1ー19 契約、そして締結認証
よろしくお願いします。連続投稿です。
誓紙の取り扱いについての話し合いはヤマ場を迎えていた。
子爵側は今回の騒動で誓紙に掛ける特別税を本来の20%から10%にする事に同意した。
また、村の税を本年度は今迄通り60万セニ(6000万)で、来年度より100万セニ(1億)にする事にも同意した。この金額は誓紙で潤う事が決定的なマナカ村にとってはかなり優遇された金額でもある。
子爵領外での誓紙の扱いはヴィラント商会に一任され、子爵領から王都のヴィラント商会への輸送は教会騎士団が受け持つ事も決められた。
誓紙の村からの売値も決まった。売値の内2割が自分の懐に入って来ることになった。
後は誓紙を誰がマナカ村から買い取るかと云うことだけだ。
そして、現在その権利は自分が持ちヒゲダンディーに誓紙を売る事になってる、と云う話は子爵サイドに伝わっている。
基本的に貴族の領内で作られた特別税などを掛けられるよう品は、本来その貴族のお抱え商人が扱うのが暗黙のルールである。
たとえ大商会や大物貴族と言えどもそのルールを侵す事には躊躇を覚える。もし侵せば自分達にブーメランで返って来るからだ。
しかし今回の場合は、他所の国の旅人と云う事になっている自分が技術提供し開発したお陰という側面が強く、自領で有っても強気交渉には出れないのだ。
そして子爵側、特にセルビア商会長のトートスは今後の展望と利益を考えれば、何としても喰い込みたい案件であり、先程からヴィラント商会に対して売値を徐々に下げて交渉をしている。どうやらヴィラント商会サイドから切り崩して、外堀を埋めてから交渉しようと企んでいるらしい。無駄ではあるが…
ここからの交渉では相手を挑発しておく必要もあるので、心の中で装着しているスーツとネクタイを外してチンピラモードで対応する事にした。心のコスプレだ。
「トートスさんよぉ、俺はロス(ヒゲダンディー)から開発資金を借りてんのよ。それなのにさぁ~後からしゃしゃり出て来たヤツに、何で利益をくれてやんねぇとイケネェのよ?」
「それは、教か———」
「御託はイイんだよ、…どっかのバカと悪巧みして、村のモンに迷惑掛けたのはアンタ等なんだからさぁ、アンタは俺等にどんな誠意を見せてくれるかって云う話な訳よ?まあ、誠意の重さが軽いようじゃ~話は御破算だけどなぁ?」
「……いくら用意すれば誓紙を扱わしてくれるのだ?…」
「へへ、そうだなぁ~、こんな事になっちまってロスには倍で返さないとイケナイからなぁ~?…う~~ん、ロスへ200と俺への謝礼金が200。それとアンタから売値の2割が確実に入って来る保証が無ぇから保証金で300ってトコだな。合わせて700万セニ(7億)だ、今スグこの場で払ってくれれば扱わせてやるゼ♡(ドヤ~)」
「………………………」
いくら魔法の袋があったとしても商人で金貨3500枚も持ち歩くバカはいない。持って無いのを承知で言ってるのですよ。そして、テーブルの下で相手方に見えないように隣の村長の足をツンと突きます。すると村長が…
「…ナツオ殿、すみませんがトートス殿と取引する事を考えて頂けませんか? 今回の事は私も思う所が有りますが、セルビア商会さんとは今迄付き合ってきた縁もありますし…それに、今後は適正な価格でキチンと村との取引をしてくれると思うのですよ…」
「も、もちろん適正価格で取引させてもらいましょう。マナカ村は大切なお客様ですからな!」
村長がトートスの方をチラリと見て話せば、トートスは慌てて返す。自分はもう一度村長の足をツン。
「…こう申しておりますし、お願い出来ませんかナツオ殿?」
「………ん~~、…ま、村長がそう言うんなら取引してやってもいいんだけどよぉ~…トートスさんよぉ、村長に感謝しとけよ?……じゃあ明日の午後3つの鐘(15時)までに700万セニを持って来たら取引してやんよっ。」
「わかりました。明日700万セニを必ず持って行きましょう」
「…俺はアンタ達を信用した訳じゃあ無えからよ、口約束じゃあなぁ~? ま、せっかく誓紙を扱ってんだ、誓紙を使って契約書作るからサインしてもらうゼ?…おっと、そこにいる貴族の坊っちゃんも今回の一番重要な関係者だから保証人としてサインはして貰うけどよ!」
バカ孫は顔を顰めて『なぜ僕が…』などと言ってたけど子爵家家宰に耳打ちされサインする事になった。
しかし自分で演じていて何だけど、自分って凄く嫌な奴ですね。もしサラリーマン時代にこんなのが商談に来てたら部下に丸投げしてますよ。Yes、チンピラ Noタッチ!って感じですよ、自分は中間管理職ですからね。
そしてトートスとバカ孫は、自分が用意した普通の特級誓紙とは違う特別な誓紙にサインをした。
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契約書
ナツオ モリワキ(以降甲と呼称)はトートス セルビア(以降乙と呼称)
より700万セニをを受け取り次第、誓紙取引の契約書に必ずサインする。
乙は甲に対し△月○日、午後3つの鐘迄に700万セニを必ず現金で本人が
手渡しで払わなければならない。
払われなければ誓紙取引契約は無効となり乙は甲に対し、
乙の全ての財産と身命を差し出す。
保証人、グレイマン-ザラス-ビクタール(以降柄と呼称)は全面的に
乙の保証をする事とする。
乙が契約不履行になった場合は柄も全ての財産と身命を差し出す。
この契約は締結後、フェリアル神と精霊王によって認められ、
この契約を侵す者はフェリアル神と精霊王の名の下に全てを断罪される。
△月□日
トートス セルビア
グレイマン-ザラス-ビクタール
契約制作者 ナツオ モリワキ
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誓紙の3枚目に魔力を流し『締結』と唱えて誓紙が碧き炎に包まれ焼失する。そして
『締結認証』
この空間に精霊の声が響いた。
後は明日の午後3つの鐘が過ぎるまで向こうの世界に隠れていればいい。残りは明日の最後の仕上げだけだ。
お読み頂きありがとうございます。
あと3話くらいで1章が終了する予定です。
2、3日更新出来ないかもしれません、ゴメンなさい。




