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第1223頁 世界樹の瘴気と情報について


 次の議題はフィンブル王国に生えていた[世界樹ユグドラシル]の転生について。


 一言で世界樹の転生といっても、起きたことが沢山ある。


「オラシオン教団という連中が、世界樹ユグドラシルに[瘴気]を放ったんですの。世界樹の根は周辺国にも広く張り巡らされていますから、瘴気が周囲に汚染、感染していって本当に大変でしたわ……」


 頭を抱えながらパフィはつらつらと語る。


 瘴気。


 天才猫耳ロリババアこと知見の螺旋アイリロの発見により、瘴気は極々小さな生物であることが分かった。


 体内に魔力を多く含む瘴気が、世界樹を内側から蝕んだため世界樹は弱体化し、そして[転生]することになった。


「あの一件以降、世界樹ユグドラシルは[在る]存在から[居る]存在へ切り替わりましたの。世界樹ユグドラシルは子どもの姿となり、今の人の世を楽しんでいますわ」


「アイヤー、世界樹が死にそうになったときはどうなることかと思ったネ。また日頃の感謝を込めてユグドラシル様にご飯を持っていかないと」


 キョンシー娘のリンリンが治めるウーチャオはフィンブル王国と比較的近く、世界樹の恩恵を強く受けている国のひとつだ。


「世界樹の中に眠っていたんでしょう? 例の[百年前の英雄]が。彼女はどうなったの」


「アビゲイルちゃんの言う通りにゃ!」

 

「五界奏団の一人として世界を救った英雄シグレ様は、勝利したものの致命傷を負い、世界樹の中で治療を受けていましたの。それから百年後、目覚めたシグレ様は現在シズク様と共に行動していますわ」


 パフィの解説に付け加えるようにシノノメが口を開く。


「ただ百年前の治療の代償として、当時の記憶の大半を失ってしまっている。同じ五界奏団の団員の足跡を辿ることで、記憶が呼び覚まされるんじゃないかと言われているな」


「考えたくは無いけれど[二度目の厄災]が起きたときは当時の知恵を借りるためにも、シグレを頼ることになりそうね」


「第二次厄龍戦争……か」


 会議室に重い空気が漂う。


 あまり考えたくは無いが、考えざるを得ないほどその足跡は確かに大きくなっている。


 重い静寂の中話を切り出したのは、良い意味で空気を読まないメタリカだった。


 彼女はちょこんと椅子に座り、冊子にペンで落書きをしながら話す。


 まあ落書きといっても、この場にいる全員が理解できないほど複雑で高度な機械の設計図なのだが。


「戦場は陸でも海でも空でもない。勝利の鍵を握るのは[情報]だ。タイミングを合わせて攻撃、加勢、応援、撤退……情報を制する者は戦いを制する。だからこれを持ってきた」


 メタリカが机に置いたのは、十個以上の長方形だ。


 ソレにはボタンと複数の穴、それと天に向かう長いアンテナがついている。


「メタリカ、これはもしや……」


 この場にいる王の中で、紗友里だけが直ぐにソレを理解できた。


「強化版国際電話。部屋にある固定電話も当時は素晴らしい発明だったが時間のズレは大きく、音質も最悪、おまけに持ち運びが不可能だ。それらの問題を全て解決したものがコレ。通称トランシーバー、この会議に出席していない王にも後日配布する予定だ」


「さっすが王様女子会の技術担当だにゃ! メタリカちゃんは賢いにゃあ」


 机に置かれたトランシーバー達を、目を輝かせてマカリナは見る。


 自分用のトランシーバーを一つ手に取ると、横からシノノメが言ってきた。


「とりあえずお前は付き添い人のアーミラに渡しておけクソ猫。握っただけで潰しかねん」

 

「はあ!? 失礼なやつにゃね……」


「は? 真実を言ったまでだが」


「は?」


 睨み合うシノノメとマカリナ。


 この光景ももう何度目か、もはや国際会議の風物詩とも言える。


 彼女らと長い付き合いのリンリンやメタリカは何も気にせず座っているが、日が浅いスズメは頭を抱えてため息をついた。


「はああ……また始まった……ちょっと先輩王様! ちゃんとやりなさいよ、話が進まないじゃない! パフィも何とか言って!」


「はあ、はあ……こ、これがあれば毎晩ベッドでサユリ様と電話が……!」


「パフィッ!! ああもう、めちゃくちゃよ……リンリンだっけ? あんたはマトモそうだから安心できるわ」


「なっはは……」


 縋るようにリンリンの隣にやってきたスズメ。


 リンリンは苦笑いしながら、スズメの頭をヨシヨシと撫でる。


「ここにいると多少頭のおかしな人もマトモに見えるネー。じゃあマトモな王様だけで会議進めよっか」


 国際会議ユニゾンは続く。


 




 頼ってにゃ! と言っていたマカリナが次の話では大暴れ……この人よく王様やれていますね (真顔)

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