第9ー2頁 竜車に乗ると言うこと
国道を進む静紅達に牙を向けたのは…超巨大ムカデ。
大きすぎるそれは静紅を地面ごと飲み込もうと空高く跳ね、急降下中に大顎を開いた。
遥か上空にある巨大な頭は私達を飲み込もうとするように…地面をも喰らい尽くすような勢いで上空から一気に降ってきた。
そこへ、一閃の炎光がムカデの頭に直撃した。
凄まじい魔力がぶつけられたムカデは、大きく後ろに仰け反り、地面に強くその巨体を打ち付けた。
もちろんムカデが倒れて発生した地震にも驚いたが、私達の意識は完全に巨大ムカデを倒した火球の主に向いていた
そもそも、生まれて初めて魔法という物を見たので呆気にとられていたのは事実。
耳を澄ますと、ゴロゴロゴロゴロと言う竜車の音が聞こえて来ることに気づく。
「おーーい!お姉ちゃん達無事〜!?」
巨大ムカデの反対側で、少し前に出会った竜車の少女の声が聞こえてきた。が、ほとんど目と鼻の先で、あんな巨大な物を見た私たちは、やっぱりその場から動くことは出来なかった。
「あ、居た。怪我はない?お姉ちゃん達、すごい顔色悪いよ?大丈夫?」
竜車の運転席から飛び降りた少女は、静紅達を覗き込むようにして、心配した。
「う、うん…大丈夫だよ!」
「大丈夫です、ちょっとチビりそうになっただけですから」
六花のチビりそうになった、に過剰に反応してしまった私だが、頭を振って忘れようとする。
「そっか!なら良かったよ。今日この草原は危険日だったことを忘れてました!」
「危険日?なんか違うの?」
「危険日を知らないの!?ほら、その日は魔物が格段に強くなったり、その日にしか現れない巨大な魔物が現れたりするじゃん!」
ぐいっと顔を近ずけて説明した竜車の少女の話は非常に興味深かった。
少女の話を聞くところ、
危険日と言うのは、その土地に生息する魔物が凶暴化して強くなったり、先程の巨大ムカデのような巨大な魔物が出現するようだ。
確かに、月に何回かキノコタン達が活発化した時期があったような…。
「あぁ〜、あれね〜うんうん。分かるよ?」
私は嘘をつくのが苦手だ。そして今回も例外ではない。
「あ…やっぱり知らないの?」
いかにも悪女のようなニヤつきで少女がこちらを見る。本当に子供なのか?そもそも年齢はいくつなんだ?
「ボクたち、南西の端に住んでいたんです。なので、この国のことはよく知らなくて…」
ナイスフォロー六花!やっぱり気が利くよ!
「なるほど!そーゆーことなんだね!
さてっと、そろそろ行こう?[こいつ]もいつ起きるかわからないし。運転席は狭いから無理だけど、後ろの荷台に座ってて。野宿用の毛布とかクッションがあるからゆったり出来ると思うよ」
少女が竜車の運転席に乗って、静紅達に手招きをした。
少女の言った[こいつ]と言うのは、今でも目をグルグル回して気絶している大ムカデの事だろう。
静紅と六花は、恐る恐る竜車の荷台に乗り込んだ。
荷台と言っても、大型トラックのような[蓋の空いた箱]の形ではなく、しっかりと白い布で覆われた[小さなキャンプテント]のような形をしている。
外から見えなかった物も、中に入ることで確認できた。
噛み砕いて言えば、馬車の後ろの車部分だ。
今までの少女の話を聞くと、少女は運送業のようなものを生業としているようだ。
それは荷台の中を見るだけで分かる。
住所らしき物が書かれた紙が貼ってある木箱。
何か石のような物が入った麻袋。
中身がむき出しになった、果物籠。
のように、明らかに配達物が置かれた荷台に、静紅達は座り心地の良いクッションを見つけて座った。
「ふぅ…とりあえず何とかなったね」
「そうですね、このまま王都の近くまで連れて行ってもらいましょうか!」
ガタンゴトンと揺られる竜車の中、静紅と六花は王都がある方向を見ながら、リラックスをして話した。
このまま何事もなく王都の近くまで到着すればいいのだが…。




