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第1150頁 水晶に映る怪しい影

「つまり精霊の封印が解けそうだから、私たちにどうにかしてほしいってことね」


「カグヤさんカグヤさん。俺に手伝って欲しいとは言ってたけどよう、もしシズクたちが来なかったら俺一人でやってたってこと?」


「でも私、イザヨイが強い侍だってこと知ってるよ。イザヨイならやってくれるよね?」


 信頼をおいて目を閉じて笑うカグヤだが、その奥には社畜時代のトラウマが呼び起こされるような、そんな狂気を感じた。


「というわけだ、俺はお前たちを全力で頼る! いいな!」


「調子良いなこいつ」


「ですが実際、私たちはこれまでたくさん精霊と出会い、戦っています。自分で言うのも何ですが、精霊討伐ならこれ以上の戦力はないでしょう」


 フレデリカの言う通りだ。


 現代のこの世界では精霊は祀られていたり、珍しいものになっている。

 

 しかし私たちは今まで数々の精霊と友人になったり、戦ったりしてきた。


 半端な兵士より、少数精鋭の私たちの方が格段に良いだろう。


「それでカグヤ、蜃気楼の精霊ってのは今どこにいるんだ?」


 イザヨイの問いに答えるように、カグヤは水晶にとある山の景色を映す。


 雲にかかるほど大きな二つの山、その周囲には濃い霧が充満している。


「二つの山の間の麓、そこに封印された祠への入り口があります。しかしこの入り口の鍵を開くには、二つの山の頂にある大結晶を点灯させる必要があるのです。この山には魔物が巣食い、さらに濃い霧で視界が安定しない……相当な実力者ではないと祠どころか山頂にすら辿り着けないのです」


「なるほど、大体理解しました。当面のボクたちの目標は、とりあえずその山にある祠に向かうことですね」


「封印が弱まってるって言ってたけど、どうすれば修復できるの?」


「封印の技術は今やそのほとんどが失われてしまっています。ですから、封印の再構築を行うより、万全を整えた状態で封印の決壊を待ち、ホウライを沈めようと考えているのです」


 なるほどなるほど、と頷く私たちとは対照的にイザヨイは震えながら顔を真っ青にしている。


「だからカグヤさん、それを俺一人にさせようと思ってたってこと?」

 カグヤは何も言わずに微笑んでいる。


「イザヨイ、この依頼が終わったら絶対協力してね」


「ああ、そういう約束だ。むしろこっちからお願いしたいくらいだぜ、蜃気楼の精霊討伐を手伝ってくれ」


 第一印象は最悪だったが、話してみるとそこまで嫌なやつではないとわかった。


 まあフランの知り合いという時点で、悪い人ではないんだろうけど。



・・・・・



 盆地のササヤマの日照時間は短い。


 すっかり周囲は暗くなり、私たちはカグヤの家に泊めてもらうことになった。


「いやあ、良いお湯だったね。温泉でも引いてるのかな」


「ええー、いいな母さん一番乗りで」


「じゃんけんだから仕方なし。でも次はエルメスの番だよ、後が詰まってるけどゆっくり入っていいからね」


 風呂場に入っていくエルメスを見送り「さて」と短く呟いて縁側を歩いていく。


 屋敷の庭園に出た私は、三日月の明かりの下で腰を下ろし、キノコタン・ナイフを手に持った。


「静紅お姉ちゃん」


「時雨、来てくれたんだね」


「当たり前だよ。お姉ちゃんのお願いだし、それに……」


 キノコタン・ナイフをちらと見て、時雨は続ける。


「旧友とも話せるし」


「あはは、顔怖いよ。って言ってもそうか、時雨って試運転でこの世界に来たけど結局帰れなくなってたんだっけ」


「そうだよ。だからあの子と繋がったら……」


『あの子と繋がったら、何?』


 携えていたナイフから、突然聞き覚えのある声が聞こえてくる。


 間違うはずもない、ペルソナの声だ。


「ああ……久しぶりに聞いた、その声」


『私もあんたの声、久しぶりに聞いたわ。調子はどう? 百年ぶりの世界を見て何を思った?』


「まあこの世界の文明レベルじゃ、そこまで発展はしないよね。現代社会の日本の百年とは大違いだよ」


 電話もまだ普及していないし、竜車や馬車が主流のこの世界では何かと移動に時間がかかる。


 それだけ文明の発展にも時間が生じてしまう。


『それで、何の用かしら?』


「どうせ知ってるくせに。……蜃気楼の精霊と、当時の戦いについて三人で話したいことがあるんだ」


 私はニヤリと笑みをこぼしながらナイフを握るのであった。


この国で行う当面の目標は[蜃気楼の精霊]の討伐です!

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