はち
「ごめん!
冗談だから許してよ」
フィレスがどんなにキラキラと笑ったってそうはだまされない。
うそもたいがいにしやがれ!
目はマジだったじゃないか!
そんなイライラをぶつけつつ、レーナは黙々と食事を口に運ぶ。
それにしても、今現在こうも静かに過ごせているってことは、実際にセルジュの香りがもれださないように、術がかけられているということなんだろう。
こうやって周りを気にすることなくいられるのはありがたい。
ちょうど一人暮らしのアイテムも壊れてきた。
買えるものがあるならば買い足したい。
そして遮断の術が切れる前にここから再び逃げ出せば、かなり自分にとってプラスになるのではないか?
そうだよ、キスの一つや二つ、そのメリットを考えたらちっとも惜しくない。
肌と肌が接触する、その程度のことだ!
あまりの簡単な交換条件に感動と自分の頭の良さに感動しているそのころ、フィレスに( 顔を見てたら考えてること丸わかりだなぁ~ )と思われていた。
「ねぇ、考えてくれた?」
食事も終わり、談話室にいくと、フィレスは横に立つ。
「1日1回なのよね?
それ以上はしないのよね?」
「そうだね、じゃぁ、契約成立ってことでOKかな?
名前教えてね。
はい、この腕輪、これで契約ってことで...」
そういうと、フィレスは紅色の綺麗な細身の腕輪を差し出してきた。
よ...用意周到...。
あんた、断らない前提で話持ち込んできたんだな...。
「名はレーナよ。
あんた、本当にしつこいわね。
ご令嬢様に嫌われるわよ」
若干引き気味で腕にはめてみると、それは少し余裕をもって締まり、抜けなくなった。
ふぉぉ!なんだこれ!
魔具かよ!
やっぱ軍人さんはお金持ちだね!
ちょっとした驚きに包まれていると
「レーナか、いいね。
それじゃ、レーナ、イタダキマス」
と言われて、私はこのバカ虎からベロチューを強制された。
ふざけんな!
ベロチューなんて聞いてない!!!
私の乙女心返せ!!!