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【第7話 事件の匂い】

「いらっしゃーい!『デリシャスデリバリー』へようこそー!今日はピーマンとベーコン、極めつけはチーズ!焼き立てのトマトピザだよー!」

 ボクが声を張り上げると、自然と人の視線がボクと、湯気が立って宝石のように輝く赤いピザを乗せた、自転車の後ろの荷台に集まる。

 遠巻きに見る人もいれば、迷いなくこちらに向かってくる人もいるが、皆少しはボクに興味を持ってくれているようで、とても嬉しい。


 ボクは昔からそうだ。

 誰かから注目され、興味を持ってもらえるのがとても嬉しくて、楽しくて、その快感を得るために明るく元気に振る舞い、大声を出す。

 そうすれば、皆ボクが気になって見る。

 その目には色々な感情が混ざっているが。

 それでもいい、ボクが注目されているのなら。


「もしも~し、ルリさ~ん?」


「わあっ!……あ、ファルファさん。こんにちは!今日も来てくれて嬉しいです!」

 この人――ルビーのように赤く輝くポニーテールを揺らし、アメシストの目をゆっくり瞬いている、ボクより幾つか上の女性だ――は、いつもボクの料理を買って行ってくれる人だ。

「こんにちは~。私、ここの料理が好きなんですよ~!だからついつい、来てしまうんですよね~」

 まったりしたその口調に、ボクまで釣られそうだ。

「わぁ、ありがと~!すっごく嬉しい!」

 思わず笑顔をこぼすと、ファルファさんも一緒になって笑い出した。

「ほんっと、ルリさんって可愛いですよね~」

「か、可愛い!?ボク、そんなこと初めて言われたかもです!ありがとうございます~!」

 それからしばらく雑談をし、一区切りつくとファルファさんはピザを買って帰った。

 ファルファさんは、ボクの大切なお客さん……というより、大切な女友達だと思っている。

 ボクにはない、ほんわかとした雰囲気の彼女の背後には、花とキラキラエフェクトなオーラが見える。

 もちろん実際にあるわけではなく、ボクのひいき目なのか、フィルターがかかっているのか、おそらくどちらかだろう。



 お客さんがある程度帰り、ピザも売り切れたのでボクは店を閉めて自転車に乗って帰ろうと街を走る。

 街を抜けて森を抜けて、ボクの住む家に着く。

「~♪」

 森の舗装されたレンガ道を、鼻歌を歌いながら自転車で走っていると、不意に複数の声が聞こえた。

 ひとつは怒鳴り声、ひとつは怯える声……そんな感じだ。

 これは……事件の匂いがする……!

 ボクは全力で自転車を漕ぎ、その声の元に走る。

「はぁ、はぁ……」

 なんとか息を整えながらその場所に着くと、金髪のチャラそうな男と、赤茶髪の大人しそうな女がいた。

「ち、ちょっと!なにやってるんですか!?」

 そう叫ぶと、女は安心した表情を向け、男は恨めしげな表情をボクに向けてきた。

 いくら注目を浴びるのが好きなボクと言えど、暗い表情を向けられるのは得意ではない。

 少々怯えてしまったが、なんとか男を睨み続けることができた。

 すると男はボクにジリジリ近付いてきた。

 後ずさって男と距離を取るが、しかしここは森だ。

 木にぶつかって、後ろに下がれなくなった。

 男はまだ近づいてくる。

「……っ」

 ダメだと分かっていたが、恐怖から目をぎゅっと閉じてしまった。

 あぁ、ボクはここで殺されるんだ――。

 そう、どこか他人事に思った。

 さらに男はボクに近付くと――。

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