第16-2頁 出張!異世界言語教室
「んんー、この形は『ち』の記号だよね?」
8畳ほどの広さの部屋の隅っこに置かれた机に、備え付けのランプに火をともして現在約10年ぶりの勉強中だ。
運がいいのか、この宿屋が凄いのか分からないが、この部屋には羽根ペンのようなものや、よくホテルに置いてある感想を書く用のノートみたいな紙が置いてあった。
ほんと、この宿屋凄いな! 宿ログがあったら星5をあげたいぐらい!
ま、スマホがなければ宿ログもあるわけないんだけど。
「静紅さん、またほかのこと考えてたんですか?」
不安そうな顔をして私の視界に入ってくる六花。
「ご、ごめんってー、でもその変わりになんだか読めそうな気がしてきたよ!」
これでも一応日本人で、[ひらがな][カタカナ][漢字][数字][英語]などなど、たくさんの文字を習ってきたので意外と覚えるのに苦労はしなそうだ。
「へぇー? ほんとにそうですか?? なら、この単語を読んでみてください。」
そう言いながら六花が指さした文を目を凝らして読む。
「えっと、この形は[ひ]。これは、[か]。それで、これは[り]。ってことは光!」
この世界の文字には着く漢字のようなものは無く、主にひらがなで書いてあるみたいな感じ。なので元の世界と同じく、50字覚えたら何とか大丈夫らしい。
まだまだ簡単な単語しか読めないが、確実に進歩はしている。
私は何気なく外を見て驚いた。
「うわ、もう朝じゃん! チェックアウトもあるし、そろそろ出発の準備しないと」
窓の外を見ると勉強に集中しすぎたのか、既に陽は昇り、行き交う人通りも多くなっていた。
「そうですね。じゃ、ボクは部屋の片付けをしておくので静紅さんは、机の片付けをよろしくお願いします」
その後、何事もなく部屋の整頓を終えてチェックアウトをした。




