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第24-2頁 成れの果て

『それで、ボクはどうしてこんな所に……?』


 六花は必死に頭の中で考えて目の前の4人に伝えた。


「あ、その件については深く考えない方がいいかもね。今は意識だから、存在する理由を考えてただけで永遠にここに留まってしまうことになるからねえ」


 キュリオスがゆるーく説明したが、六花には背中も凍るほどゾッとするものだったらしく、すぐに考えることを止めた。


 どうして存在するだけで帰れなくなるのか。


 それは六花の脳では理解出来ないものだ。


「早く本題に入りましょう、時間がかかりすぎています。まず、六花さんをここに呼んだ理由を教えた方がいいと思うんですが?」


『ここに呼んだ理由って、ボクがここにいる理由と同じなんじゃ……』


 ニアが机から顔を離し、[六花にここに呼んだ理由]を話すように提案した。


 しかし、六花にはその提案は[六花がここにいる理由]とほぼ同じになると感じて、それを阻止しようとする。


 六花がここに呼ばれた理由を聞かされて消えてしまったなんてたまったものじゃない。


「ふふ、大丈夫ですよ。この世界は私達の思うようになります」


『と、言いますと?』


「つまり、あなたがここにいる理由を考えてしまうと存在まで消えるけど、私たちから知らされたのなら、その心配はない。そういうことよ」


「そう、私たちはこの世界の理その物。私達の考えたようにこの世界はなる……」


 洗礼されたような彼女らの順序良い説明に少々惑わされながら、六花は真剣に説明を聞いた。


『この世界の……(ことわり)


 存在自体が世界の理など何とも罰当たりな発言だ。


 自身の思ったように世界が生成されるなんて力を持っている存在はただひとつしかないはずだ。


 そして、その存在は六花もよく知っている。


『そ、そんな……そんなこと出来るなんて神様しかいませんよ! 自分の思った通りに物事が上手くいくなんて傲慢すぎます!』


「あら? あなた、私達をなんだと思ってるの」


 ペルソナのその質問に六花は口篭り、数秒間の硬直を解いて、彼女らに伝えた。


『何って……。その傲慢さ、慈悲の無さ……。っ! あなた達、人間じゃないんですね』


 六花の伝えた[人間じゃない]。


 それは、彼女達の何かに共鳴したのか、ぴくりと4人の体が震えた。


 そして桃色髪のペルソナが口を開き。


「何を今更言ってるの。あぁ、身体がないから伝わる情報も少ないのか…」


 今はまでうつ伏せになっていたニアもいつの間にか身体を起こし、鋭い目をこちらに向けていた。


 薄水色髪のルースリィス、モコモコ服のキュリオスも六花に視線を向ける。


 ペルソナが椅子から立ち上がり、不気味に笑って六花をさらに混沌の渦に突き落とすことをその口から伝えた。


「あなたの推理通り私たちは人間じゃないわ。それはニアを見たときでわかっていたと思うけど……」


 ニアの頭から角が突き出たときから六花は薄々気づいていたが、それは異世界ではなんの違和感もなく扱われる。


 猫耳の少女もいれば巨人もいる世界だ。


 いちいち頭の角なんかで反応している暇もない。


 人に目がついているように、獣人族にツノが生えていることは当たり前の常識なのだ。


「ふふ、やっぱり研究の予想通りですね。人を異世界に送ると、1ヶ月あまりで適応し、そこから更に進行すると、異世界の常識を自分の常識にしていく」


『え、ま、待ってください……頭が追いつきませんよ』


「大丈夫だよ、どうせ目が覚めるとここでの会話は消されるからさあ」


「話がそれてませんか? 私たちは何者かって話でしょう?」


 怒涛の女性達の会話に六花の頭はついていける訳がない。


『研究の予想通り……? あなたたちはボクたちで何か研究を……』



 そう考えた時には遅かった。


 それよりも先にペルソナに女性の秘密を知らされて六花はとうとう気を失ってしまいそうになるが、必死に堪える。


「そうね、ニアの言う通りさっさと終わりにしましょうか。私たちは神様みたいな存在、私の思うことは全て実現される。世界は私が得をするように出来ているのよ……そう、私の存在自体が世界の理だからね」


 とうとうニアも椅子から立ち上がり、その目を不気味に光らせて言う。


「私達の詳細も伝えた方がよろしいでしょうね


 その一言の前後、この世界から音が消えた。


「先ほども言いましたが私の名前は[インソムニア]。意味は分かってますよね?」


『……不眠症ですよね?』


「そう、不眠症。寝る時間までも天界の調整作業に吸い取られた[成れの果て]。とでも言いましょうか」


「キュリオスは好奇心、ルースリィスは無慈悲、ペルソナリテは傲慢という意味ね。」


 新たな存在成れの果て。


 彼らを目の前にした六花は、存在しない体を震わせるとその茶会の中心で立ち尽くしかなかった。

今回登場した成れの果てという単語は、今後の物語の主軸になるほど重要な単語です!

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