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第1160頁 泡沫姫と特異点

「蜃気楼の精霊の討伐?」


 泡沫の庭園にて、私はシノノメに対して[カグヤ、オトヒメと共に蜃気楼の精霊を打ち倒す]ということを伝えた。


「そろそろ封印が解かれてしまう時期ですか……戦力として私も協力したいところですが、こちらも調べるものがありますし、その間、城下町を空けるわけにもいきませんから……」


 スイレンは団子を摘みながらそう言った。


「手伝えない代わりと言っては何だが、王家に伝わるヤツの弱点を伝えよう」


 シノノメが持ってきた古い巻物を、私たちは顔を寄せ合って読む。


「蜃気楼の精霊はその名の通り、蜃気楼……幻影を使って人々の精神を掌握しようとしてくる。それに打ち勝つには、蜃気楼に負けないほどの強い精神力が必要だ」


「しかし蜃気楼の精霊は長年力を蓄え、成長しています。この書物が記された頃より更に強力になっているでしょう。この情報だけに頼らず、臨機応変に対応してください」


 シノノメとスイレンの激励を胸に留め、私たちはそろそろ出発しようと立ち上がる。


「シズク、お前とは色々話したいことがある。アルクベールやアーク・ビレッジ、フィンブル王国、そこで見て聞いて体験したことをぜひ語ってほしい」


「うん、もちろんだよ。だから頑張ってね! スイレンも調査頑張って!」


 それだけ言って、オトヒメを含めた私たちは泡沫の庭園を出るのであった。


 出ていく私たちの背中を見て、シノノメは微笑む。


「特異点、か……コンサット島ではどうなることかと思ったが、案外上手くやっているらしい。シズクならきっと、これから起こるであろう厄難を退けてくれるだろう」



・・・・・



 あれから時間は四時間ほど進み、ウォルロ・マリンの海岸線。


 私、時雨、ニンナの三人はオトヒメの作業を手伝うため、砂浜を駆け回っていた。


 例の貝と海藻を採取して代わりに陸の食糧と交換するという名案を実行するため、オトヒメは家族総出で人間たちが食べられる貝や海藻をとり、海岸へと投げる。


 その投げられた貝たちを私たちが回収し、箱に詰めるという具合だ。


「ひい、ひい……! 作業がてらちょっと運動するつもりだったのに、これはハードすぎるよ……」


「あっはは、静紅お姉ちゃんもまだまだだね」


「なんで百年のブランクがある時雨の方が……! あ無理、死ぬ……」


 顔面から砂に埋もれるように倒れ、私は激しい呼吸を続ける。


「運動不足……!!」


 長い船旅の中で三半規管は鍛えられてるけど、社畜の運動不足は変わらないんだ……!!


 そんな阿鼻叫喚、死屍累々の作業がようやく終わり、目の前には50Lの箱が三十箱以上並んでいた。


 ほとんどは時雨とニンナの手柄だけど、こうして大量の箱を目の前にすると達成感がある。


「本当に、本当にありがとうございました……ッ!! おかげで作業が早く済みました!」


 こちらも息一つ切らしていないオトヒメ。


 彼女に続いて、鯛や鯵などの魚が水面に跳ねる。


「じゃあこの箱を市場に持っていって作業は終わりだね。私たちが箱を持っていってくるから、オトヒメはササヤマに向かう準備をしてて」


「分かりました、お気をつけてッ!」


 重いものを運ぶときは私の能力が光る。


 一気に全ての箱を持ち上げ、この海岸から徒歩で十分ほどかかる港都リュウグウへ向かうのであった。



シノノメとスイレンの過去編もいつか書きたいですね!

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