【第11話 ミズキの思い】
わたくしは、外から聞こえてくるサラサラとした雨の音で目が覚めました。
今日は憂鬱なスタートなので少し残念です。
5分ほどゴロゴロし、ようやく起き上がると机に向かいました。
毎朝、コップ一杯のミルクを飲むのがわたくしの日課なのです。
すると、いつもなら何も無いはずの机に、1枚の紙がありました。
なんだろうと思ってその紙を見てみれば……。
「わたくしが……わたくしではない?」
わたくし以外にほかの人格がいると、そのようなことが書かれていたのです。
それに加え、わたくしがどうしたいかを問う話もありました。
「どうしたいも何もないですよ……っ、わたくし、ようやく堂々と友人と呼べる人が出来たのに……!また会うのが楽しみで毎日生きていたのに……なのに、もうわたくしは用済みだからと……?ふざけないでください!」
わたくしは、何より先に怒りが湧きました。
なぜ、ようやくミオという大切な人ができたのに、彼女を手放さねばならないのですか……!
なんて自分勝手なのでしょうか、メシアとやらは。
わたくしは机にダンッ!と拳を叩きつけ、どこにいるかも分からない他のわたくし、そしてメシアに向け、寂しく電気の灯る天井に睨みつけました。
「……でも、」
案外、怒りばかりが沸き立つわけではありません。
「それがもし、貴女が望むことならば。それがわたくしの運命だというのなら。……わたくしは、潔く受け入れようと、そう思います。」
『……っ、分かったわ、ありがとう、ミズキ……っ!』
涙で濡れ、しゃくりを上げながらの声が聞こえた気がしましたが、寝惚けているだけでしょう。
この事実さえ、ただの夢であって欲しいです。
わたくしはわたくし、だからそれ以外の存在は要らないと、そう思ってしまいました。
わたくしはいけない子ですね……。
今までの友人すら捨て、お客さんも捨て、楽しい暮らしをも捨ててもいいと、うっすらとでも思ってしまったのですから。
魔法で作った花を持って街に出て、たくさん売ります。
今日もわたくしの友人であるミオはやって来て、小一時間ほど迷い……というより談笑し、ようやく3本ほどの花を手に取って買って帰って行きました。
ミオ曰く、「この花はほかの花より枯れにくい(気がする)から先祖の墓参りやら何やらで使いやすい」とのことでした。
魔女冥利に尽きる、とはまさにこのことですね。
魔力が加わっている分、なおさら枯れにくくなっているのかもしれないです。
家に帰って、ふと思いました。
もし、この当たり前の生活がもう送れないのだとしたら、わたくしの周りの人間はどうなるのでしょうか?
わたくしがいなくなって悲しい、そんなことを思う人がたくさんいるのでしょうか……そんな大層な人間ではないことくらい、わたくしが一番よく分かっています。
でも……少なくともひとりくらい、欠片ほどでもいい。
わたくしのことを覚えていて、どうしたのだろうと、会いたい、寂しいと、そう思って欲しいと願うのは我儘でしょうか?
いくらメシアのレプリカ、贋作、偽物だろうと、わたくしはわたくしの人生を生きてきました。
その中で出会ったごく一部、ごく僅か、たったひとりでいい。
そんな人間がいて欲しいものだと、わたくしは心の底から思いました。




