第27-2頁 だから今日はおやすみ
「タイトル回収が気持ちいいですね!」
「あ、六花。どう? 気持ちの整理はついた?」
「はい、今はこんなことになってしまいましたが、それを受け入れるしかないと結論を出したので大丈夫です」
国道・南西道付近は夜はとても暗く、北西に位置する氷雪地帯からの風で、気温も少し下がる。
テント内の柱にかけられたランプの光が風で揺れる度に、テント内の灯りも揺れる。
静紅は少し深呼吸をして、口を開けた。
「六花、ちょっとこっち来て」
そう言いながら示した場所はベッドの上。
既に静紅はベッドに座っているので隣に座れという意味になのだろう。
六花は無言でベッドの方へ行き、静紅の隣に座った。
無言の空間、ベッドの上で静紅の隣に座っている事実を確認しようとするだけでドキドキしてどうにかしてしまいそうだ。
「ほら、もっと近づいて」
「は、はい……?」
この距離じゃだめなのか…? と思いながら、六花はゆっくりと静紅に近づく。
互いに自分の鼓動が彼女に聞こえていないかヒヤヒヤしながらも、黙り込む。
「ね、六花」
「はい、なんです……かっ!?」
温かい……そしてとても柔らかな唇が六花の唇に触れ、驚いて離れようとするが、その事を見越したように固定された静紅の腕がそれを許さない。
人工呼吸や食料の口移しでキスはしたことがあったが、それはあくまで必要だからした事で、自分たちから好意でするのはこれが初めてだ。
というか、もう何も考えられない……。
「静紅さん……その、ボク……」
「うん、分かってる。ほら、来ていいから」
そう言いながら静紅は自分の膝を軽く叩く。
「し、失礼します……」
そう言いながら頭を下ろしたのは静紅の膝の上。
この状況は、俗に言う膝枕というやつだ。
彼女の右手が優しく六花の頭を撫でる。その感覚だけで今すぐにでも深い眠りについてしまいそうな……。
鼓膜に届く瞬間、身震いしそうなほど優しい天使のような声で静紅は言う。
「異世界に来て、疲れてる?」
「企画の納品締切間際よりは10倍楽です……」
その言葉に静紅さんはクスッと笑い、続ける。
「それは言えてるわ」
それから少しの間静かな空間が続き。
「静紅さん…心配をかけてしまってすみません」
「うん、大丈夫。六花は昔から頑張り屋だからね、でも危ないことばかりするのは怖いよ」
「……分かってます」
「六花の体は六花だけの物じゃない。あなたが傷つけば私も悲しむんだからね。それぐらいはわかってて欲しいな」
「はい……」
「今日はたくさんのことがあったね、紗友理と出会って、ルカとルナと竜に乗って……本当に、たくさんの事だよ」
「そうですね、ボク疲れました」
「やっぱり疲れてるんじゃない。もう、色々あって大変だと思うけど、自分の意見が固まったのならそれは六花の成長だよ。大変で疲れたのなら、休めばいいの。柔らかいベッドの上でね、もちろん私でよければ膝を貸すよ」
そして、ボクの耳元に顔を近づけ、髪を持っていたクシでときながら……優しく囁いた。
だから、今日はおやすみ。




