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第25-1頁 不眠症、好奇心、無慈悲、そして傲慢

謎の花畑に意識だけ飛んでいる六花。そこには4人の女性が居て、自分達のことを『成れの果て』そう名乗った。


「歓迎するわ」


 そう言われた途端、六花はさらに話の道筋が分からなくなった。


 謎の花畑の空間で行われている茶会。


 そこに出席するのは不眠症、好奇心、無慈悲そして傲慢の成れの果て。


 そう。彼女らは皆、自身のことを成れの果てと言うのだ。


『それで、ボクをここへ呼んだ理由は……』


「ふふ、そんなこと簡単ですよ。私たちがあなたと会話をしたかった。ただそれだけです」


 六花の質問にルースリィスが答えたと思うと、次はぼそぼそとインソムニアが独り言のように続ける。


「それに、あなた今困ってますよね? それを助けてあげたいとルースリィスさんが珍しく慈悲を与えたんですよ


 これに今度はペルソナが「だから」と前置きして話す。


「私達はあなたの助けをするためにとある契約を結んでもらおうと、ここに呼んだの」


『契約……? 確かに今ボクは困ってますが…』


 ここに来る前、ニンナとの戦闘で自分の非力さを知った六花。


 視界いっぱいに広がった警告欄の文字。


 それは『相手は21倍の強さ』だと告げられたものだった。


 逆にいえば、六花はニンナと比べて21分の1の力しかないということ。


「そーそー、契約契約!」


「内容はここに記されているので自分で確認してください」


 そうニアに言われ、意識をそこに向ける六花。


 そこには、古いなめした革に茶色の文字で書かれた[契約書]のようなものがあった。


『えっと、読む時間を貰っても?』


「ふふ、あまり時間が無いんですが、他を削れば大丈夫です」


「へぇ、ルースリィスちゃんがそんなに優しいなんて……そんなに気に入っちゃったのー?」


 ルースリィスとキュリオスが話している間も六花は契約書に書かれた文字を能力を使って、その見慣れない言葉を訳しながら並べられた文字に目を通して行く。


『なるほど、大体は分かりました。でもどうしてボクが……』


 異世界の住民は六花以外にもたくさんいる。


 それに異世界に転移してきた人物も、静紅や蜜柑や結芽子、あとは紗友理もいる。


 六花はどうして自分が選ばれたのか少し困惑していた。


「そんなの決まってるじゃない。あなたが[研究対象]の一人で、ルースリィスが気に入ってるからよ」


 再び出る研究対象の言葉。


 六花は何かの研究の対象であり、モルモットでもあるということだ。

 

「ほんと、回りくどすぎて私ですら話の道筋が分かりません。それで、結論から言えばどうして六花さんをここに呼んだのですか。眠すぎて死にそうです、私は不死身なので死ねませんが」


「えーっと、自分で自分の非力さを知った哀れな六花ちゃんにルースリィスちゃんが素晴らしい力をあげるんだよねー」


 キュリオスが身体を逸らしながらルースリィスに、視線を向ける。


「ふふ、そういう事です。今までも何度か力を与えたことがありますが、それはあくまで、一時的な活性化プログラムです。しかし、今度は六花さんの能力に追加する形で永久的に権限を与えます」


 そういえば、六花はこれまでも何度か不思議な力が発現したことがある。


 一度目はキノコタンの森、二度目は農村のボア討伐戦だ。


 指の先から「電磁砲」というビームを放つことが出来たのだが、しばらくすると力を失ってしまっていた。


 ルースリィスはティーカップの紅茶を飲み干し、改まったように続ける。


「一度目は気絶で不具合が起きましたが、二度目は上手く適応しました。これは異世界に溶け込み始めている現象と同じと考えていいでしょう。そして転移してしばらく経った今、ようやく研究は次のステージへ進む。そういう訳です」


『は、はぁ……。何を言ってるのか全く分かりませんが今は黙って聞いておきましょう』


 そこに、ペルソナが六花とルースリィスの手を取って目をつぶった。


「私がプログラムを中継して、あなたに力を与えるわ。少しだけ私の権限も混ぜるけど問題ないでしょう?」


 ルースリィスがこくと頷き、彼女の右手から青い光が浮き出てきてやがてペルソナの体内に入る。


 そして青とピンクの光が六花の左手から体内に入り、静かに光は消えた。


『特に変化はないんですけど……』


「大丈夫、そのうち……そうね、意識が回復したら変化は出てくるはずよ」


 ペルソナは六花から手を離すと、一歩離れて他の三人の成れの果てと同じ位置に戻った。


「これで茶会は終わりよ。六花、あなたはルースリィスと私の権限を混ぜて渡した特別な研究対象。その自覚をしっかりと持ってこれから生活していきなさい。期待しているわ」


 4人の成れの果てのその目には光が宿り、まるで六花に希望を託したように静かに消えていった。


 それに少し遅れて、六花の意識も元の場所に帰っていくのだった。


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