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第1086頁 一致協力の森





 ハロウィンまであと二日。


 国土の南部にある巨大な森林のある一部。


 そこには[魔物最弱種]と呼ばれる全長五十センチメートルにも満たない小さな生物が生息している。


「うん、順調順調! 皆さん、この調子で製造ラインを固めていきましょう」


『ぽっぽぽ、ぽーぽ』


 小さな弾力のある身体を持つ、キノコ型の魔物キノコタン。


 その変異種である人型のルイス・キノコタンは来るハロウィンのため、日夜お菓子作りに勤しんでいた。


 数匹のキノコタンが力を合わせて運んでいるのは、この森林で採れた新鮮な小麦やら卵やら。


「こんにちは、ルイスさん」


「おや? ニンナさんとフランさんではありませんか、どうかされましたか?」


「突然お邪魔してすみません、実は─────」


 ニンナは森へやってきた理由と、お菓子作りを教えて欲しいという頼みをルイスに伝えた。


「なるほど、つまり特徴的なクッキーが作りたいということですね。私に講師が務まるか分かりませんが、お二人には色々恩もありますし! 良いでしょう、私ことルイスが美味しいクッキーの作り方を伝授します!」


「本当ですか、ありがとうございます! それはそうとルイスさん、何やら森中賑やかですけど……」


 ニンナは周囲を見渡し、忙しなく働くキノコタンに首を傾げる。


 その奥には木製の巨大なコンベアがあり、なんと素材を入れ続ける限り自動でクッキーが製造できるようになっていた。


 視界に収まらないほど大規模な工場っぽい様子にも驚いたが、何より魔物の中でも最弱なキノコタンがこれを作ったのだ、肩書など当てにならない。


「ファールさんが最近でぃーあいわい? というものにハマっていて、その応用で作ったんです。細かい設計図はシルフ様、木材はトレントのコルアさんに頂きました! 他にも材料は全てこの森で採れたものを使ってるんです」


 シルフはこの森林を総括する風の最上位精霊。


 コルアはルイスと同様、突然変異で人間の姿になることが可能なトレントという魔物だ。


「自給自足、地産地消は良いですね! 他の魔物さんとも仲良くされているようでよかったです」


「トレントが密猟者に乱獲される事件以降、この森に住む魔物は種族を越えて仲良くしようという動きが出てきたんです。その土地によって特産品が違いますから、互いに手を取り合うのは大切だと思うんです」


 ルイスは二人より数歩先を歩きながら、クッキーの製造ラインを紹介する。


「クッキーの美味しさ、それ即ちサクサク感です! 新鮮で適切な小麦粉を使用し、しっかり寝かせ、そして素早く作り上げる! これが大切ですよ」


「ふむふむ、サクサク感……」


「あと焼く際の温度にも注意ですね。まあそれはあとで説明するとして……」


「「?」」


 首を傾げるニンナとフランに、ルイスはニコニコと笑顔のまま金属板を取り出した。


「何事も彩りと多様性が重要です! それはクッキー作りにも言えます。ニンナさんはクッキーの型はどんなものを使っていますか?」


「クッキーの型、ですか……これといって特別なものは」


 自分の所持する調理器具は格安で買ったものばかりだしなあ、と思うニンナの横でフランが「はいはーい!」と手をあげる。


「ニンナのクッキーはマルや四角のものが多かったっス!」


「あっ、こらフラン! そんな私に芸がないみたいに言わないでください……」


「あはは、シンプルでもそれはそれで良いんですよ! でも今回はハロウィン用です、せっかくのお祭りですから、見た目も楽しいものにしたいですよね」


 ルイスは自作したペンで金属板に簡単な可愛らしい絵を描き、二人に見せた。


 描いたのは白い布が浮いたような見た目の典型的なゴーストだ。


「「おおー」」


「私も何度か試したのですが、金属を切るほどの力が無くて……だから今製造しているのは丸や四角などの簡単な形ばかりなんです。そこで二人の力を借りたいのですよ」


 というわけで、ハロウィン用のクッキーの型作りが始まった。


 ハロウィン当日まであまり時間がない、間に合えば良いのだが……。


連続投稿876日目!!


静紅「今日のあとがきはキノコタンのお姫様、ルイスをお招きしたよ!」


ルイス「お久しぶりです、シズクさん! 最近朝と夜が寒くなってきて、その度に森が雪に見舞われたあの事件を思い出します」


静紅「あの事件ももう随分昔のように感じるよ。キノコタンのみんなは元気にしてる?」


ルイス「おかげさまで! あれからキノコタン以外の魔物の皆の協力のおかげで、森がどんどん発展しているんです」


静紅「おお、凄いね! また行ってみたいよ」


ルイス「シズクさんたちがいらっしゃる前は、ただぼーっと生きているだけでしたが、森を発展させるという目的が出来てからは皆さん健康的に過ごしていますよ」


静紅「ああ、道とか柵とか作ったの私たちだったもんね。自分で言うのもあれだけどさ」


ルイス「いえいえ、そのおかげでここまで発展出来ましたから! やっぱり生きる上で目的ややりがいは持っておくべきですね」


静紅「そうだね、ルイスは森の発展以外に何かやりたいことはある?」


ルイス「そうですね……森から出たことがないキノコタンがほとんどですから、いつか皆さんと王都へ行ってみたいです!」


静紅「お姫様らしい素敵な夢だった!」


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