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【第10話 アリーシアの思い】

「んむぅ……もう朝……?」

 鳥が囀るのが聞こえ、わたしは目を覚ました。

「メガネメガネ……って、何でしょう、この紙は……」

 メガネを探して机の上をさまよっていると、紙に手が触れた感覚がした。

 その紙は幾つかに折り畳まれており、アリーシア様、と書かれていた。

 ディアなら何か知っているかもしれない、と思い、わたしはディアの元へ行った。


「あぁ、それは……読めば分かる」

 ディアは何度聞いてもそれしか言わなかった。

 これ、絶対何か知っている感じなのに。

 でも怪しいものではないと分かったので、しかしわたしにとっては怪しいものに変わりはないので、ややおっかなびっくり紙を開け、その手紙を読み進めた。


「え……?わたしが、わたしではない……?」

 この手紙には、わたしやほかの人格の人達が眠っている間だけ、主人格のメシアという本体が動いているのだということ。気付けば着替え終わっていたり、意識が飛んでいたりしていたのは、メシアが原因ということ。

 そして――。


「わたしが、どうしたいか?」


『貴女はどうしたい?できるだけ意見を尊重したいと思っている。私が嫌ならそう言って。ほかの人格が嫌ならそう言って。貴女は、どうしたいの?』


 ……わたしは、どうしたいのだろう。

 そんなこと急に言われても、というのが本心だ。

 だが、何より先に思ったのは……。

 目に水の膜が張り、視界がぼやける。

「わたし……っ、やっとお客さんと、打ち解けられて、楽しくなってきたのに……なのに、そんなのってないですよ……っ!!」

 心の底から叫ぶ。

 嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ……嫌だ!!

 ようやく得た常連さんを差し置いてわたしがどこかに消えるなんて嫌、絶対に嫌だ……っ!

 目から溢れた水が床に、壁に、ボタボタと滴る。

 それでも構わず、私は拒絶し続ける。

「……お願い、わたしは貴女がどうなろうと構わない、だから…っ」


『……分かった、ありがとう、アリーシア』


 そんな声が聞こえた気がした。



 それからは至っていつもの日常だった。

 薬を作って売って、お客さんと話して。

 そう、これこそがわたしの生活。

 世界で1番幸福だとは言い難いが、しかしわたしからすれば順風満帆な、望んでいた生活だ。

 わたしは、この生活を手放したくない。

 例えそれがメシアという別のわたしによって壊されそうになっても、私は抗い続ける。

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