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第1172頁 名残の貴族

 翌日、午前十時頃。


 私たちは出発の最終準備を済ませ、ウォルロ・マリンの北部に位置する[カガミ山]へとやっていた。


 山頂付近は雲がかかっており、麓からは見えない。


 また山全体を濃い霧が覆っており、その全貌は遠くからでは観測出来そうにない。


 さて、祠の前で待機する組が荷物や兵器の運搬を行う間に、私たち登山組は山を登らねば。


 一組目は私、六花、結芽子、イザヨイ。


 二組目は蜜柑、フレデリカ、ニンナ、フランだ。


「ではお師匠様、お気をつけて!」


「そっちも気をつけてね! 蜜柑、あなた運動神経悪いんだから気をつけなよ」


「うるせっ、さっさと登るぞー!」


「ボクたちも行きましょうか。イザヨイさん、先頭をどうぞ」


「レディファーストって知ってるか?」


「いいからさっさと歩き、後ろが詰まっとるから」


「ひええ……」


 ガヤガヤと話しつつ、一組目と二組目は分かれて登山道の入り口を進んでいくのであった。



・・・・・



「イザヨイはあれだ、尻に敷かれるタイプだよ」


「おう最初から失礼だよお前」


 と言いつつ、私たち全員が「前へ行け」と言ったら前を歩いてくれる優しいイザヨイお兄さん。


 カガミ山の左を登る私たちは、早速険しい山道に汗を垂らしていた。


「たまには……こういうハイキングも大切よな……!」


「霧で囲われてるから周りの景色も見れないし、ジメジメしてて大変だけどね……」


 登山道に入ってから数分で息を切らした私たちを見て、イザヨイは鳩が豆鉄砲を喰らったような表情で言う。


「お前たち、いろんな国を救った英雄じゃないのか……?」


「それとこれとは別だよ、山登りが苦手な英雄がいたって良いでしょ?」


 イザヨイが前を歩く中、結芽子は雑談のように口を開いた。


「そういえばイザヨイ君ってカグヤちゃんとどういう関係なん?」


「ああ、ちゃんと話した事はなかったな、簡単にいえば俺の親戚だ。昔から姉みたいな存在で、子供の頃は世話してくれてたんだ。カグヤはササヤマという土地を守る使命を受けて管理をしている。それを俺が特訓がてらに手伝ってるってわけだ」


「そういえばササヤマの竹って特別なんだっけ、忍者の巻物の素材って聞いたけど」


「今はめっきり数が減ってしまったが、昔は忍者って奴らがこの国の主戦力だったらしい。もう百年以上前の話だな。忍者が愛用する巻物に目をつけたカグヤや俺の先祖は、巻物作りの工場を作って大儲けした。カグヤが金持ちの貴族なのはその名残だ」


「で、その忍者の末裔がフラン……か」


 彼女と初めて出会った時、ふと忍者っぽい子がいるなあとは思ったが当時の第一印象がここに繋がってくるとは。


「さーて構えろよお前たち、手厚いお出迎えだ」


 先頭を歩くイザヨイは刀を抜き、山道に現れた魔物に向けて斬撃を放つ。


 彼に続いて私も短刀を操作して、イノシシ型魔物の脳天に短刀を突き刺した。


「イザヨイがちゃんと強い侍なのか知れる良い機会だね、頑張ってよ」


「そう言われると自信無くすな……」


 頭の後ろを掻きながら彼が刀を構えると、どこからともなく桜の花弁を連れた疾風が吹いてきて、彼の周りに舞う。


「英雄さんたちの力になれるかどうか、見定めてくれ」


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