬を持ったフレデリカが、私と六花の体勢を見て悲鳴をあげた。


「あぁ?フレデリカさんじゃないですか、なんですか?静紅さんとの時間を邪魔しにきたんですかあ?」


「ち、違いますよ!これ、酔い醒ましの薬です!これを飲んで今日はもう寝てください!」


 フレデリカは、薬のコルクを開けて、無理やり六花の口にくわえさせた。

 紫の液体がどんどん六花の口に入っていき、瓶の中身が全て無くなる頃には六花は眠ってしまった。


「これなんなの?」


 私は家に帰ってきた蜜柑、結芽子、フレデリカをみながら質問した。


「これは酔い醒まし薬ってやつで、なんか酔い覚ますだけじゃなくて睡眠効果もあるらしいんや」


「はぇ〜、」


 どうしてお酒を飲んでいたのかなどの疑問は残っているが、

 蜜柑は見たことない物がリビングに置いてあったので興味津々である。


「これ何だ?霊避けの札でも買ったのか?」


 そう言いながら麻袋から、魔法瓶と魔法札(スペルカード)を取り出す蜜柑。


「魔法瓶…?こんなに種類がある物なんですね」


 小瓶の中身をゆらゆらさせながら、フレデリカが呟いた。

 王都近衛騎士団も魔法瓶にはたまにお世話になるが、それでも火炎瓶ぐらいで、毒や麻痺などの瓶は見たことも聞いたことも無いらしい。


「そうそう、リーエルのお店で買ってきたんだよ」


「バイト先って言ってた所やんな?」


「うん〜」



 六花は居ないが、とりあえず魔道具の説明をする事にした。


「これは、魔法銃(スペルチョーカー)って言って、魔法が使えなくても強い魔法弾が撃てるらしいよ」


「何それ強い」


 そう言って、蜜柑に魔法銃を渡す。


「それで、これは魔法瓶。温度を保つ瓶じゃなくて、ほら、火炎瓶とか手榴弾みたいに投げて攻撃する魔道具だね。

 持ち運ぶ事も考えたら、割ったら大変だし、収納出来る結芽子にこれを使ってもらおうかな!」


「おっけー!任せときぃな!」


 そう言って、毒瓶3、火炎瓶3、麻痺・電気瓶3、滝瓶3…計12本の瓶を結芽子は自分に収納した。


「フレデリカは大剣があるから大丈夫だよね?魔法も使えるし、今回は武器は我慢してくださいっ」


「はーい!わかりました!」


 次に私が持ってきたのは魔法人形(ドール)


「これは、私が一目惚れをして買ってしまった物です!見てよこの綺麗な顔つき!

 しかもほら、このボディライン!

 髪も光ってるみたいに綺麗だし、最高だと思わない?」


「「お、おう…」」「お師匠様の趣味は私の趣味です!最高ですね!」


 結芽子と蜜柑は若干引いたものの、フレデリカは手を挙げて私の趣味に賛成してくれた。

 テーブルの上に置いて数分眺めた後、ようやく静紅は説明を始める。


「でねでね、こっちの金髪ストレートの女の子は盾で、金髪ショートの男の子は長槍を持ってるの」


「へぇ〜、可愛らしいなぁ、でもこんなんオモチャじゃないん?」


 確かに、手のひらサイズの人形が持つ武器なんて人間からすれば、キッチンのおもちゃのナイフに等しい。


 しかし、この人形達にはたくさんの魔法がかけられている。それに、リーエルという信頼出来る魔法使いがかけてくれた魔法だ。


「大丈夫大丈夫!この人形には魔法がかけられているのですっ」


「魔法?」


 胸を張る私の顔の横から、蜜柑は人形を覗き込む。


「そ。[物理衝撃吸収]とか[魔法衝撃吸収]、[殺傷能力向上]とかもあった気がする」


「殺傷能力向上とか、絶対このちっさい槍やん」


 そう言いながら結芽子は槍の刃部に指を近づける。

 そっと結芽子の指が長槍の刃部を撫でると、そこから真っ赤な液体が溢れ出た!!


「あ、血…」


 結芽子の指の様子を見て、フレデリカが小さく呟いた。

 流石の結芽子もそれに驚いたのか、慌てふためく。


「血、血ぃやん!何これ、怖っ!!」


下級治癒魔法(ヒール)!」


 リーエルに教わった魔法の一つ、下級治癒魔法。これはかなり汎用性が高いらしく、

 いくつか教えて貰った魔法の中で、序盤に教えて貰った。

 私は下級治癒魔法を結芽子の指にかけて、ため息をついた。


「はぁ、せっかく危ないって忠告したのに触る結芽子の度胸を褒めたいよ…」


「ふっふーん、農業で培った度胸やで!」


「「「ドヤる所じゃない!」」」


 お願いだからそんな度胸を危ない場面で使わないでね。


 みんな一斉にツッコんだ事に大笑いした私達であった…。



 ・・・・・



 異世界生活65日目。

 本日も王都の空は快晴である。


「んん…ふわぁ、よく寝た…」


 私が目覚めたのはベッドの上だった。

 寝る前より布団の中が狭くなっていたので横を見ると、まだ眠っているフレデリカが居た。


「………」


 なんでここにいるのか、どうして私の布団の中にいるのか、様々な疑問が頭をよぎったが、結論にたどり着くよりも先に目の前のエルフが目を覚ました。

 寝癖のついた金髪に、エルフ特有の長い耳、眠そうにその紅眼を開いてフレデリカは私に覆い被さるように二度寝する。


「にしし、お師匠様…そんな食べられませんよ」


「寝言…?」


「寝言なんかじゃありません…むにゃむにゃ…」


「ね、寝言なんだよな…!?!?」


 フレデリカの寝言は計れない。心からそう感じた。

こんばんは!秋風 紅葉です!


「えっと、リーエル・アザリアです」


リーエルってさ?小さい時何してたの?


「そうですね……リュカ姉さんと一緒に旅してました」


リュカ姉ってあの狐の面を付けた人?


「そうです!リュカ姉さんと旅する中で、魔道具を作る技術を編み出したというわけです」


リーエルって何歳なの?


「……。20後半…ですかね」


そっかそっか(笑)


次回もよろしくお願いしまーす!!


ブックマーク、感想もぜひ!


さよなら!

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