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第1078頁 活気で優雅な国

「お待たせ致しましたわ、パフィ特製超大盛りタコ飯ですわー!」


「「タコ飯!」」


 世界樹の一件から数時間後、王都へ帰ると城に残っていたメイドたちが宴会の準備をしてくれており、私たちのテンションはすぐにお祭りモードに切り替わった。


 ここで宴会の準備をしてくれている辺り、さすがはパフィのメイドたちだ。


「ウォルロ・マリンのスイレンさんから教わったものを試してみましたの、お味はどうでしょう?」


 小麦色に輝く米と一緒に炊き込まれた大粒のタコ……見ているだけでよだれが溢れてくるそのタコ飯を、私と六花は同時に口へ運ぶ。


「う、うう……」


「美味しい、美味しいよパフィ……故郷の味だよう……」


「おかわりはまだまだございますから、たあんと食べてくださいまし!」


 感動の涙を流していると、そこへ一人の男性がやってきた。


「ちなみにそのタコは今日の朝港で採れたものを使用している。気に入ってもらえて良かった」


「アルフレートさん! 商人さんたちは大丈夫だった?」


「ああ、魔物の攻撃を受けて瘴気に感染した者もいたが、まだまだ初期段階ですぐに治療が出来た。竜車が数台破壊されたが、そこは完全姫に複製してもらう予定だ」


 貿易港の管理人アルフレート。


 今回の戦いの影の功労者は間違いなく彼だろう。


 物資運搬の足から軍事品の手配まで、アルフレートが代表となって速やかに進めてくれた。


 彼が居なければここまでスムーズに作戦を進められなかっただろう。


「アルフレートには本当に世話になりましたわ、お礼は何が良いでしょう?」


「なに、昔のよしみで手を貸したまでだ、報酬目当てでやったわけではない」


「昔のよしみ?」


 そういえば出発前にアルフレートが到着した時も「久しぶりだな」的なことを言っていた。


「両親が亡くなり、そのまま完全姫が王様になった頃だったか。その挨拶として建設中の貿易港を訪れた時に知り合ったんだ」


「あのときは王の務めを果たせるか不安でしたけれど、歳の近いアルフレートが頑張っていると知って勇気を貰えたのですわ」


 なるほど、二人は歳の近い幼馴染のような関係だったんだ。


「ふう、ごちそうさま。すごく美味しかったよ!」


「お粗末様ですわ、宴会の食べ物はまだまだ残っていますから、満足いくまで食べてくださいまし!」


「あはは、ありがとう。……あれ、そういえば時雨は?」


「英雄シグレ様なら、人目につかないところが良いと仰られていたので……」


 パフィはそっと腕を上げると、王城の庭から見える一番近い塔を指差した。



・・・・・



「時雨?」


「! ちょ、ちょっと待って……!」


 月が輝く夜空の下、時雨はあぐらをかいてフレイマギアを抱えていた。


 世界樹の転生と戦線の勝利による宴の喧騒と、その景色を静かにその身に受けながら。


「ごめん、ひょっとして泣いてた……?」


「な、泣いてなんか……!」


 だったら申し訳ないな、出直すか?


 改めて謝るよりも先に、時雨は立ち上がって私の手を掴んだ。


「……うそ、泣いてた……こういう時は一人で悩むより、誰かと共有した方がいいってポン子が昔言ってた。だから聞いてくれる?」


「ポン子ってオニャンコポンのこと? ……分かった、時雨の頼みなら何だって聞くよ。せっかく再会できたんだもん、姉妹ならそういう悩みも分かち合わなきゃ」


 私と時雨は塔の淵に腰をかけて、夜の街並みを眺める。


 時雨は言葉に迷いながらも、ゆっくりとその悩みを語り出した。


連続投稿868日目です!!

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