【第3話 拾った狼は】
……状況を確認しましょう。
わたくしは今日、帰り道で狼を拾いました。
その狼を家に連れて帰り、血を飲ませたら実は人だったという……。
「ほら、これでどうだ」
そう言うと狼(だった者)は指をパチン、と鳴らした。
すると、あら不思議!先の狼姿に戻ったではありませんか!
体をブルリと震わせ、再び人に戻った彼は、少し得意顔でした。……何故でしょう、無性に殴りたくなる得意顔です。
「これが俺――魔王の力だ。今となってはすっかり衰えて、最盛期の10分の1にも満たないがな」
なんと、彼が魔王とな。驚き桃の木山椒の木です。
……え?
「ま、魔王……っ!?」
そう叫ぶと、魔王はニヤリと笑い、深く頷いた。
そして、爆弾を投下しました。
「貴様……本当の姿ではないだろう?さぁ、真の姿を俺に見せてみろ」
バ レ て ま し た。
さすが魔王というべきか、すぐにバレました。……当たり前ですかね。
嫌々「……解除」と呟き、私に戻った。
「ほぅ……貴様、やはり魔女か」
魔王は目を見張っている。……それはそうだ、変化の魔法を使えるのは高位な魔女だけといわれているのだから。
「でも言っておくけど、特段高位な魔女ってわけじゃないわよ。好きで勉強してたらいつの間にか高位魔女になってただけだもの」
だって、ひとりでいる間暇だったから。
そう言うと魔王は「……人とは不思議なものだな」と言った。
「普通、ひとりでは生きていけないのだろう?なのに何故貴様はひとりでも生きていけるんだ?」
何故、と聞かれても答えようがない。
「魔女だもの。もともと他の人間からは忌み嫌われてんのよ。だからひとりじゃないと生きていけないの。他の人間と干渉すれば、出ていけって言われて石を投げられるのよ」
「……」
魔王は絶句していた。
「……ごめんなさい、少し退屈な話をしてしまったわね。ところで――」
「すごいな」
「え?」
「今まで俺は色々な人間を見てきた。己のために友を売る人間、友を助けるために自ら命を差し出すもの、本当に色々だった。彼らは皆、誰か友なり想い人なりがいた。ひとりでは生きていけないようだった。だが貴様は違う。ひとりでも強かに生きている」
そして、今まで固まったままだった表情を幾分か和らげて私の方を向いた。
「……今まで、よく頑張ってきたな」
(……どうしよう、途方もなく嬉しい。)
相手が魔王であろうと関係なく、純粋に嬉しい、誰かから真っ直ぐに言葉を告げられたことが。
「……ありがと」
「む?」
「私の事、悪く言わないでくれて。そんな風に良い事言われたの初めてかも。凄く嬉しいわ」
そう告げれば、魔王は驚いたように息をのみ、そして大笑いした……高笑いというべきか。
「本当に……貴様のような人間は初めてだ。貴様と共に暮らすのも面白いかもしれんな」
「……え?」
「この俺と共に暮らさんか?」




