第14-2 新たな旅路
雑木林を抜け、農村の広場に戻ると、そこには地面に倒れたナーシャがいた。
「あっ、お姉ちゃん……」
「な、ナーシャ!?ちょっと大丈夫!? もー、みんなしてボロボロじゃん!」
私はポーチから回復薬が入った瓶を取り出して、栓のコルクをぽんっと抜いた。
「六花、ナーシャ。半分ずつだけど飲んで」
私はそう言って、回復薬の蓋を回して2人の口へ運んだ。
ごくごくと2人は瓶の中に入った緑の液体を飲んで、息を吐く。
「ふぅ……ありがとうございます。今度はボクが助けられちゃいましたね」
起き上がった六花は私の顔を見るとすぐに礼を言った。
「すごい効き目の回復薬だね、相当な良質な薬草が使われてるんじゃない?」
ナーシャは甘ったるい味が広がった口の中を気にしながら、私の持っていた瓶のラベルを眺めた。
「ねぇねぇ。これって最近出たキノコタン・ポーションだよね? お姉ちゃん達、なんでこんなもの持ってるの?」
そういえば蜜柑が人間用にキノコタンの森で採取した薬草を加工して、人間の街に売っているとか言ってたな。
何でも森の発展には資金が必要で、収入源を増やしたかったのだとか。
というか、そこまで要領良いなら社畜時代にも頑張ってくれよ。
「キノコタンの森ブランドのキノコタンポーションって、超効果良いんだけど高いんだよ。王都でも大人気なんだけど、なかなか高くて買えないんだ……」
「そっか……凄いんだなぁ。既に何本も飲んじゃったよ」
私の頭に大金がよぎる。が、振り払って無理やり忘れた。
「大丈夫ですよ静紅さん! そのおかげで今を生きてるんです! 使えるものは使いましょうよー!」
「そ、そうだね!」
貰った物だし、気にしない気にしない!
・・・・・
あれだけ大事だった今回の一見だが、幸いにも住民への被害はゼロで、私達の体力が回復できるように農村の人達が色々してくれた。
流石に長距離歩いて疲れたし、村の医務室のようなところで数時間ほど寝かせてもらったのだ。
「おーーい! そろそろ出発するよ!」
ナーシャが竜車の運転席で手を振った。
「はいはい!今行くよ! それじゃ、村長さん。今後は魔物退治にも力を入れた発展をお願いしますね。 いつも私たちのような人がいるとは限りませんし…」
「分かりました。あなた達のご恩は決して忘れません……本当にありがとう」
かなりご年配の村長だが、その返事を聞いて安心した。
「よし、それじゃ行こっか!」
「はい、静紅さんっ!」
竜車の荷台への階段で微笑みあって村の人達に手を振る。
雑木林奥で討伐した[ステップ・ボア=ロード]を倒したお礼で、農村から送られた白いマントが六花の背中で揺れた。
意外と言うか、六花はこのマントをとても気に入っている。六花曰く「オシャレです!」なのだとか。
六花のオシャレは全くわからん。
「それじゃあ王都近郊行き急速竜車、出発しまーす!」
パチンと竜に鞭が打たれると、竜車が動き出した。
ほんとに馬車そっくりだな。この世界に馬車ってあるのかな?
来た時のように、運転席には1人しか乗れないので、荷台に六花と私で座っている。
「あ、六花、目の調子はどう?」
あの一件から1日経ったが、あんなに強いビームを撃ったのだから反動もそれなりのはずだ。
「はい、今のところは大丈夫です。目の異変もいつの間にかなくなっていましたし……」
言われてみれば、今の両眼はしっかりと青色だ。
「なんだったのかな……六花のさらなる力!みたいな?」
「あはは、そんなことあったらいいんですけどね! ……でも、これからも続くなら調べないといけませんね」
この六花の異変が、今後重大な事件に繋がっているとは、今の私たちには知る由もなかった。
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