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第1200頁 自己満足の弔い


 リーダーの男を倒せば、あとは流れ作業のように部下を倒して拘束するだけだ。


 拘束した身柄は専用の警察的な機関に任せるとして、シノノメはスイレンから治療を受けていた。


 利き手の左腕を骨折したシノノメ。


 出来ればもう戦わず、治療に専念した方が良いのだがひとつの基地が壊滅してから時間を置けば、他のふたつの基地が何をするか分からない。


 叩くなら今しかないのだ。


「腕……治るかな」


「昨今の医療技術は素晴らしいですよ。医療の賢者ヘルスア様以降、医学は目まぐるしい進歩を遂げています。たとえ折れた腕だって治るはずです」


「いってて、でも動かしたら痛むんだよ……」


「だからせめて、痛みを軽減するための応急処置は施しました。出来ればさっきと同じように反対の手で刀を握ってください」


 シノノメの腕を挟むように木の板を置き、それを包帯やロープでぐるぐる巻きにする応急処置だが、戦えるならこれで良い。


「分かったよスイレン、分かったから口元に団子を押し付けるのはやめてくれ……」


「治療用の団子です。擦り傷程度なら治ります」


 そう言って団子を押し付け続けるスイレンの頭を撫で、シノノメは渋々団子を食べる。


「君は本当に団子が好きだね……」


「誰かさんの影響です」


「誰かさんって?」


 本当に分かっていない、もしくは純粋な疑問で聞き返すシノノメ。


 それを見たスイレンは頬を膨らませて、そこから立ち去ってしまう。


「……はあ、もう良いです」


「ああっ! 待ってくれよ、怪我人を置いていくのかー!?」


「足は問題なく動くはずです、早く行きますよ」


 一体何に怒っているのか見当もつかないまま、シノノメは立ち上がりスイレンの後ろをついて行った。


「…………」


 村を出る最後、シノノメは振り返って廃れた村の風景を目に焼きつける。


 当時のシノノメは若かったとはいえ、力はあった。


 救えたはずの命だってあっただろう。


「なあスイレン、この村を襲ったのは……その[エクス・マキナ]とかいう化け物だったな」


「ええ、巨大な粘液の存在です」


「いつからカーソルノイツが所有しているかは知らないが、奴らを全員屠ればこの村の人間は救われるだろうか」


 新緑の匂いを運ぶ風が吹いてきて、二人の髪を優しく揺らす。


「……死人に口なし、です。死者との会話が不可能な限り、救われたか否かはシノノメ様の自己満足でしかありません」


「……」


「でも……それでシノノメ様、そして私の気持ちが少しでも晴れるなら、全力で戦います」


 覚悟のこもった瞳で見つめてくるスイレンに、シノノメは微笑んだ。


 その言葉に返答することなく、彼女は村を出て、次の基地がある場所へ向かうのであった。


 うおおお、1200頁突破です! 600頁の二倍ですし、300頁の四倍ですし、1頁の千二百倍ですね!

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