第1287頁 家族は友達にカウントしません
戦場を避けて静かなところ……具体的にはとある森の小さな洞窟へやってきた私とレイギルモア。
どうやらここはレイギルモアの隠れ家らしく、今まで人間に見つかったことは無いらしい。
自然に紛れるためのカモフラージュを外し、私を中へ通す。
「えへへ……私が初めての人間ってことですね。出会って間も無いのにお家に入れてくれるなんて、思ったより早く仲良くなれそう……」
「勘違いしないで。ここは別荘みたいなもの。人間を家にあげるなんて、殺して欲しいと言っているようなもの」
「わ、私はそんなつもりじゃ……」
「知ってる。だからここに呼んだ」
レイギルモアは私を弄ぶようにそう言って、笑った。
洞窟の中は住処とは思えないほど何も無く、あるものと言えば枯れ草の山だった。
「ふかふかだあ!」
「いきなり寝床……あなた友達居ないでしょ」
「げっ……い、いいもん、家族は居るもん」
「そう」
そういう彼女はどこか寂しそうな顔を浮かべていた。
「あなたは友達居ないの?」
「…………やっぱりあなた友達居ないんだね。精霊は一人でも生きていける、必要ないものは手に入れない主義」
「じゃあ家族は?」
「精霊に家族は居ない。強いて言うなら、私は龍ユグドラシルの一部を材料に作られたから、ユグドラシルと近い関係になる」
レイギルモアが世界樹ユグドラシルの加護を受けている、というのはそういう事だったのか。
「一人なの?」
「悪い?」
「ううん、悪くないよ。私も一人だった、家族は居たけど最低で、世界に私の味方なんて居ないんだと思ってた。でも違ったんだ」
「違わない、この世界に本当の意味での味方なんて一人も居ないから」
同じ瞳をしていた。
あの頃の、一人で苦しんでいた時の私と同じ瞳をしていたのだ。
「じゃ、じゃあ……私があなたの味方になってあげる……から! だから仲良くしてください……ッ!」
声が裏返りながら力強く私は言って、ちらっと彼女の顔を見る。
すると彼女は若干顔を赤らめて、しばらく目を泳がせてからこくりと頷いた。
「必死になって……恥ずかしい」
「うぐっ……それはそう、だけど……! でも仲良くしたいのは本当だから!」
「あなたが信用に値するかどうか見極めるためにも、少し話すくらいなら……」
「本当に!? やったあ……!」
かくして、私とレイギルモアは仮の友人となり、行動を共に行動することになった。
必ず仲良くなって、きっと聖具の力を引き出して見せる!
エルメスさん、友達という存在を知らな過ぎて陰キャの[面倒くさいやつ]が滲み出てますよ。




