第1123頁 すぷりんぐす
「ごくり……ここが噂のクラ=スプリングス! 温泉の煙と工場の灯りが相まって綺麗だね」
王都を出て数時間、アルトリア、ルリ、ティア、レナの四人は炎龍ファルルの遺産を入手するため、工業と温泉の地クラ=スプリングスを訪れた。
「うう、なんか変な臭いがしてあまり好きじゃないのだ……」
「温泉地だからね、硫黄の臭いかな。それより遺産が封印されてる火山ってどれかな?」
クラ=スプリングスの街は山に囲まれた場所にあり、それらしい火山が複数あるため一行はどれに登るべきか迷っていた。
「分からないなら聞けば良いのだ、この街の長のところに向かおう!」
ルリはそう言って、街の市役所まで急いだ。
・・・・・
「申し訳ありません、現在山への登山道は規制されておりまして……」
市役所のインフォメーションにて、四人は火山への道が規制されており、山へ登れないことを聞かされる。
「そんなあ、何とかならないんですか?」
「実は最近登山道に落石の被害が頻発しておりまして、安全を考慮して規制という形になっております。火山に噴火の兆候は見られないので、ただ単に落石が多いだけなのかもしれませんが……やっぱり不安ですね」
「落石か、原因とかはわかっていないのか?」
市役所の人間は質問を重ねられて目をぐるぐる回しながら。
「調査隊は呼んだらしいのですが、到着が遅れているようで……」
「お姉さん、山の位置と登山道の入り口を教えてください」
「へ?」
「落石の調査、私たちが承ります。そしたら調査の名目ってことで山に入れるでしょ?」
ティアの言葉に、皆が名案だと歓声を上げる中、市役所の女性は両手をブンブン振る。
「だ、だめですよ! 専門家でもない人間が調査だなんて……!」
頑なに拒否する女性をどうやって説得しようか考えていると、突然市役所の扉が蹴破られた。
どばーん、と扉がブチ破られた音が市役所内に響き回る。
「全員その場で両手を上げろッ! 変な真似をしようと思うな、動いた瞬間魔法を放つからな!」
大声を上げながら数人の男が市役所の中に入ってきて、ちょうどティアたちの隣のカウンターに集まった。
「おい、この市役所にあるありったけの金をこの袋に詰めろ!」
「ひいっ、ど、どうして銀行じゃなくて市役所……!?」
「銀行は警備が厚いんだよ、いいからさっさと金を─────」
怒鳴り散らす大男の肩を、女性の小さな手が掴む。
「ああ? 犬獣人……?」
アルトリアを睨みつける大男。
しかし次の瞬間。
「理由があるのかもしれないけど! 泥棒はしちゃだめだ、よっ!」
彼女は軽やかな身のこなしで大男の肩に乗ると、後頭部を思い切り剣の鞘で殴りつけた。
そんなアルトリアを見て、ティア、ルリ、レナも他の男たちを拘束し、あっという間に強盗たちは殲滅された。
「ふう、大丈夫だった? 銀行じゃなくて市役所を襲うなんてねえ」
のほほんとした表情で笑うアルトリアに、市役所の女性はまだ鼓動鳴り止まぬ状態で礼を言った。
「ありがとうございます、まさかそこまで強い剣士様だったとは……確かにここまでお強いなら、火山の調査を任せられるかもしれません。少し上に掛け合ってみます、しばらくお待ちください」
女性はアルトリアにそう言って、関係者以外立ち入り禁止のフロアへ行った。
「はあ、それにしても強盗ね……どの国、街にも悪い人はいたものだ」
「王都は辛うじて王の威圧感もあって治安は守られているが、クラ=スプリングスのような王都から遠い街だとそうでもなさそうだな。みたところ騎士たちの数も少ない」
「とにかく拘束したこいつらを騎士団のところに連行するよ。ルリ、ついてきて」
「はいなのだ」
ティアとルリは五人の男たちを再度ロープでキツく縛り、二人で外の騎士団の方へ連れて行くのであった。




