第1271頁 回戦、祖母との戦い!
「すみません、もう一度説明してください」
「だーかーら! この子も風の剣を持ってて、どっちが強いか確かめるために決闘するの!」
翌朝、予定通り剣士アンダルソンと再会し、決闘することになったのだが。
「分からずや! だからどうして彼女も風の剣を持っているのかが分からないんです!」
「それが分からないなら、そっちの方が分からずやじゃん!」
そのはずが、どうして二人の言い合いを見ることになってしまったのだろうか。
事の発端はつい数分前、私とアンダルソンが先に出会い、それからカルロッテを呼んだのだが彼の第一声が「アンダルソン、いつの間に分身の魔法を覚えたのですか」だった。
そんなに似ているだろうか……?
「まるで母と娘みたい」
「ブフッ……!! けほ、こほ……違いますから! 私は通りすがりのただの騎士です」
「そうだよ、似てないもんねー。それにこの子すっごい強そうだし、もし私たちと渡り合える強さなら、例のあいつだって……」
アンダルソンのその言葉に、カルロッテはしばらく考えた後、渋々と頷いてくれた。
「分かりました。危険だと感じた場合は止めますからね、こんな模擬戦で怪我していたら、体力が勿体無いです」
アンダルソンとは違って、カルロッテはかなり慎重派だ。
支援系の魔法使いとなれば、視野が広くなければいけないので、やはり普段から慎重的になるのだろう。
とりあえずカルロッテからの許可も出たということで、森の中の少し開けた場所に移動。
「さあカリン! 私と戦う準備はできたかな」
祖母は伸びをしながら、適度にリラックスした様子でそう言った。
「風とは形を持たず、柔軟でありながら時に牙のように鋭く吹き荒ぶもの。この剣もまた、風のように舞うのです! 剣舞・シルフィード・アレイ!!」
「どわっ、まだ開始の合図してない!!」
「実戦で合図をする人がどこにいますか!」
「騎士って何だっけ!? 正々堂々やりなよ!」
とは言いつつ、しっかりと受け流して反撃まで仕掛けてくるアンダルソン。
しかし負けてはいられない!
「剣舞・シルフィード・テンペストッ!!」
「思ってたけどさ! 技名とかかっこいい! 憧れる!」
最大威力の大技を、話しながら一刀両断して距離を詰めてくる。
「じゃあ私も! 剣舞・シルフィード・スピア!」
彼女の攻撃を咄嗟に避け、すぐに反撃を準備する。
あの技は前に受けた、逃げる時に木を倒した技だ。
「そこッ!」
「回避!」
風は攻防回避様々な用途に使える、非常に汎用性の高い概念だ。
だが私はそれを使いこなせているかと言われると、怪しいところがある。
「貴女との戦い、吸収できるものが多くて助かります」
「随分余裕そうだね、そらっ! まだまだ行くよ!」
戦いとは命の奪い合い。
楽しいなんて思うはずがなかったのに。
祖母との戦いは互いが互いの動きを見切りあい、それがとても楽しいと思ってしまったのだ。




