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第1199頁 飛翔せし水塊


「スイレン、手を貸してくれ!」


 シノノメがそう叫んで彼女を呼んですぐのことだった。


 理性を失った犬の獣に変身した男は、その大きな手でシノノメを握りしめ、天井を突き破るように飛び上がる。


 天井に押し当てられ、後頭部に激痛が走るシノノメは小さな悲鳴を漏らしながら、意識をなんとか保つ。


 四、五回の後頭部への衝撃の後、シノノメは村を見下ろす形で上空にいた。


「離せ、このッ……! 動物に懐かれるのはあまり好きじゃないんだ」


 頭から血を流しながら、刀の柄で犬の二の腕を殴るシノノメ。


 この高さから落ちれば流石のシノノメでも致命傷だ、早く拘束から逃れて着地の態勢を取らないと。


 鋭利な爪が彼女の体を締め付け、ギギギと妙な音が鳴る。


「賭けるしかないか……」


 シノノメは刀を隠すように自身の背後へ持っていき、剣身を水塊に変えて地上へ降ろす。


 そこには破壊された天井から空を見上げるスイレンがおり、彼女はすぐにシノノメの意図を理解し、その水塊へ身体を溶け込ませた。


 二人の息が合っていないとできない技だが、成功すれば相手の虚をつける秘策だ。


 能力を使用して、身体を水に変えたスイレンが溶け込んだのを確認したシノノメは、水塊を勢いよく引き上げる。


 時速六十キロを超える速度で飛び上がる中、犬とぶつかる直前にスイレンは能力を解除し、水塊から姿を表す。


「シノノメ様から離れなさい!」


 彼女は技を使わず、シンプルな一太刀で犬の手首を切り落とし、シノノメの拘束を解く。


 待ってましたと言わんばかりに、拘束から逃れた彼女は海神刀を解放し、頭上にて高く構える。


「空なら周囲の被害を考える必要もない! 全力で行かせてもらう!」


 彼女は片腕で刀を握りしめ、笑いながら刀を振り下ろす。


「海神刀・滝壺ッ!!」


 刀が数百リットルを超える大波に変化し、怒涛の勢いで犬へ襲いかかる。


 水の壁に殴られた犬は地面へ叩き落とされ、そのまま気を失った。


 滝を地上に落とす前に水を刀へ戻し、鞘へ収めたシノノメは流れるように自身のスイレンの予想落下地点に泡を大量に出現させる。


 これなら落下の衝撃を少しでも緩和できる。


 泡に落下を任せる中、シノノメは犬について考えていた。


「口調、服装的に奴がこの基地のリーダーだったのだろうが、相当な強さだった。ただの人間があれだけの力を得られるとは……例の薬も侮れない」


 あの薬を摂取するだけで、個体差はあれど強力な化け物へと変身できるのなら、このカーソルノイツという集団は相当な戦力を所有していることになる。


 今後のためにも、彼らはここで殲滅する必要がありそうだ。


 そんなことを考えながら、シノノメは地上へ落ちていくのであった。



・・・・・



「お、おい……今すっごい揺れたぞ!」


「見てなかったの、空。泡沫姫が犬を叩き落とした揺れ」


「なんで犬を叩き落としただけでこんな地震が起きるんだ!? すげえな……」


 森の中で息を潜めているのは、ターボ&ダリアのコンビだ。


 カーソルノイツに所属しているであろう[猿の面の男]を探す二人は、自然とこの村へ辿り着いた。


 今から攻め込もうという時に、地下から巨大な犬が飛び出してきたので隠れていたのだ。


「言ってる場合……? 私たちが目を付けられたらひとたまりもない、逃げよう……」


「待って。アイツらもカーソルノイツを倒そうとしてるんなら、上手く利用出来ねえかな」


「……というと?」


「私の目的はあの男を殺すこと。カーソルノイツが残っていようがいまいが関係無い。私はただあの男を殺せたらそれで良いんだ」


「無駄な戦闘はあの二人に任せて、良いとこドリをするってこと……?」


「そういうこと!」


 ダリアは少し悩んだ後、それなら問題ないかと頷いた。


 念の為、バレないように髪型や顔を隠したターボ&ダリアは、二人の跡をつけていくのであった。


 次回で1200頁ですね!

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