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第40頁 白氷熊、襲来

静紅達がキノコタンの森に到着した頃、森の中ではもうひとつの戦いが起きていて……。


記念すべき40頁目ですね!






「「キノコタン流狙撃術、勇気の一矢!」」


 ルイスとファールが弓の弦を引きながらそう唱えると、先程まで一般的な矢だった物が光の筋に変化した。


 光のそれは放射状に明るく発光し、強風を生み出す。


 そして引き絞られた弦が解放され、瞬時に光の筋は前方に発射される。


 僅か数メートルの距離を二本の光が閃く。


 曇り空での暗闇を切り裂き。空を破り。そして。


 ばんっ!


 二つの光の筋は、魔物の胴を貫通して地面に刺さるとすぐに消えてしまった。


 一本は胸の辺りを、もう一本は心臓の位置を正確に捉えての狙撃。


 それだけでもかなりの腕前を持っていると感じさせられる。


「ふぃー、危なかった……」


「何が危なかった、だよ! 死ぬとこだったじゃんか! あんま無理してんじゃねぇよマジで」


 キツめのツッコミを蜜柑に入れられた結芽子は、ささっと立ち上がって、頭上……ルイス達の方を見た。


「ルイスちゃんとファールちゃんは弓ほんま強いなぁ! 私感動したわ!」


「こう見えて王都近衛騎士団の一員だったことがあったからな」


「私とファールが一人だった時ですよね」


「え? 違うだろ。私がお前と同じだった時だ! 私が本体でお前が分裂体だ」


「何言ってるんですか。私が本体です」


 ルイスとファールの言い合いを無視して、結芽子と蜜柑は穴に落ちた魔物をじっと見つめていた。


 必死になって姿をしっかりと見れていなかったので、死んだことを確認できた今、この魔物には一切の危険はない。


 チクチクする硬めの毛を触りながら蜜柑は結芽子に疑問を飛ばす。


「なあ結芽子。こんなやつ日本に居たか?」


「んー、いや、おらんかった。でもおとぎ話の中とかでよく見る感じよな」


 雪のような白い毛並みに果実のように真っ赤な鋭眼、特徴的な飛び出た口。


 見るからに鋭利な爪が生えた四本の手足、全長5メートルはありそうな程の巨体からは本能的な恐怖を与えられる。


 そしてその背中から生えた氷の氷柱は宝石のようだ。


「シロクマに鋭い爪が生えて、背中から太い氷柱が付いたって感じだな」


「でもなんでこんな生き物が……だって見るからに雪国っぽいやん。こんな暖かい森に住んどるとは思えへんわ」


 そう、この見るからに氷属性の生物がこんな森に現れること自体異例なのだ。


 気候は春のように温かく、雪どころか雨が降ることも珍しい。


 結芽子は魔物に近づいていき、「とりあえず」と続けて手をかざした。


「まあ回収しとこ。容量はまだ余裕あるし、もしかしたらレアモンスター的なやつかもしれんからな」


「結芽子お前……RPGでレベルアップ作業を楽しむ系の人だろ」


 蜜柑のそんな言葉を気にせずに、目の前のレアな素材に意識を向けた。


 手をかざして能力を使用すれば、煙と音と同時に対象は結芽子の中に収納される。


 今回も同様に少し触れて能力を使用し、その巨体は煙に包まれた後、何事も無かったかのように消えた。


 この能力は、まだ収納したことの無いものが収納されると、結芽子の視界に小さくその名前が表示される。


 さらに結芽子が意識をすれば現在収納している物が一覧となって表示される優れものだ。


「えっとー? 収納物名は[アイシクルベアの亡骸]。氷柱の熊って感じやな」


 表示された魔物の名前をさらっと読んでひとつ深呼吸。


「さて、熊も撤去したことやし、家に帰って……」


 どぉぉん!!


 地面が割れるような光と音と振動が蜜柑達を襲う。


 途端、燃えるような熱風が届いた。


「な、なな……何じゃありやぁぁ!?!?」


 蜜柑の背後50mの所に突如現れた火柱が熱さの原因と分かった途端、ルイスとファールも喧嘩を止めた。


「あれは……ルカとルナの魔法か?」


「恐らくそうでしょうね。あれ程の魔法を使えるなんて、あの二人しか居ません」


「ルカと……ルナ? 誰だそれ」


 結芽子と蜜柑にはルカとルナという人物が誰かは解らない。


「とりあえず、あの二人に合流出来たら安全だ。行くぞみんな!」


「あなたが仕切らないでください! 行きますよ、キノコタン達!」


 仲がいいのか悪いのか、よく分からないルイスとファール。


 強い二人が信頼するルカとルナならこの異変も解決できるかもしれない。


 そんな希望を抱きながら、結芽子と蜜柑は再び森の中を進んだ。



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