第1153頁 カーソルノイツ
あぶね、普通に投稿忘れてた・・・!
「蜃気楼の精霊が封印されている祠へ向かうのは数日後。それまでにペルソナが言ってた通りオトヒメと仲良くならなくちゃ」
翌朝、カグヤの家で朝食と昼食をいただき、私と時雨とニンナは三人だけで[港都リュウグウ]に一度戻ることになった。
残りのメンバーは蜃気楼の精霊についての情報を集めたり、イザヨイとともに山に入って特訓したり、竹の手入れを行ったりするらしい。
「シグレ様、あの、本当に祖父と一緒に旅を……?」
ニンナは聖具センチュリオンをぎゅっと握りしめながら、時雨に話しかける。
「様はいらないよ、みんなと同じように時雨さんって呼んで。質問に答えると、確かに私はあなたのおじいちゃんの魔導士カルロッテと旅をしてた。でも詳しい旅の思い出とかは、百年の治療で忘れちゃってるんだ」
「シグレさんは祖父たちとの記憶を取り戻すために旅をしていると聞きました。私の顔やこの武器を見て、何か思い出すことはありませんか?」
「聖具センチュリオン……触って良い?」
「は、はい」
時雨はいつになく真面目な表情でそう言うと、ニンナの抱えるセンチュリオンの先端を優しく触れた。
その瞬間、彼女の頭に電流が走り、数珠つながりで当時の記憶が呼び醒まされる。
・・・・・
「あー、で? 俺たちは朝っぱらから呼び出されたわけだが……」
無精髭が似合う二十代後半の男は朝日に向かって大きな欠伸をしながら、腹をポリポリと掻いていた。
だらしない彼に対して時雨と、時雨より少し年上の少女は指をさして言う。
「何寝ぼけてるのフロイス!」「アンダルソンの言う通り! 先日技術者に頼んだ例の兵器を受け取りに行くんでしょ」
だらしない男がフロイス、時雨と並んでいるのがアンダルソンだ。
「もう良いでしょう、僕も宿に戻って調べたいことがあるので早く兵器とやらを受け取って帰りましょう」
「カルロッテは本当に真面目だねえ、まあでも早く済ませるに越したことはないか」
「ええそうですとも。最近多発している魔物の凶暴化事件に関しても、まだわかっていないことが多いんですから」
「へえ、歩く生物図鑑のカルロッテ先生でもわからないことがあるなんて」
時雨のニヤニヤとした笑いに対して、カルロッテは全く効いていない様子でメガネをクイっとさせて返答する。
「分からないから調べるんです。……少なくとも何も知ろうとしない頭の弱いどこかの三人よりはマシです」
「頭の弱い三人かあ……ねえ、それってもしかして私とアンダルソンとフロイスのことだったりする?」
「何でも質問していては身につきませんよ、時には自分で思考することも大切です」
少し前を歩くカルロッテはそう言って振り返ると、時雨に対して微笑みを浮かべるのであった。
・・・・・
「カルロッテ……ああ、懐かしいなあ……」
「そんなことがあったのですね。話の内容的に、ちょうど祖父が聖具センチュリオンを受け取る直前のようですが……」
「うん、あの後私たちは聖具の製造を行う場所へ行って、それぞれ聖具をもらったんだ」
背中に携えたフレイマギアを構えて、軽く弦を引く。
するとフレイマギアがそれに応答して、時雨の指と弦の間に炎の矢が出現する。
「精霊と龍に対抗するために作られた兵器の中でも特に強力な存在がこの聖具。当時は画期的だったなあ、ただの武器じゃなくて、武器自体に特殊能力が備わってるってすごかったんだよ」
「でもその聖具はそのほとんどが戦後すぐに、人類自らの手によって破壊されたと聞いています。それについてシグレさんはどう思いますか?」
「正解だったんじゃないかな。誰かがそうしていなくても、私たちがやってたと思う。本来聖具や兵器なんて誰も持たないのが一番良いんだから」
ニンナと会話をしながら、時雨は突然勢いよく弦を引き絞り、そして放つ。
この間一秒未満。
灯籠が立ち並ぶ平原を炎の矢は飛んでいき、そして[何もない空間]にぶつかった。
「!?」
矢で射られたのは、なんとあの奇妙な面をつけた男性だった。
「透明化の能力……いや、私が完治できるくらいだから魔法かな。どちらにせよ厄介なことになった。相手の中に透明化の力を持っている人がいるなら、安心して会話もできないよ」
「とりあえず分身をササヤマへ向かわせて、情報を共有しておきます」
「動物の面をつけた集団……」
私は警戒しながらその男の持っていた装備を確認する。
しばらくして首元にドッグタグと似たような感じで、組織名と持ち主の名前が書かれているアクセサリーを見つけた。
「[カーソルノイツ]……」
「え?」
「多分、この面をつけた組織の名前。これは本当に厄介なことになってきたね」
カーソルノイツ。
彼らの思惑が未だ理解できないまま、私たちは港都リュウグウへ到着した。
[奇妙な動物の面をつけた集団]って長いですよね、なので組織の名前を作りました。
その名もカーソルノイツ!
特に意味はありません、強いていうなら語感が良いからです!!




