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第1207頁 力とは、強さとは


─────爆発による閃光と衝撃を、力強い泡沫が包み込み、弾け飛ぶ。


 能力[泡沫]は幼い頃の彼女の努力により、爆発などの衝撃を包み込んで緩和することが可能になった。


 魔法などの衝撃も吸収することができるので、かなり強力な防御手段と言える。


 しかし泡沫は水の泡、すぐに破裂して消えてしまうためタイミングはかなりシビアである。


 それをカバーするのが、幼い頃から培ってきた彼女の戦闘センスだ。


「海神刀・水鯨!」


 宙を飛ぶキジの面をつけた女性ツバキへ向けて、[大口を開いた鯨]を模した水塊を放つ。


 だがツバキはそれに対応し、水塊へ向けて一度に六個以上のクナイを投げつけ、その爆発で相殺させた。


 反撃としてシノノメとスイレンの周囲に大量のクナイを投げ、二人へ確実にダメージを与えるツバキ。


「何本クナイを持ってるんだ!? これじゃあ埒が開かないぞ」


「通りでササヤマで大量の竹を伐採していた訳です。はっきり言います、彼女は強敵です。戦闘経験の浅い武士では歯も立たず一瞬で殺されるでしょう」


 スイレンはザッと足を引き摺るように大股を開き、そして低い姿勢をとる。


「武士とは何か、強さとは何か、力とは何か。道場で嫌というほど聞かされてきました。その度に私は思い、今も思い続けています─────」


 片手には[翡翠刀]片手には[彗星刀]。


 力強く、しかし凛と咲く華のように握りしめられた二刀が輝きを放ち、夢を現へ投影する。


「自己中、我儘と言われるかもしれません。ですが私の原点はいつもそこにあるんです」


 勢いよく刀を鞘へ納め、彼女は奥義の幻想蓮華を発動させた。


「力とは、相手に[勝つ]ためにあるものです、磨き上げた力の結晶をその身に受けなさい!! 幻想蓮華ッ!」


 鞘へ納めた刹那、彼女が夢で斬ったものが現へと投影され、現実になる。


 ツバキの全身、特に翼を中心に斬ったスイレンは息を切らしながら、その場に腰を下ろす。


「あまり無理をするな、あとは私がやる。警戒だけして休んでおけ」


 休むスイレンの頭を撫でながら、シノノメは地下空間の天井付近から墜落したツバキの方へと歩んでいく。


「や、はり……厄介です。あれがある以上……我々は……」


「満身創痍、といったところか。無駄な殺生をするつもりはない。貴様の身柄は専門の組織へ引き渡す、良いな?」


「私は……私は、まだ……」


「おいお前、今何噛んだ! くそったれが……!」


 事前に口に含んでいたのか、シノノメが至近距離まで近づいたのを見計らい、ツバキは錠剤を噛み砕いた。


『キュオオンッ……!』


 天井を仰ぐように全長五メートルを超える翼を広げ、咆哮する怪鳥。

 

 そこに人間の面影はなく、ツバキは完全に化け物のように大きな鳥へと変身してしまった。


 暴れる怪鳥の鍵爪により、ただでさえ負傷している腕を傷つけられ、シノノメは悶絶の声を上げる。


 ついにはその痛みによって腕が麻痺し、脱力したことで海神刀を床へ落としてしまう。


「くっ……ああッ!!」


 せめて防御だけでも、と大量の泡沫を出現させたその時だった。


「うっらあああッ!!」


 突如、壁が蹴り破られ、そこから目に映らない速度で赤い何かが飛び出してくる。


 それが人間だと理解するには、数秒の時間が必要だった。


「そこだああああッ!!」


 その人物は怪鳥を視界に捉えると足のエンジンを器用に扱い、空中で方向転換をした後に、脳天へかかと落としを食らわせた。


 ガゴン! という鈍い音と共に怪鳥は一撃で気絶し、その場に倒れて沈黙する。


「貴様は……」


 シノノメの前に現れたのは、足にエンジンが取り付けられた見覚えのある人物だった。




 シノノメに勝ちたい、というスイレンの想いは十年以上経過した今でも変わっていません。


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