1ー16 New 特産品
よろしくお願いします
ヒゲダンディーは必ずこの話に乗る自信が自分にはあります。その為の布石は既にしてあります。
前回会った時に見せたネックレスをヒゲダンディーに預けてあるのもその1つです。
この中世の様な異世界。魔法があるのでどの様な技術進化しているかは詳しくは解りませんが、少なくともあのネックレスはかなりの価値があるようです。ヒゲダンディーも20万セニ(2000万円)以上の価値があると太鼓判を押してくれました。
そんなネックレスを
『次回お会いする時に自分達の商品の話を聞いて頂ければ、その場でそのネックレスは差し上げます。それまではお預かりください。』
と、預けてあるのです。話を聞くだけで高価なネックレスが貰えるとなれば必ず会ってくれるはず。また、大商会の支店長という立場からネコババする可能性も少ない。
そして前回話してヒゲダンディー個人の問題として解った事もあります。
おそらくヒゲダンディーは商会本部から左遷されてこのザラス支店に来ているという事です。なぜ左遷されたかは解りませんが、本人には返り咲いてやろうとする意思が有るのが会話から感じられました。
しかし、それと同時にこの街での商売が、余り上手くいっていない焦りみたいなものも感じました。
それについては村長やミーメちゃんから聞いていた通り、このビクタール子爵領では、子爵のバカ孫サイドのセルビア商会が子爵一族との太いパイプが有るので大きな力を持っている様です。
日本でもそうでしたが、大手が地方に参入しても地域密着型の意識が強い地域だと必ず成功するとは限らないという事ですね。
故にヒゲダンディーは高価なネックレスをポンと預ける自分が持って来る話を、商会本部に返り咲く為の足掛かりの商機として捉えてくれると睨んでいるのです。
そして村の新しい特産品は紙です。
もちろんただの紙ではありません。精霊魔法が組み込まれた特別な3枚綴りの誓紙です。
それまで村の特産品だった魔法を付与し易い特別なエルフ布。その素材で有るフェムラの木、森鬼蜘蛛の糸、そして村の奥にある精霊の泉に生息するスケルウォータースライムの身。これらを使い地球の技術を応用して誓紙を作ったのです。
もちろん唯の紙ですと真似されてしまうので、この世界では絶対に真似が出来ない精霊魔法を組み込みました。
それはこの世界の神や各精霊王にミケが直接話をつけて他に使用を禁じた精霊魔法。
ミケやトモエはああ見えて神の使いです。そして地球は第8階位の世界で、この異世界であるフェリアルは第6階位の世界だったようです。
地球の方が2つも格上で、なんとミケはこの世界の神と同格だったのです。
すなわち、数々のグループを形成する大企業の本社課長であるミケが、地方にある小さな営業所所長クラスであるこの世界のフェリアル神や、係長や主任クラスである各精霊達に、相手側の利益も伴ったおはなしをしたのだ。
…たとえ話をしたシチュエーションが、フェリアル神がオロオロし精霊王達が土下座していて、神話で語る事が出来ない黒歴史状況であっても。
…後に火、水、風、土、光、闇の精霊王達は皆、口を揃えて
『Noと言ったら待遇的、肉体的に首が飛ぶ姿を幻視した。猫ヤバイ。』と語ったという。
ちなみにフェリアル神はオロオロしていたものの、ちゃっかりとミケに高級マタタビ酒を送り機嫌を取っていたようだ。
誓紙には、普通、上級、特級の3種類がある。
基本的使い方は共通で、特殊なインクを使い3枚綴りの誓紙の1枚目に文章やサインを書き込むと2枚目と3枚目にも複写される。
そして1枚目2枚目を外して3枚目に触れ、少しの魔力を流しながら『締結』と唱えると1枚目と2枚目には薄く精霊魔法の魔術紋が表れ、3枚目は温度の無い碧い炎が着いて焼失する。
すると『締結認証』という声が誓紙が焼失した辺りから聞こえてくるのだ。ちなみに声は一般精霊達です。
もちろんこの誓紙の機能はこれだけでは無い。1枚目や2枚目に少量の魔力を流すとある現象が起こるのだ。
普通の誓紙は『この誓紙に書かれた内容は正式な物である事を全ての精霊が認める。』という声がが聞こえてくる。
上級の誓紙は、普通の誓紙で聞こえてくる言葉の前に、書かれた内容を全て読み上げてくれる。
そして特級の誓紙は、上級の誓紙と同じ様に読み上げてくれるうえに、追加の魔力を流すと『締結』をした時の状況を音声付きの映像で映し出してくれるのです。
精霊の負担が多いような気がしますが、精霊も人から正式にリスクが少ない状況で、魔力を分けて貰えるのでギブアンドテイクが成り立つのです。
このように優れた誓紙は、主に契約や式典などに多くの需要が見込め、ターゲットは商会、教会、貴族、そして王家です。商売相手が資金が有るので大きな利益が見込めます。
アキバ趣味が大いに役立った商品開発でしたね。
お読み頂きありがとうございました




