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第1289頁 名誉錬金術士として


 朝、洞窟の中で目を覚ました私はむくりと起き上がり、辺りを見渡した。


「いつの間にか寝ちゃってた……レイギルモア?」


「ん……」


 そこにいたのは文字通り泥のように眠るレイギルモアだった。


 レイギルモアは土の槍、つまりその依代のレイギルモアも土属性の精霊の可能性が高い。


 下半身が溶けてしまったレイギルモアを集めて、彼女を起こす。


 体感だがおそらくもう昼前だ。


「私、お昼ご飯とってくるね。ちゃんと起きててね」


「ん」


 本当に大丈夫か、などと思いながら私は一応寝癖を直したりした後、森へ出て果実を集め始めた。


 昨日の夕飯もきのみだったが、これがなかなか美味しいのだ。


 百年前の植物はあまり知らないが、毒がないなら大丈夫だろう。


「はあ、クラウソラスが居てくれたらなあ……」


 彼が居てくれたら、彼にお願いして周辺の果物を全部集めてもらえるのに。


 今まで怠けていた代償かな。


「……っ、誰か来る」


 見つかっても身だしなみはちゃんとしているし問題ないのだが、陰キャの私は出来るだけ人に会いたくない。


 しかも今は一人だし、鉢合わせた場合ほぼ確実に私が話さないといけないからだ。


 私は近くの茂みに姿を隠し、気配を消した。


「確かこの辺りだろう。兵士の情報によれば奴は相当な力を持った土の精霊、敵対心は強いが絆せば強力な兵器になる」


 何かの資料を見ながらそう言ったのは、見上げるほど背の高い筋肉質な男性だ。


 おまけに大きな鹿の角が生えている。


「ちなみにこの兵器は誰が持つの」


「さあな。……確か槍が残ってたはずだから、英雄フロイスが持つんじゃないか?」


「最近有名な彼。ほぼ一人で龍を殺し、この国の英雄となった男性。今はアンダルソンたちと一緒に旅をしているみたいだけど」


 凛とした態度で淡々と話すそのエルフの女性は、そのまま杖を掲げると上空に何かの魔法を放った。


 花火のように魔法の弾は砕け、その破片が円状に広がって森へ落ちる。


 結界魔法……? それとも索敵魔法?


 どっちにしろ、あんな魔法は見たことがない。


「テイナ、あれはどうする?」


「どうって?」


「邪魔にならないか?」


「どうでもいい、邪魔にすらならない意気地なしに見える。行きましょう、作戦は手際よくやるのが大切」


 二人が話していたあれ、というのが気になるが、連中はゾロゾロと騎士たちを連れて洞窟の方へと進んで行った。


「まずい……どうしよう、このままじゃレイギルモアと仲良くなる前に兵器にされちゃう」


 とにかく考えている暇はない、昨日彼女が教えてくれた抜け道を使って、連中より先に洞窟へ行かないと。


「レイギルモアと一緒に逃げて、それから……くそ、がんばれエルメス! あなたのその無駄に賢い頭は何のためにあるの……!!」


 これでも学園ではトップの成績だったんだ、自信を持て!



 実は錬金術士としてめちゃくちゃ優秀なエルメスさん。

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