1ー20 裏の話
よろしくお願いします
3話連続です。
契約の後、大司教、伯爵、男爵、商会長などが泊まる宿へとトートスに案内されました。
この宿はトートスが経営している高級宿で、自分を逃さない為に監視させるのでしょう。
自分としては嫌な奴を演じて相手側を挑発し、故意に内容に穴のある契約文を作って自分を暗殺する事を誘発させて返り討ちにするパターンもありました。
しかしトートスが大司教や伯爵達と同じ宿に案内したという事は、きちんと金を払う方を選択したみたいです。
なので自分は部屋に案内されてミケやトモエと3人だけになってからスグに向こうの世界へと向かい、時間が過ぎるまで潜伏している事にしました。
今は向こう側の世界でのんびりと風呂に浸かっています。
そして湯船の中で、ぼんやりと考えます『予定通りに進んでいる』と。
サラリーマンの時もそうだったけど順調に進んでいる計画は充実感を覚えます。まあ、やってる事は政・官・財の大物達との悪巧みの談合みたいなモノですけど。
政の部分の宰相派と伯爵。
その伯爵は今回の計画以降、子爵家の跡目に蟄居した長男の代わりに子爵の次男を後押しする。
次男は見返りとして伯爵一族の者を長女へと婿入りさせ、子爵サイドの自分達への悪意や干渉をブロックする。
そして折を見てマナカ村や村の周りの町や村を含んだ場所を領地とし、婿を準男爵家として独立させる。
これによりライバルの子爵家の力を削ぐだけでは無く、マナカ村というオイシイ場所を領地とする事が出来るのです。
もう一方の宰相派そして教会の利益はというと、国や教会の式典や色々な業務に使う誓紙の印刷をする事で利益になります。
特級誓紙で云うと、村からヴィラント商会には1枚3000セニ(30万)で売る事になっています。
ヴィラント商会は教会騎士団に輸送費を払い王都まで運んでもらう。
誓紙を受け取ったヴィラント商会は、宰相やハレイヤ大司教と深い繋がりが有る印刷工房に一旦6000セニで売る。
工房で国や教会で使用するのに相応しい様々な模様を印刷された誓紙をヴィラント商会が1万セニで買い戻す。
そして王国や教会に1万セニ以上で売るのです。濡れ手に粟のボロイ商売というヤツですね。
誓紙の有用性からも式典や契約以外にも映像を撮る事が出来る事から、軍事方面でも相当な量の売れ行きが見込め、そして国内だけでは無く国外にも輸出され出し大きな利益になる筈です。
そして、村がある意味一番幸運だったかもしれません。
きっと、藁をもすがる思いで自分の様な怪しい人間に相談したのだと思います。
だが、それによってバカ孫を排除出来たうえに新たな特産品まで増えた。そして村自体の収益金も数倍になる見込みで、将来的には新たな領主の領土へと組み込まれ開拓や開発が大きく進む事が決定的です。
そう、奇跡が起きたと言っても良いでしょう。
もちろん自分の利益もあります。村が誓紙をヴィラント商会に売る金額の2割がマージンとして自分の懐に入ってくる。
これからの誓紙の需要を考えればウハウハです。地球では絶対に成れないと思っていた勝ち組みに成っちゃいます。個人バブル到来の予感ですね。
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約束の日、時間は16時を過ぎた頃にミケやトモエと一緒に異世界へと戻りました。
誰にも気付かれずに戻った場所はトートスが経営する高級宿の正門。
そして正面玄関までゆっくり歩いて進んでいると、宿の中からは喧騒が聞こえ扉が開かれました。開けられた扉からは複数の人間が出て来たのですが先頭に居たのは
「き、貴様!今まで何処に居た!! 勝手に消えて契約はどうするのだ! もう無効だ、無効だぞ!!誓紙取引きする以外の契約内容は全て無効だッ!!」
と、目を血走らせ唾を飛ばしながら吼えるセルビア商会商会長のトートス セルビアでした。
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