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第49-2頁 異世界バイトは魔道具店!


 一通りコーヒーの食器を洗浄し、食器棚に戻した後、それぞれ自由の時間を過ごした。



 六花は結芽子に異世界語を教えている。


 結芽子は言語を覚えるのが得意だが、訳し方が分からない以上、勉強のしようがないため、能力で異世界文字が分かる六花が隣について勉強中だ。


 蜜柑はフレデリカと明日の食料確保と調味料のレパートリーを増やすために市場へ行った。


 転移者の四人は中学生からの付き合いだが、フレデリカはまだ一週間も経っていない。


 彼女自身もそれは重々理解しているようで、私以外の人にも関係を持とうとしているようだ。


 先日の事故物件の際に蜜柑と仲良くなり、結芽子はキノコタンの森で意気投合。


 六花とは静紅を巡っての争いで打ち解けてはいる。


 師匠としては、誰とも仲良くしようとする姿勢は褒めたいのだが…


「奇数のグループって誰か一人余るんだよな」


 キノコタンのクッションをぎゅっと抱きしめ、床に寝転んでいる私は暇を持て余していた。


「……散歩行こっと」


 私は静寂が苦手だ。


 家の外は通行人が行き交い、少しは賑やかのはず。


 そう思い、私は靴紐を結んだ。



・・・・・


「この家の収入って今は無いよね…」


 紗友里と協力した時にもらった手取り純金貨10枚。これが二日間で7枚まで減っている。


 理由は簡単、家具や家賃の一括払いだ。他にもコーヒーメーカー、ランタンのロウソク、水道代、土地の税やら食料費でどんどん家の財産は消えていっている。


 食べ盛りの女性五人がいる家庭には、純金貨10枚なんてあっという間に無くなってしまうだろう。

 そのためには、ある程度の収入元の確保が必要である。


「……よし、働くか」


 私は街の中心部まで歩くことにした。



 ・・・・・



 家から中心部までは少し歩かなくてはならない。


 しかし、その道中でも店や家が沢山あったので歩くのに暇はしなかった。




 王都バリシュメロ中心部


 そこはこの国の首都であり、中枢機関が集中している。


 裁判所や国会、厚生労働省、文部科学省と同じ働きをする機関もこの国に存在し、それらは全て機能している。


 他にも第三次産業が発達しており、暮らしの楽を求めて発展してきたようだ。


 人種もそれぞれ居て、猫獣人やエルフなどが特に目立つ。



「わあ! 凄い、ここがこの国で一番栄えてる場所か……」


 その風景は平和そのもので、念の為持ってきたキノコタン・ナイフは必要なさそうだ。


「ん? なんだこれ……」


 私の目に止まったのは、張り紙がたくさん貼られた看板だ。



───────────────────

働いてくれる方募集中!


 ・物がたくさん運ぶ仕事が出来る方

 ・接客経験のある方

 ・魔法に興味がある方


 働き手の方は以下の住所まで!


 ­­ 王都中心部はずれ通り第4路地


       リーエル魔道具専門店

───────────────────



 沢山貼られた張り紙の中の1枚が目立っていた。


 一通り目を通した後、紙に書かれた住所を覚え、その店を探して街の探索を始めた。



 ・・・・・・・



 中心部の中でも少し離れた場所にあるこの建物が、探しているリーエル魔道具専門店なのだろう。


 外見は至って普通の喫茶店だが大丈夫なのだろうか。


「し、失礼しまーす。働き手募集の張り紙見てきたんですけど……」


 ゆっくりと重たいドアを開けると、そこには一人の女性と客と思われる人物が居た。


「­­──これは魔水晶と言います、持ち主のイメージカラーをそのまま映し出してくれるすごいものなんです」


「なるほど……でも需要は無いかな」


 一般客らしい女性は興味がなさそうに首を振る。


「で、でしたらこちらはどうでしょう! 私が開発した魔法札(スペルカード)と言います。この札に魔法の呪文を書いて魔法を使う事で次の魔法発動時は魔力の消費なくそのままの効果で使用できる優れものです!」


「おっ、これいいね。これちょうだい」


「ありがとうございます!」


 あれ? 普通に店員している?


 魔道具店の店員と言えば私はドジっ子のイメージがあったのだが、そんなことは無いようで普通に仕事をしている。


「あ、お客さんですか?」


「い、いや……働きに来ました!」


「ひ、ひぁ!? は、働き手さん!? わ、分かりました……ちょっと待っててください!」


 私は店主と思われる女性に事情を説明して、壁にもたれかかった。


「す、すみませーん。取り乱しちゃって。えーっと、魔法札(スペルカード)の購入ですね! ひゃんっ!」


 ビリッ。


「あ、」

「あ、」

「はぅ…」


 あ、ダメだこの子。


 店員は力の入れ方を間違えて魔法札を破ってしまった。在庫はゼロ。つまり商品にはならない。


「す、すみましぇん! はわわわ、ど、どうしましょう……」


「もういいです。他のお店探すんで」


 そう言って客は店の外へ出て行ってしまった。


「うわぁぁぁん!! またやっちゃったよぉ !うぅ、ぁぅ」


 あ、ダメだこの子。やっぱりドジっ子だぁぁぁ!!!


 茶髪のアホ毛店主は、破った魔法札を前に泣き崩れてしまった。





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