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第1099頁 ゆうひにかがやく


 紗友理とルナの決闘は意外にも早く勝敗を決した。


 結論から言うと、勝者は紗友理だ。


 大精霊との戦闘経験やそれ以降の労働で能力を異常なまでに酷使していた彼女は、今まで以上に[地形の編集]が容易に行えるようになった。


 時に壁を作って魔法を防ぎ、時に足場を作って接近する際の手助けとする。


 そこに紗友理が元々持っている剣技と弓技を合わせれば、無尽蔵の魔力を持つルナだって怖くない。


「むあっ……!」


 決着は紗友理がルナの頬をむにっとつねったところでつき、息を呑んで見守っていたルカが震える息を吐いて地面に座り込んだ。


「ふふ、私の勝ちだ」


「も、もう一回……!」


「いいや呑まないね。約束は約束だ、君たちには王邸で優秀な魔法使いとして働いてもらう! 高収入、高待遇、福利厚生と有休消化もできるから安心してくれたまえ」


「高、収入……? 待って、お金がもらえる……?」


 鳩が豆鉄砲をくらったような顔でこちらを見るルナに、紗友理はポカンと首を傾げる。


「当たり前だろう。それに近衛騎士団は一応公務員の扱いだから、他の職業より断然多くもらえるだろうね。待遇についてはこっちがお願いしている側だから、要望を言ってくれれば可能な限りは答えるよ」


「……はあ、なんだ、ルナてっきり……」


 ルナは自身が想定していた労働環境を紗友理に話した。


「あっはは、そんなわけないじゃないか。産業革命時代の奴隷じゃあるまいし。ちゃんと休日もあるし、趣味の時間も作れるよ」


 紗友理はそう微笑んで、頬を膨らませるルナの頭を撫でようとする。


 が、ルナはその手を弾いて紗友理を睨みつけた。


「触らないで。……許可してない」


 彼女はそう言って、一人で古屋の方へと戻っていってしまう。


 紗友理とルカが並んで「どうしようか」と顔を合わせていると。


「早く行こう、日が暮れる前に王都行きたい……」


「「!!」」


 ルナは振り返ってそういうと、ぎこちない微笑を浮かべる。


 そんな彼女にルカは背後から抱きつき、頭を撫でる。


「えらいえらい、ルナはやっぱり良い子なの!」


「……や、やめて姉さん、サユリ様が見てる」


「え、今私のことサユリ様って……」


「仕えるなら、様付けするべき。ルナがそう判断しただけ」


 あまりのツンデレ具合に愛らしさを感じつつ、紗友理は今度こそ二人の頭を撫でようと手を伸ばす。


「さあ、帰ろう。まずはどこの部屋を使うか決めないとね」


「ええー、どんな部屋があるのー?」


「日当たり、日当たりは大切。あと睡眠中に魔物に襲われない部屋」


「いや、王都だから魔物は基本入ってこないよ……?」


 そんな会話をしながら歩く三人。


 かくして紗友理は湖畔の双子魔女ルカ&ルナを仲間に引き入れ、近衛騎士団の大幅な戦力アップに成功した。


 彼女ら二人の銀髪は夕陽に照らされ、輝いている。


 紗友理はその頭の温かさと感触を噛み締めるように撫で終わると、王都へ帰るための交通手段について考えるのであった。



・・・・・




「で、今のすーぱー可愛いめいどのルカとルナが誕生したってわけなの」


「はあ、なるほどなあ……もう八年以上ここでメイドとして働いているんだろう?」


 椅子に座り、白雪のような輝きを持つ布を纏う女性はルカの話を聞き終えると、出された紅茶を一気に飲み干して立ち上がった。


 女性の体には冷気を伴う氷の鎧がところどころついており、頭からはユニコーンのように立派な一本角が生えている。


「うん、もうすぐ九年になるの。あ、そうだレナちゃん、今度フローダムの方に行ってみようと思うんだけど、一緒にくる?」


 氷棘龍レナ。


 かつて凪咲を殺し、近衛騎士団に甚大な被害をもたらした氷属性の半龍族。


 今は凪咲と和解し、当時は瘴気に感染しており正常な判断ができていなかったとして正式に無実の判決を受け、こうして王邸で生活している。


 ルカ&ルナとレナは昔からの知り合いで、彼女が王邸にやってきてからは一日数十分は駄弁る時間を作っているほどだ。


「フローダムか、それまたどうして?」


「ううん、特別な理由はないの。ただ長らくママの顔を見てないから、一度見ておきたいなって」


「おお、そうか。なら我も里帰りついでに一度フローダムへ戻ってみるとしよう」


 半龍族が住まう村フローダム。


 そこは半龍族の起源の地。


 半龍族が生まれ、生活し、そして命を絶やす場所。


 悠久の風が吹くあの地で今、新たな物語が始まろうとしていた。



 氷棘龍レナは超久しぶりの登場ですね!


 詳細は560〜563頁 過去を塗り替えるをチェケラ!

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