第28-2頁 懐かしの味
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「おおー、結構本格的じゃん! ありがとうねルカちゃん! ちなみに裸エプロンって興味ある?」
「へんたい。シズクさん、ルカをいやらしい目で見るの。これは紗友里様とルナに相談する方がいいなの」
私は小さなため息をつき、うなだれるように言った。
「妹が妹なら姉も姉だな……双子だし、考えることは似てるわ。いやまあセクハラしてるのは私の方だけどさ」
テント内でルナに言われた引かれ方と同じ言い分だったことに少々の苦笑いと驚きを覚えながら、ルカに渡された器を受け取った。
仮キャンプ設営地の中心にあるのがこの出張食堂。
そこは、大きな長机にいくつかの椅子が出された一種の[青空レストラン]とも言える。
この地は晴れの日が多いのか今日も快晴だ。
夜とは打って変わって気温は日本の春ぐらいのポカポカ陽気。
そしてルカから受け取った器に入った白い液体は、前世によく飲んだシチューを思わせる温かい粘り気のあるスープ状の物体だ。
「んー! 美味しい!」
「ほんと? 美味しい?」
ルカはこちらに近づいてきて、私の座っている隣に立った。
なんだかんだ言って懐いてる……のか?
「うん、すごく美味しいよ!」
「喜んでもらって何よりなの! 今日はもうすこしで出発するから急いで食べてね」
そう言われ私は急いで熱いシチューを口の中に詰め込んだ。
んー! やっぱり上手い! 一緒に出された水で喉に詰まりかけたシチューを喉の奥に流し込み、一服。
それから紗友理に一つ質問した。
「でも、あと三十分だったらテントの片付けとか……」
「その心配はない」
その言葉を発したのはルナだった。
ってことはもう片付け終わったのか。早いな!
「あ、ルナ片付けありがとう。六花はどうしてた?」
「リッカさんは魔法の使いすぎで体中が悲鳴を上げている。……だから治癒魔法で少しはマシにしてあげた」
「そっか、何から何まで助かるよ」
「そんなことより……姉さん、リッカさんの朝食を貰いたい」
「あ、はいなの! リッカさんには元気をつけて欲しいから大盛りの大にしてあげるの!」
大盛りの大というパワーワード来たー!
そ、それじゃ、小盛の小もあるの?
…じゃなくて、そんなに六花は食べられないだろ。
「姉さん……リッカさんはあんな怪我でも病人。食料をあげるのも限度がある」
「むぅ……」
さすがルナ! 姉さんよりも賢いな。
そう言われたルカは渋々シチューを鍋の中に戻し、病人に出すのに相応しい量に入れ直して器をルナに渡した。
「ありがとう、姉さん」
あー、可愛い。
器を受け取ったルナはとことこと六花の元に戻っていった。
本当に可愛い、一人くらい養子に貰ってもバレないんじゃないか?
いや、いっそのこと二人とも誘拐するか。




