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第1192頁 泡沫姫の矜恃


 蜃気楼の精霊ホウライと静紅一行が戦う数時間前のことだ。


 竜宮城の本丸にある泡沫の庭園にて、シノノメは今日も日課の精神統一を行なっていた。


 縁側にあぐらをかいて瞳を閉じる彼女の周囲に、自然といくつも水の泡が浮かんでくる。


─────剣士に大切なのは勝利の想像と、それに達するための実力だ。剣の腕も大切だが、勝った時の想像が出来ていないと掴める勝利も掴めない。


 亡き父の教えから、シノノメはこの精神統一を続けている。


 刀の素振り、室内で出来る筋トレ、そして精神統一。


 彼女の化け物じみた力は、こうした日々の研鑽の上に成り立っている。


 ローマは一日してならず、ではないが[人類最強]と謳われる彼女は、謳われるにふさわしいほどの努力を積み重ねてきたのだ。


 あとは才能とセンスでその努力を上手く利用する。


 亡き両親からは様々なことを教えられてきた。


 刀のことしか考えていないような脳筋だ、と他国の王から冗談半分で馬鹿にされるが、決して国民を蔑ろにしているわけではない。


 今回の食糧難に関してもそうだ。


 このことを見越して食料を竜宮城に貯蓄していたし、配給こそスイレンに任せているものの分配や「ここは子供が多いから栄養豊富な食料を送ろう」と考えているのはシノノメだ。


 ただ─────。


「シノノメ様、例の連中の居場所が特定できました。とある辺境の廃村です」


「うむ、ありがとうスイレン。では少し準備をするから、それまで待っていてくれ」


 瞑想を続ける中、井戸の中から飛び出してきたスイレンは、腰を折ってシノノメに話しながら地図を渡した。


 地図を受け取り、それを読みながら彼女は刀と服を取りに行く。


「……なあスイレン、この地図……」


「念入りに調査をしましたが、連中の基地は複数あるようです。数に間違いはありません」


「違う、そこじゃない。印がつけられた位置だ」


 着物に袖を通した後、彼女は壁にかけられた聖具・海神刀を腰に装備した。


「何の因果か、私たちに縁のある土地ではないか。君の故郷だった場所の位置もある」


「言われてみればそうですね……何か関連性が……」


「関連性云々は連中に聞こう。私も彼らに聞きたいことがいくつかある」


 最後に王の権威を示す小さな髪飾りをつけ、準備完了だ。


「ササヤマの竹に食糧難、次は何だろうか。龍や精霊の召喚じゃなければ良いのだが。では行こうか」


 向かうは地図に記された三つの地点。


 国の平和を脅かす余所者を、これ以上野放しにしておくわけにはいかない。


 シノノメは信用できる知り合いに竜宮城と城下町の治安維持を任せ、都の外へ出るのであった。


 彼女たちの戦いに待つものは絶望か希望か。


 奇妙な面をつけた集団は一体何を企んでいるのだろうか。


 シノノメは彼女の愛刀・海神刀の鞘をしっかりと握り、城下町の桜の木の下を歩いていく。


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