第1091頁 耳に囁く愛の言葉
投稿日同日20時、タイトル名を記入するのを忘れていたので追加しました!
ハロウィン期間限定の魔物から採取した布を持っていくと、ものの数分でファルシアーノはエーテルとベルアの二人分の衣装を完成させた。
見た目は[不思議の国のアリス]と[猫獣人]を合体させたような感じで、エーテルは姉と同じ名前の人物とお揃いの格好ができて凄く喜んでいた。
衣装を手に入れた二人は、ルカとルナに礼を言って店を出る。
「ふわあ……ん、ねむい」
「そうね、もうすっかり夜だもの。家まで送ってあげるわ」
この街にやってきてすぐの頃は、少し散歩するだけでエネルギー切れで倒れていたのが、今では半日も歩けるようになった。
エーテルの成長が自分のように嬉しく感じる。
「おんぶ」
「え?」
「おんぶ、してほしい……」
「あはは、はいはい。おんぶね」
笑いながらベルアは腰を落とし、体重の軽いエーテルを担いだ。
「ハロウィンは楽しみ?」
「ん……楽しみだよ、お菓子がたくさん貰えるんでしょ?」
「当日まで良い子にしてたらね」
ハロウィンに向けて飾り付けが行われる王都の商店街を、ベルアはゆっくりと歩いていく。
普段なら近道で路地裏を通るが、夜かつエーテルをおぶっている時に変な奴に絡まれては大変だ。
出来るだけ人の多いところを通ろうと、彼女は商店街を選んだ。
「でもイタズラするのは悪い子だよ」
「え? ああ……たしかに。エーテルって時々核心をつくようなこと言うわよね」
「ベルアお姉ちゃんはハロウィン楽しみ?」
「ええ、とっても。みんなで仮装して街を歩いてお菓子を貰うなんて素敵なイベントだわ。少なくとも私が子供の頃は想像もつかなかったことよ」
孤児で教会の昼食を貪り食っていた子供時代を思い出し、ベルアは「ふっ」と鼻で笑う。
「ねえエーテル、もしも[百年前の戦争]がもう一度起こってしまったら、あなたはどうする?」
「うーん、んん……」
「あはは、ちょっと難しかったかしら。じゃあ質問を変えるわ。エーテル、これからも私と一緒に居てくれる?」
頭を掻いて悩むエーテルだったが、新しい質問にはすぐに頭を縦に振った。
「もちろんだよ、なんたって私は蒼穹の巫女さんなんだから……ふわあ」
大きな欠伸をするエーテルに、ベルアは母親のように微笑んだ。
「ふふ、もう夜も遅いものね。このまま寝ていいわよ」
「ん……ありがとう、ベルアお姉ちゃん。だい、すきぃ……」
眠りに落ちる直前、エーテルは無邪気な子供のようにベルアの耳元でそう言った。
その言葉にベルアは頭から白い煙を出すほど顔を赤くし、見悶える。
「私も好きッ……!! でもダメよベルア、まだ子供のエーテルにこんな感情を抱いたら、それこそシズクみたいな変態になるわ……」
神託の巫女として、ここはきちんと線引きしないと……ッ!
ハロウィンが近づく夜の王都にて、巫女は一人悶々と歩くのであった。
その後、バジリスクとベヒーモスに馬鹿にされたのは言うまでも無い。
連続投稿3日目!!
静紅「さて、今日のあとがきはエーテルのお姉ちゃん、アリスに来てもらったよ!」
アリス「お邪魔します、物語としての登場場面は少ないけど良かったのかな?」
静紅「関係ない関係ない、本編で会えないヴァイシュの人たちとお話ししようって企画なんだから! さてアリス、アリスはエーテルのお姉ちゃんとしてのイメージが強いけど、お姉ちゃんとして苦労したこととかある?」
アリス「お姉ちゃんとして苦労したこと……お菓子は三等分だし、今まではマル姉と二人で私が末っ子みたいな感じで生活してたけど、エーテルを取り戻したことでその感覚がガラッと変わったのが苦労したことかな。まあ幸せな苦労だけどね」
静紅「そうだね、エーテルがいないと感じれない苦労だから良い苦労だよね。エーテルって素直で良い子だけど家の中だとどんな感じなの?」
アリス「これが意外と食いしん坊なんだ……ちょっと目を離すと、口いっぱいにお菓子を詰め込んでるから、お菓子の戸棚にはいつも鍵をかけてるんだ」
静紅「なにそれリスみたいで可愛い」
アリス「あはは、可愛いは可愛いけど、やっぱり健康も考えると甘やかし過ぎるのもよくないよね。エーテルは実験の後遺症で成長が他の子よりも遅いし、ヘルスア先生がかかりつけ医として診てくれるから安心だけど、やっぱり姉としてそこは心配なんだよ」
静紅「すごい、アリスがちゃんとお姉ちゃんしてる……」
アリス「ふうん、意外だった?」
静紅「意外というか、アリスって運動神経抜群だからさ、なんというか脳筋っぽいイメージがあって」
アリス「あはは、脳筋って。そういえば静紅にも妹さんがいたんだよね、再会できたってマル姉から聞いたけど」
静紅「そうなんだよ、時雨とやっと再会できて今は普通に過ごしてるよ」
アリス「お互い妹と長い時間会えていなかったんだね。なんか親近感湧くなあ」
静紅「あはは、不幸なことではあるけど嬉しいよね、親近感」
アリス「またお姉ちゃん繋がりとして、妹談義しようよ」
静紅「もちろん! またこんな機会があればしようね」




