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第1162頁 獅子王の面

「奥へ案内します、騎士様のお知り合いの方だけお入りください。きっと彼も、大勢に見られるのは嫌がると思いますから」


「……?」


 不穏な雰囲気が漂う中、私たちは店の奥へと案内される。


 店の倉庫的な場所だろうか、そこには一台のベッドが置かれており、その上には苦しみの唸り声をあげる男性が寝ていた。


「彼が件の?」


「ええ、先日竜車が襲われ、荷車は破壊されましたが彼は命からがら逃げてきたのです」


 相当重傷なのか全身に包帯を巻かれている。


 茶色く変色した包帯が、当時の出血の量を物語る。


「治癒魔法をかけても問題ないほどには回復していますね。失礼します」


 ニンナは怪我人の首元に手を当てると、手の甲から治癒効果のある波動を流す。


「ほええ、凄い……治癒魔法も治療技術もかなり進歩してるんだね」


 感嘆の声を小さく漏らす時雨に、私も小さく聞き返す。


「当時はこうじゃなかったの?」


「防壁魔法もそうだけど、守ったり治す技術に関しては百年後の今の方が凄く進歩してると思うよ。戦争の反省からかな」


「なるほど」


 二人で話しているうちにニンナの治癒が終わり、床に伏した運転手はリラックスした表情を浮かべていた。


「ありが、とう……助かった」


「早速で申し訳無いのですが、竜車が襲われた時のことを詳しく話して頂けますか?」


「もちろん、あなたたちは命の恩人だ……」


 男はそう頷くと、竜車が[奇妙な面をつけた集団]に襲われた時のことを話し始めた。



・・・・・



 男は何ら変わりない道を進んでいた。


 突如車の車輪が外れ、荷車は大きく横転する。


 それから数秒の猶予もなく、五人の面をつけて人物達が荷車に乗り込み、荷物を奪っていた。


 阻止しようと槍を取った瞬間、数人から一方的に殴られ、力の差を感じた彼は命からがら街まで逃げてきたのだとか。



・・・・・



「あいつらは人間なんかじゃない……牙を隠した化け物だ。信じて貰えないかもしれないけど、一瞬[獣の前脚]を見たんだ。黄金の毛、鋭い爪……あれはまさに百獣の王の……」


「「「!」」」


 私たち三人は顔を見合わせ、頷き合う。


 街で遭遇した虎の面を付けた男が錠剤を噛んで、二足歩行の虎となったように。


 きっと彼が遭遇したのも同じような奴だろう。


「ひょっとして襲ってきた奴らの中に、ライオンの面をつけた人って居た?」


「……ああ! 居た、居たよ。明らかに他とは違うオーラを放っていたな」


 組織のボス的な存在か。


 なるほど[百獣の王]ってわけね。


「ありがとう。それだけの情報でも値千金だよ」


 やはり、つけている面=変身できる動物で間違いなさそうだ。


「そうだ店主さん、海産物を持ってきたんだ。採れたてだからお店に並べて欲しいんだけど……」


「本当ですか!? もちろんです! 魚は漁港から流れてくるのですが、海藻や貝は少なくて……魚だけの生活に飽きている方も多いですから、物凄く助かります」


 そういう店主の青年に、私たちは持ってきた箱のうち一つを渡した。


 港都リュウグウの店の数はシノノメから教えて貰っている。


 一店舗につき一箱、これで平等だ。


 私たちは怪我人の運転手に「お大事に」と伝え、その店を後にした。


「カーソルノイツ、少しずつだけど分かってきたね」


「まったく、迷惑な奴らだね本当に」


「組織同士の抗争はともかく、一般人を巻き込んだ犯罪は見過ごせません。蜃気楼の精霊を撃退したあとは、カーソルノイツを撲滅する勢いで行きましょう」



ライオンとかこわーい動物の面を付けてるやつは、強いって訳さ!!

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