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第1175頁 山頂の大結晶


「そ、それで石板には何が書かれてたんだ……?」


 魔物の最後の一匹を切り捨て、イザヨイは石板の解読を終えた六花の方へ駆けていく。


「端的にいうと、戦闘記録ですね。それも長期にわたる記録です。最初の文章……つまり石板の上部に刻まれた文字が書かれたのが、今から百年前。最後の文章、下部に文字が刻まれたのは六十年前ですね」


 四十年という長い年月をかけて刻まれたその石板に、結芽子は思わず生唾を飲んだ。


「そんな重要そうな石板には何が書かれとったんや……?」


「蜃気楼の精霊との戦闘記録です。初期の頃はペルソナさんの言っていた通り、そこまで大した力を持った精霊ではなかったみたいですね。それが時間経過とともに力が増していき、六十年前の戦いでは甚大な被害を出しながらもなんとか撃退できたのだと……」


「その時の封印の結界がそろそろ壊れそうになってるから、今回で片をつけようってわけやな。これで終われば良いんやけど」


「蜃気楼の精霊は幻惑を見せ、真実を隠す。濃霧の奥から顔を覗かせるその朧月は、見る物全てを恐怖させる……なるほど幻惑ですか、[蜃気楼]の名を冠するに相応しい力を持っていますね」


 幻惑を見せ、真実を隠す。朧月……。


 蜃気楼の精霊が月の形をしているのはカグヤの水晶で見たが、少し不穏な文章だ。


「蜃気楼の精霊ホウライ……奴との戦いが無事に終わることを祈ろうぜ。さあ、向こうの山の奴らに遅れたらいけないし、さっさと大結晶を探そう」


「それもそうだね。……ただ気がかりなことが一つあって、フレデリカの能力があれば適時遠隔で情報共有が出来ると思うんだけど、あの子の声が聞こえてこないんだよ」


「そういえばそうですね。何かあればすぐに伝えるようにと登山前にボクから話していたのですが……」


 フレデリカ、ニンナ、フランがいる向こうの組に限って、大事には至っていないとは思うが、それでも心配だな。


 一抹の不安を抱えつつ、私たちは山頂の大結晶を探すため腰を上げて歩いて行った。


 意外と大結晶は大きく、祭壇のようなものが周りにあったのですぐに見つけられた。



・・・・・



「これで良し。ちゃんと光ってるだろ?」


「うん、バッチリ。じゃあこれでミッション達成だね。山を降りよう」


 大結晶に明かりを灯し、ほのかに結晶が輝く。


 地面の奥からガチャリと歯車が動くような音が聞こえたが、おそらく地上の祠の鍵が一つ開いた音だろう。


「下り坂やしなあ、上りよりも早く降りれるやろ」


 そんなことを話しながら、下山道に足をかけた私たち。


 ふと背後からの視線が気になり、山頂の方へ振り返る。


「……?」


 そこには数匹の猿がおり、奇妙な面持ちでこちらをじっと見つめていた。


 どことなく恐怖を覚えた私はすぐに猿から目を逸らし、少し早歩きになりながら下山していくのであった。


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