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第1161頁 光の魔道士と炎の弓士

 オトヒメが陸で中期間滞在する準備を行う間、私たちは彼女たちが採ってくれた海産物を城下町へ運ぶことにした。


 海産物は鮮度が命! できるだけ日光に当てず、涼しい状態で運ばないと。


「氷砂!」


 ニンナが杖を構えて魔法を撃つと、箱の周囲に手のひらサイズの氷が大量に生成され、海産物を冷やしてくれた。


「わっ、増えた!」


 氷の魔法よりも、私は[彼女が分身した]ことに驚いた。


 聖具センチュリオンの特殊能力……だったか。


 コンサット島での決戦では杖の力によって白銀の騎士を召喚し、戦力として大活躍してくれたのを覚えている。


 それの応用で彼女は自分の分身を生み出せるようになったのだろう。


「ふふ、すみません。最初はみなさん驚かれるんですが、そんなに不思議なことでしょうか?」


「そりゃ分身したら驚くよ! じ、実体はあるんだよね?」


「耐久力は少ないですが、一応盾として使うこともできます。煙幕の奥から飛び出させて、囮として使うのが主ですね」


「懐かしい……」


 ニンナの分身を凝視しながら、時雨は小さくそう言った。


「懐かしいって、ニンナのお祖父さんもこの分身を?」


「一応分身も使えたけど、カルロッテは白銀の騎士を無数に生み出して、数の暴力で沈めるのが好きだったなあ」


 その時雨の言葉に、ニンナは過去に受けた祖父の試練のことを思いだし、苦笑いする。


「あれは本当に大変でした。倒すよりも早く、新しい騎士が生み出されるんですから。……しかし先入観のないシグレさんが言うなら間違いありませんね」


「間違い?」


「私も祖父に近づいているということです! 祖父は偉大な光魔導士として後世に名を残していますが、私の夢はそんな祖父を超えること。今はまだ背を追うだけですが、必ずや祖父を超えてみせます!」


「あはは、ニンナも良い顔するね。目標があるのは良いことだよ! 本当に超えられたかどうかは、彼と実際に旅をした私しか分からないけどねー」


「ならシグレさん、また今度テストしてください。かの大魔導士カルロッテを超えられたかどうか!」


 そんな会話を続けていると、いつの間にか私たちは港都リュウグウの敷地の中に入っており、次第に民家や店が増えてきた。


「ママ、お腹空いたよう……」


「もう少し待ってね、あと二時間でシノノメ様が食料を配ってくれるからね」


 道端でお腹を空かせた親子を見て、私はこの食料問題のことの大きさを実感する。


 今すぐにでも携帯食料を分けてあげたいが、一人にあげれば街の全員に配らなければならない。


 ここは我慢して、市場へ向かおう。



・・・・・



 市場へ到着すると、そこには大勢の人だかりが出来ており、怒号が飛び交っていた。


「ちょいちょいちょい、どうなってるのさ!」


「お腹が空いたら人は凶暴になる、急ごう静紅お姉ちゃん! ニンナ!」


 急いで駆け寄ると、怒号の詳細な内容が聞こえてきた。


「どうなってるんだ! どうして数日間も食料が入ってこない!」


「で、ですから竜車が襲われて……!」


「荷車なんていくらでもある! 運転手は帰ってきているんだろう? だったら運ばせれば良い」


 一番大きな怒号を飛ばしていたのは、おそらく商会のトップの人間だ。


 商品、つまり食料が入ってこないと彼らの収益も減ってしまうので危機感を覚えているのだろう。


「落ち着いてください。市場の方も意地悪したくてやっているんじゃありません」


 いち早く前に出たのはニンナだった。


 流石は近衛騎士団、私たちの中では対人関係の説得はニンナが一番長けているだろう。


「なんだい嬢ちゃん、口を出さないでくれ。仕事中だ」


「私だって騎士としての責務を全うしているまでです。もう一度言います、落ち着いて、数歩後ろに下がってください」


 顔は笑顔なものの、センチュリオンの杖先を男の腹に突き立て、臨戦体制をとっている。


 彼女の威圧感に押されたのか、男は言われた通り数歩下がってため息をついた。


「ありがとうございます。騎士様、商会の方が仰った通り、運転手は帰ってきているのです。しかし……」


「しかし?」


「奥へ案内します、騎士様のお知り合いの方だけお入りください。きっと彼も、大勢に見られるのは嫌がると思いますから」


「……?」


 不穏な雰囲気が漂う中、私たちは店の奥へと案内される。


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