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─────オラシオン教団は常にあなたたちを監視しています。
街を歩くティアは突然、謎の通行人に耳打ちされて顔を青ざめさせた。
大急ぎで合流した一行は、登山の許可が降りたこととオラシオン教団の監視についての情報共有を行なった。
「どうしてこの国にオラシオン教団が……?」
「いや、目立たないだけでオラシオン教団は各国に拠点を構えてるって聞いたことがある。だから根絶やしにするのが難しいって」
「それよりどうする、このまま遺産探しを続けるのか?」
「ここまで来て探さないわけにもいかないよ。市役所のお姉さんにお願いされちゃったし」
各々が言葉を投げる中、ルリは手を打って言う。
「教団の狙いを考えよう。奴らの狙いはなんだ? 何のために我たちを監視しているのだ?」
「うーん、遺産を横取りするためとか?」
「アルトリアの封龍の成長度合いも見てるかも」
「我もそう思う。なら風龍や地龍の遺産を手に入れる前に接触してくるはずじゃないか? まだ付け焼き刃とはいえ、アルトリアは二つも遺産を手に入れたんだ。それは教団からして相当な脅威になる」
「つまり、今まで邪魔されなかったってことは今回の炎龍の遺産も手に入れられるってこと?」
「うーむ、ルリの見立ても若干甘い気がするが、このままおじおじしてたって何も変わらないのは事実。アルトリアはどうしたい?」
レナの問いに、アルトリアは少し思考したあと顔を上げて。
」
教団のことだから何か裏があるように思いつつも、このまま去るわけにもいかない。
四人は改めて最大限の警戒を行いつつ、購入した弁当を持って登山を試みるのであった。
・・・・・
クラ=スプリングスの火山は標高が高く、普通に登るには数時間かかってしまう。
しかし一行には龍に変身できる半龍族が居る。
暑さでクタクタになるアルトリアとルリは日陰に隠れながら声を重ねて言う。
「「レナあ、早く龍になって……」」
「あいあい、 ちょっと待てよ」
確実に人目がないことを確認して、レナは氷棘龍の姿に変化した。
灼熱の火山でも彼女の冷気が遮られることはなく、氷棘龍はその凛とした佇まいから発せられる冷気で仲間たちを冷やしていく。
「「気持ちいいー!」」
「あはは、二人とも子供だね」
『背中に乗ればむしろ冷たいくらいだ。早く山頂まで行こう』
レナは屈んで背を低くすると、アルトリアたち三人を背中に乗せて翼を動かした。
ふわりと飛び上がるレナに乗って、一行は通常の五倍以上の速度で山頂を目指す。
途中、炎の魔物に襲われたがレナが羽ばたくだけでソレは塵となって消えていった。
「炎龍ファルルの遺産……必ず手に入れてみせる」
強風に煽られながら、アルトリアは強く拳をにぎりしめる。
暗躍するオラシオン教団の監視と影。
一行は無事に龍の遺産を手に入れることができるのだろうか。
次回! ティアが珍しく○○するよ!




