第39-1頁 遠方響く魔物の咆哮
「……作戦は大丈夫だよな?」
「うん、バッチリやで」
肌寒い森の中、小さな草茂みの中で小声で話す女性が二人。
一人は細剣を持っており、もう一人は何も装備していない。
二人はキノコの紋章が刻まれた細剣が奏でる鐘のような金属音も耳に入らないほど集中し、冷や汗が頬を滴る。
『ぐらぁぁぉぉ!!』
「くそっ、バレた!」
獲物に気付かれた二人は、慌てて草むらから逃げ出した。
逃げる二人に追う獲物。
これではどちらが『獲物』か分からない。
「蜜柑ちゃん、先行ってて!」
茶髪の女性は逃げる脚を止めて、追ってくる獣に手のひらを向けた。
「分かった。覚えてるか? ポイントまで誘い込んだら──」
「分かってるって! 誘い込んだら集中砲火、やろ?」
そこには、両手を前に出して能力を発動させようとしている女性……結芽子の姿があった。
『ぐごぁー!!』
目の前の四足歩行のソレがこちらへ突進してくる姿を間近で見た結芽子は、僅かに怯んだが、足に力を入れて踏みとどまる。
そして。
「行っけぇー!!」
・・・・・
──静紅ら到着前のキノコタン領地──
「ああー、寒っ! なあ結芽子ー、カイロ無いか?」
「そんなんこの世界にあるわけ無いやろ……にしても寒すぎっ」
昨日までは春のポカポカ陽気だったのにも関わらず、今朝は雪が降り積もり吐息が凍る。
空は薄暗く曇り、どこか気味悪い感じが漂っている。
「なあルイス、この寒さちょっとおかしくないか……?」
家の外に出て周りの様子を見ていた蜜柑は、キノコタン達と挨拶をしていたルイスにこの異変について尋ねた。
「はい、こんなことなかなか無いですよ……気象班のキノコタン達も騒がしくしています」
気象班とは、主に天気や災害が発生した時に動くグループのようなもので、この森での気象情報はこの班から発信される。
これまたキノコタン文明の蜜柑革命の一つで、今までまとまりのなかったキノコタン達をグループを作って、[農業班][生活班][物資班][建設班][気象班][防衛班]など、いくつかの班で役割を持つ事になった。
「だよなあ、こんなことあるものなのか? ところで、ファールは?」
「あの人なら、弓の特訓をしてますよ。最近練習してなかったんですが、嫌な予感がするとか何とかって」
「へぇ〜、ファールちゃんって弓使えるんや?」
少なくとも、ファールが弓を使っている所は見たことない。
結芽子が首を傾げるのをみて、ルイスは笑顔で言った。
「ええ、私とあの人は王都でも弓の腕なら五本の指に入りますよ。……ファールの方が弓の扱いが上手いのは事実です」
「そんな強いん!? うっひゃー、さすが女王様やな!」
「それはそれとして、ファールが言ってる嫌な予感ってどういう事だ? ルイスが二日前に送った救援要請と言い、嫌な予感といい、この寒さと言い、絶対なんかおかしいだろ」
r……」
『ぐらぁー!』
蜜柑の言葉の途中、この森のどこかで聞いたことの無い咆哮が響いた。
「この鳴き声って……」
「はい、魔物です! しかも獣類ですか……厄介なことになりそうです。防衛班のキノコタン達!」
ルイスが鼻を鳴らしていることから、臭いで獣類だと分かったのだろう。
大声でルイスに呼ばれた防衛班のキノコタンは大急ぎでルイスの前に集合した。
横四列の見事な隊列に少々驚きながらも、蜜柑と結芽子は自然と黙る。
「いいですか、武器を持って西門に集合してください。ファールも西側に居ると思うのでそこで合流しましょう」
「「ぽぽ!」」
指示を出されたキノコタン達は、一目散に武器庫へ走って行った。
「さて、私達も西門へ行きましょう。先にファールと合流しておかないと」
「お、おう……なんか、さすが元戦争国の女王って感じだな」
「それな、行動がめちゃ早くて感激やわあ」
ルイスの後に続いて、蜜柑と結芽子は小走りでキノコタン領地の西側…西門へ向かった。
こーんーばーんーわー!!! お久しぶりです! 秋風 紅葉です!
いやぁ、学校の期末テストが無事終わり (色んな意味でも終わり) ました!
テスト前数日間は勉強に集中する為、小説が全く書けず、自分でも萎えてましたが、本日期末テストが終わったので家に帰った途端、[ご注文はうさぎですか?]を流しながら小説を書き始めました!チノちゃん可愛い。
さてさて、6日ぶりの更新になります[第39頁]。まさかの蜜柑と結芽子がメインでした!
ルナとルカの安否はよ!! って言いたいところですがここは長い目でお付き合いください。
私は伏線を張ることや、テンポの良い戦闘、高度な頭脳戦、計画的な作戦処理などなど、特別凄い技術を持っている訳では無いので伝わりにくい部分があると思いますが、どうにか察したり理解をしていただけると幸いです!
それでは次回のあとがきで会いましょう!
あ、感想、ブックマークも気軽にどーぞー!




